
- 写真を見ながらかつての街の様子を懐かしむ人たち
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2004年の中越地震で被災し閉館した新潟県十日町市の山内写真館にある写真約4万8000枚を整理してデータベース化する作業が、同市の古文書整理ボランティアの手で進められている。
一部が同市西本町の十日町情報館で展示されており、地域の暮らしを伝えるノスタルジックな写真が、地域住民の目を和ませている。(樋口絢香)
3代目の山内景行さん(63)まで約100年続いた山内写真館は、中越地震で現像機などが壊れ、写真が整理された棚も倒れてしまった。写真の多くは昭和の時代に先代、先々代が撮りため、引き継がれてきたもの。当時の地域の風俗を写し出した貴重なカットも多かった。山内さんは一人で整理してみたものの、あまりの膨大さに挫折したという。
地震から4年ほどたち、写真の整理について山内さんから相談を受けた情報館は、写真も「地域の記録遺産」と考え、預かることを決めた。預かった写真の整理は、同館で古文書を整理する市民グループ「市古文書整理ボランティア」が行っている。「写真は誰でも理解できる記録媒体。捨ててしまえば終わりだが、今生きている人の記憶とともに残してほしかった」と山内さんは振り返る。
ボランティアのメンバーは、情報館が市報やチラシで参加を呼びかけて集まった30~90歳代の28人。写真に写された時代を知るメンバーらが、当時の「記憶」をよみがえらせ、場面を説明したカードを添えて整理している。打ち合わせた回数は2010年から約140回。メンバー以外もお年寄りなど市民延べ5000人が作業に携わった。今では約8000枚のカードが作成され、3047件がデータベース化された。
データベース化された写真は情報館のパソコンで検索すると、該当する写真が閲覧できる。市教委文化財課の高橋由美子さんは「多くの記憶が埋まっているデータベース。全ての写真を加え、さらに他地域と連携して全県下で見られるようにしたい」と話す。
情報館では、一部の写真を張り出した写真展も開催中で、2代目・与喜男さんの写真のほか、与喜男さんと交流があった写真家・中俣正義さんによる十日町の暮らしをとらえた写真計53点が並ぶ。伝統行事「ムコ投げ」や、かつて行われていた「花嫁行列」などの様子を伝えており、会場を訪れた住民らは、当時を懐かしんでいる。
中俣さんの写真を出展した原田健一・新潟大人文学部教授(映像社会学)は「写真は失うまでなかなか価値に気が付かないもの。携帯電話などで簡単に撮影できる時代だが、歴史に空を生まないためにも、自覚的に保存する必要がある」と話している。
写真展は24日まで。時間は午前9時~午後7時。入場無料。問い合わせは市教委文化財課(025・757・5531)へ。