雨の夜には | 幻想奇行

幻想奇行

時計*蛇*守宮*Belgian Beer etc... 

手をはなすつもりはなかった
ただ僕はあの人にわかって欲しかっただけなんだ
あの夜、あの霧雨けぶる夜にしとどに濡れてやってきた君はとても妖艶で美しかった
僕の部屋に入ると君はすぐにバルコニーにむかったね
呆気にとられて立ち尽くす僕を尻目に君はするすると器用に半身を持ち上げあっという間に漆黒の闇に身を投げだそうとしたね
僕は必死になって君の腕を掴み引きずりあげようとした
けれどそのとき僕はみてしまったんだ
君の空洞のような瞳を
なんの感情もないがらんどうのような空虚な瞳
僕すらうつっていない暗黒のような硝子玉
その瞳を見た瞬間 僕は華奢な枯れ枝のような君の腕をはなしてしまった

永遠のような途方もない時間がながれたあと静寂を打ち砕くように響く君の潰れる音
ぐしゃりと湿っぽいおとをたてて潰れた肉塊は
さっきまでの妖艶で美しい君とはまるでかけ離れた様相をしていた
けれど僕は恐れはしない
それも君 さっきまでの華麗な存在も君
全部君だ
僕は後悔なんてしてない
さあきちんと窓をしめカーテンもひいて眠りにつこう
じき夜があける



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