※ 特別機動捜査隊 まえがき

捜査担当班の詳細については、wiki特捜隊-キャストを参照、また、(本放送)とはNETでの放送、(再放送)とは東映chでの放送を指します。出演者については配役名を略していますが、本文で書くこともあります。なお、出演者をもっと知りたいときは、リスト特捜隊で検索。

また(出演者)は、エンディングで、一列~三列で表示された男優・女優に限定しました。

 

【#585  華麗なる貧困】

 

(本放送)1973年1月17日

(再放送)2016年6月30日

(脚本)元持栄美

(監督)田中秀夫

(協力)無し

(協賛)無し

(捜査担当)高倉班

田中係長(山田禅二)、鑑識課員(田川恒夫)、鑑識課員(田川恒夫)、

松木刑事(早川雄三)、岩井田刑事(滝川潤)、椿刑事(山口嘉三)、

森田刑事(北原隆)、笠原刑事(伊達正三郎)、高倉主任(里見浩太朗)

 

(出演者)

笹原光子、千葉裕子、松尾悦子、奥田英二、田畑孝、山村圭次、里木左甫良、

長沢大、日恵野晃、桜むつ子、玉村駿太郎

 

 

(あらすじ・予告篇から) 

※当時のナレーションをそのまま聞き写しています

 

城東信用金庫・本町支店が襲われ、宿直の野村浩一が殺害され、

現金5千万円が強奪された。

当夜、宿直の岩本英夫と守衛の安土(ヤスド)けいすけの2名が、

容疑者として捜査線上に浮かび上がった。

だが、入院中の安土けいすけが何者かに殺害された。

捜査の網は岩本英夫に絞られたが、

高倉主任はあまりの証拠の揃い過ぎに疑問を感じ、

岩本英夫の逮捕に踏み切れなかった。

完全犯罪を企む犯人は誰か!?

そして、その動機は何か!?

エコノミックアニマルが織りなす犯罪心理は何か!?

高度成長の陰に泣く、虐げられた人々の心の貧困からであろうか!?

次回、特別機動捜査隊、「華麗なる貧困」に御期待ください。

 

 

(備考)

・早川雄三演じる松木部長刑事のオープニング表記が、松木刑事のままである状態が続く。

・実見では、椿刑事初登場の回(欠番回である「#580 刑事はつらいよ」が、実際には初登場との資料あり)。

・若手時代の奥田瑛二(当時は奥田英二の表記)が、安土の長男役で出演。

 

 

(視聴録)

あるお寺で、城東信用金庫本町支店の社員・野村浩一(田畑孝)の葬式がしめやかに営まれていた。しかし、係長・岩本英夫(玉村駿太郎)、その娘・光恵(笹原光子)が訪れても、受付社員・前川(長沢大)は顔をしかめ、野村の妻(千葉裕子)、野村の妹・依子(松尾悦子)は参列を拒絶、支店長・沼沢(里木左甫良)も場をわきまえて立ち去るよう促す。そして、見守る高倉班・笠原刑事は岩本の連行を主張するが、高倉主任は無言であった。

事は、5日前の午後10時35分、昼過ぎからの暴風雨のなか、城東信用金庫本町支店から5千万円が強奪された事件に遡る。岩本の証言によると、宿直室にいた岩本、野村が巡回の順番を入れ替えたところ、巡回した金庫室で野村が襲われ撲殺、同じく見回りの守衛・安土けいすけ(ヤスド、日恵野晃)も後頭部を一撃され、重傷のため山東外科胃腸科へ入院となっていた。一方、宿直室のポットには睡眠薬が投入されており、留守番の岩本はそれでお茶を飲み、眠りこんだため無傷だった。この経緯から、笠原刑事の疑いは岩本に向けられていた。

それとは逆に、高倉主任の目は安土に向き、森田刑事に安土の自宅を張り込ませる。薄給で自宅のローンを組み、妻・信子(桜むつ子)、長女・洋子(大倉千代子)、長男(奥田英二)の生活のふるまいに、疑問を感じていたからでもあった。さらに、松木刑事をも病院に入院させ、安土の様子を見張らせていた。

周囲の見る目は岩本に厳しく、娘・光恵は好奇の目にさらされたあげく退職を余儀なくされた。そればかりか、自宅に泥棒が入った形跡があるのだが、なぜか1万円札の束が置かれている事に遭遇する。しかし、岩本は今の立場では届けても疑われるばかりと思い込み川に廃棄するが、それを見つめている岩井田刑事、椿刑事に気づく余裕もなかった。そんな岩本の救いは、光恵の婚約者の東和貿易社員・坂井よしひこ(山村圭次)の今までと変わらない態度であった。

そして、笠原、岩井田、椿刑事が川を捜索する中、山東外科胃腸科では、高倉主任に状況を連絡を終えた松木刑事の耳に、「自殺よ!」という声が聞こえてきた・・・。

 

 

当作は、高倉主任デビュー作「#512 高倉主任誕生」を思い起こすような、高倉主任 VS 部下の刑事の構図を垣間見せながら、真犯人は誰か?、犯行の目的は何か?の部分を描いた佳作です。鑑識の「足跡」調査が出てからの特捜隊面々の顔つきの変化、新宿駅地下街での笠原、椿刑事のモニャモニャして聞きとれない会話が犯人追及の意外な効果となったこと、目的が違えど犯人の利害の一致など、ラストまでの流れは面白く見れます。

 

ただ、岩本、野村の巡回順番変更は、岩本のリウマチアクシデントによるものならば、犯行の目的は何だったのか? 推測はできるものの、明確な回答は無いことは描写不足と感じたりしますが、これは登場人物たち同士の関連描写が少ないことにも結びつきます。つまり、視聴者自身が考えなければならないところが多く、平々凡々と見ていると「あれ?」という感じになってしまうのが欠点かもしれません。

個人的には、考えながら視聴するのは「安楽椅子探偵シリーズ」で慣れていますので構いませんが、テレビドラマに慣れた方々もいることを考えると、苦痛に感じるかもしれず、粗のひとつとしてカウントされてもおかしくありません。

(追加)R4.7.23

下線部の言い回しを、上記のように変更しました。

 

そして、ストーリーの締めとして

・人間は、先入観や噂話に気持ちが左右されやすいこと

・肉体的苦痛よりも精神的苦痛が辛いこと

・見栄と虚栄が生活のバランスを崩すこと(高倉主任の分析)

を痛感しながら、エンディングを迎えます。

#568 灰色の虹」で不調の波がうかがえた田中秀夫監督が、「#579 三船班 ハワイへ飛ぶ」を経て、復調の兆しを見せたのが当作だと感じました。実見では、高倉班と初めての組み合わせということもあるのか(欠番回「#571 歪んだ誘惑」の監督が不明なため確信は持てませんが)、いつも以上に考えた演出のようにも見えました。

 

なお、劇中の新宿駅地下街は、新宿駅西口地下改札から丸ノ内線新宿駅改札辺りを通り、大江戸線新宿西口駅に向かう辺りです。もちろん、まだ大江戸線未開通なので壁で遮られていますが、新宿に映画を見に行っていた人間としては、非常に懐かしく思える風景でした。

 

(2018年1月12日 全面追加)