
来月1日閉館 新たな拠点模索
- 来月1日で閉館する「こどもの城」(渋谷区)。施設前には、岡本太郎作のオブジェが設置されている
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約30年間、子供たちに親しまれてきた全国唯一の国立児童館「こどもの城」(東京都渋谷区神宮前)が2月1日に閉館することに伴い、開館当初から歌い続けてきた「こどもの城児童合唱団・混声合唱団」が、活動場所を探している。
4月以降の拠点はまだ決まっておらず、合唱団は慣れ親しんだ舞台がなくなる寂しさを抱えながら、「今後も歌い続けたい」と訴えている。
こどもの城は1985年に開館。現在は国から委託された公益財団法人「児童育成協会」が運営している。
施設内には、遊具のあるプレイホールや体育室、アニメや映画が見られるビデオライブラリーなどがある。演劇やコンサート会場で有名な「青山劇場」と日本初の完全円形型の「青山円形劇場」の二つの劇場も併設され、開館以来約2800万人が訪れた。このほか、職員が遊びを考案し、全国の児童館に伝える事業や指導者の研修なども行ってきたが、施設の老朽化や各地で児童館の整備が進んだことから、2012年に閉館が発表された。
合唱団は歌を通じて豊かな人間性を育もうと、こどもの城の非常勤職員で、音楽事業を担当する吉村温子さん(59)が85年に結成。当初は30人ほどだったが、現在は小学生から中学生までの児童合唱団約200人と、高校生以上の混声合唱団約100人が所属し、視覚障害やダウン症など障害を持つ子供も参加している。
これまで週1回、こどもの城内のスタジオで練習しながら、青山劇場や円形劇場で公演を重ね、合唱曲やオリジナルの曲を歌ってきた。体を動かしながら歌を表現するエネルギッシュな合唱が特徴で、全国各地で公演を行う一方、毎年1月には音楽劇も披露していた。今月31日にはこどもの城の最終公演を飾り、約30曲を歌う。すでに予約で満席という。
中学3年まで合唱団に所属していた目黒区の主婦土田美穂さん(41)は「合唱だけでなく、子供を連れてよく遊びにも来た。本当にお世話になった場所なので、閉館はすごくつらい」と話す。現在は、高校2年の長男、輝君(17)と小学4年の次男、翔君(9)が合唱団で歌っている。
全盲の障害を持つ練馬区の高校3年、宇木素裕君(18)は「たくさんの仲間と出会えたこの合唱団で、これからもずっと歌い続けたい」と望んでいる。
合唱団は今後も活動を続け、2月末には新1~4年生の募集も始める。3月末まではこどもの城で練習することができるが、それ以降はどこを拠点に歌うかまだ決まっていない。
閉館する2月1日の午後5時半頃からは、こどもの城から帰る人を合唱団が歌で見送る予定だ。
合唱団の指揮者も務める吉村さんは、「ずっと歌い続けてきた思い入れのある場所なので、なくなるのは本当に残念。子供たちが歌や表現を通じ、これからも輝き続けられる場所を探したい」と話している。