さよなら、小さなLes Freres~その1~ | それはとりあえずおいといて。

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こんにちは、Lunaです。広範性発達障害を持つ昭和人です。「ポジティブカレンダー」よりも、ヒロシの「ネガティブカレンダー」を手に取ってしまいますが「元気があれば何でも出来る」はずなので、その「元気」を探す旅に出ています。

私は、小さな頃からどうも兄と折り合いが
良くありませんでした。


兄と私は結構歳が離れていますが、
兄は大学入学と同時に地方に行き、
それから10年ちょっと前に
父が病気で家業を続けられなくなって、
それを継ぎにこちらへ帰って来るまで
地方でおいしい空気を満喫していたようです。


兄は家庭を構えていて、
近所のマンションから家に仕事をしに通って来ていました。
私と兄は「仲が悪い」と言うよりも
お互い「関心がない」と言う感じで、
(私は出来れば顔をあまり合わせたくはなかった)
家の中で会う事があっても、
お互い知らん振りしてすれ違う・・・・
そんな生活を続けていました。


兄嫁や、兄のところの5歳&1歳のLes Freres
時々家に遊びに来ていましたが、
私は兄以外の人々に、決して悪い感情は持ってはいなかったものの、
「兄の関係者」というだけで、
なんだか兄嫁や甥っ子たちとも素直に接する事が
出来なかった気がします。
兄嫁は、本当に兄にはもったいない、おっとりとした優しい人でした。


そんな兄が、突然なのか?母と相談の上なのか?



「やっぱり東京はオレには合わない。
東京での家業をやめて、家族で地方に引っ越して
そこで仕事をする事にする。
子供たちも、

空気の良いところで育てた方が良いと思うし」



と言い出しました。
私は別段驚く事もなく、むしろ



「それはいいことだ。

早く行ってしまえばいいのに」



とさえ、思いました。


兄一家は、犬を一匹飼っていました。
自分たちはマンションなので飼えないから、
家の庭の一角を貸してくれ、と言って
朝晩のエサをやったり散歩をさせては、
夜は犬を置いてマンションに帰って行きました。


でも、自分たちの子供が出来てからは、
仕方がない事かもしれませんが
犬の面倒を見ていた兄嫁が世話を出来なくなり、
兄が面倒くさそうに朝晩エサをやるきりで
散歩にも連れて行かず、
母はいつも


「こうなる事がわかっていたのに、

なぜ犬なんか買ったのか」


と、いつもブツブツ言っていました。


私が犬の世話を出来れば良かったのですが、
少しでもちょっかいを出すと兄が怒ったので、
せいぜい時々犬の顔を見てはなでてやって終わり、と言う感じで、
犬には本当にかわいそうな生活でした。


毎日義務で与えられるエサを食べて、
遊んでももらえない。
それなのにいつもシッポを振って兄の顔色を伺う犬を見ては、
涙が出そうになりました。


ですから、兄が地方への引越しを決めてからは
私は少し気持ちが楽になったような気がしていました。
犬もこれからは近くで面倒を見てもらえる、
子供たちも、マンションの下の人を気にする事なく、
(下の部屋の人から「子供がうるさい」と苦情が出ていたそうです)
思いっきり駆け回って遊ぶ事が出来る。



そして、何より兄の顔を見ないで済む・・・・・・・



私は、本当に兄がキライなんだな。
引越しの日が近づくに連れて、私はそう実感していました。


引越しの前日、すっかりマンションをひきはらった兄一家が、
家に一晩だけ泊まりに来ました。
翌朝夜明け前に、車で引越し先に出発です。
小さなLes Freresは、私たちと
もうあまり会えなくなるのをわかっていないのか、
それとも引越ししてからの事が楽しみで仕方ないのか、
家ではしゃぎまわっていました。


5歳のお兄ちゃんは近頃「スパイダーマン」がお気に入りらしく、



「スパイダーマンのメモ帳買ってもらった(^∇^)

2枚だけあげる」



と、食卓にスパイダーマンのメモ用紙を
2枚だけ置いて、またキャーキャーとはしゃいでいました。


洗い物をしていたら、兄嫁がそばに来て



「銀月さん、

いままで○○(犬の名前)をかわいがってもらって・・・・
本当にありがとうございました。
向こうでは、そばでもうちょっと面倒を見られると思うので、
今までの分、かわいがってあげようと思います」



と言うので、私はちょっとグッ、と言葉につまり、



「いえいえ・・・・私は何も出来なくて・・・」



と言うのが精一杯でした。


私は最近、また薬がないと眠れない生活になっていたので、
薬を飲んで床に就きましたが、
3時間くらいで目が醒めてしまいました。
まだ夜明け前なので、なんとなくPCをいじっていたら、
母親が部屋のドアから顔を覗かせて言いました。



「起きてるの?
お兄ちゃんたち、そろそろ行くみたいだから・・・」



私が下に降りて行くと、
兄が車に身の回りだけの荷物を積み込んでいて。
甥っ子ももう起きてすっかり身支度を整えていました。


犬もすでにキャリーバッグに入れられて、
甥っ子がそばにいて嬉しいのか、「出せ」と言っているのか、
ワンワンと吠え続けていました。


本当にいく晩かの身の回りのものしかなかったので、
積み込みはあっという間に終わり、
兄、兄嫁、Les Freres2人、犬一匹が車に乗り込み、
車のエンジン音が高くなりました。



「じゃあ、元気でね。身体に気をつけて」



車の窓ガラスに映った母の顔を見たら、
泣くのをこらえているような、
もう泣いているような、
くしゃくしゃな顔をしていました。


いつもは何も言わないで出かける兄でしたが、
その時だけは
「じゃあ・・・・」と片手を上げて、車は走り去って行きました。
車が角を曲がるまで、
私と母は、ずっと見送っていました。



「生きている間に、

兄にはあと何回会えるんだろうな」



大げさかもしれないですが、
私はふとそんな事を考えました。


置いて行かれた古い犬小屋には、
主のいなくなった事を表すかのように、
入り口に板が立てかけられていました。
(その2につづく)



「小さなLes Freres」弟が履いていた

通称「かえる靴」