
2人の間のけんかを和らげるためのテクニックとして今回紹介したいのは、「モノのせい」にすること。明らかにどちらかが悪いときであっても、無理にでも、もしくは冗談でも、何かモノのせいにしてしまうのです。
例えば、相手が遅刻してきたとき、「今日はすごく寒かったから電車も朝寝坊しちゃったのかな。」と冗談で突っ込むイメージです。
あるいは、相手も自分もお互いがプリプリとしてつっけんどんな物言いになりかけたらすかさず、「私たちイライラしてるのは、お腹空いてるからじゃない? とりあえず、ご飯食べてから、続きの話をしようよ」と、投げかけてみましょう。そうやって「空腹のせい」にすれば食後には、落ち着いた気持ちで話ができるはず。
このように「あなたとわたし、どっちが悪い!?」という議論ではなく、無理にでも「何かのせい」にすることには、共通の敵を作るということでもあります。電車のせい、天気のせい、空腹のせい……。共通の敵ができあがれば気持ちがまとまる。一緒にそれに対処すればいいので、けんかになりにくいというわけです。
そもそも、多くの人は物事に「バイアス」をかけて見ています。バイアスとは、人間が無意識に持ってしまう直感や思い込みのこと。たいていの場合、人は自分に甘く他人に厳しく、ものを見ています。
例えば、同じ遅刻をした場合でも、自分のときは「ごめん、電車が遅延しちゃって……」と軽く自分以外のせいにできるのに対して、相手が遅刻してきた場合は「もっと早く準備すればそんなことにならなかったのに」「きっとデートに対してやる気がないからだ!」「いつもそういう性格だから……」と、えんえんと相手の過失を責めてしまう。これなどはまさにバイアスが理由です。
バイアスの怖いところは、無意識であること。自分の過失は心の底から「自分は悪くない」と思い、相手の過失は疑うことなく「相手が悪い」と思ってしまうのです。
もちろん時にはきちんと話し合って、お互いの欠点を改めるべき。ケンカによって2人の関係が強まるなんてこともあります。
ただ、いつもそうしていると逃げ場が無くなってどんどんつらい気持ちに。…そんな時は、無理にでも何かのせいにして、衝突を上手に避けることが大事になるのです。
話し合うべき時は話し合う。つまらないケンカは「モノのせい」にしてごまかす。感情やコミュニケーションにメリハリをつけて、仲のいい関係を続けられるようにしましょう!
(五百田達成)
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