前記事に続きTR(トランジション)編の訳を上げます。もちろんPCS評価の核の部分は既にISUの文書にしたためられていますが、こうしてISUのスペシャリストに口頭という形式で、よりディープにダメ押ししてもらうのは、机上の理論とはまた違う別次元の説得力・浸透力があります。私たちフィギュアスケートファンは、こういった説明を知った上で、なお各演技のPCS採点に納得できるのか。もしくは、採点の是非は置いておいても、ファンとして何を基準に演技を評価すべきなのかは学ぶことができます。これらのセミナー動画を見て、そういった冷静かつ中立的な視点を獲得するのは、実際の採点がどうあれ、無益ではないはずです。
では、以下、TR編のダイジェスト訳です。
まずは、「TRとは何か」。
答えは、「フットワーク」「ポジション」「ムーブメント」「ホールド」だ。
しかし、ジャッジの多くは「フットワーク」のみに集中する傾向がある。
評価基準:(注:シングルに関係するもののみ抽出)
・エレメンツからエレメンツへ途切れないムーブメント
・バラエティ(多様性)
・ディフィカルティ(難度)
・クオリティ(質)
演技でよくある誤りは、要件クリアのためにちょっとステップを踏んだらエレメンツの準備のため練習モードに戻ってしまい、エレメンツを終えたらまたちょっとステップを踏み、TRを抜いて次のエレメンツのセットアップに入るというパターンの繰り返しだ。
我々が見極めねばならないのは、こういったスケーターと「リスクを取ったスケーター」との違いだ。なぜなら、エレメンツからエレメンツへ切れ目のないシームレスなムーブメントで繋ぐというのは実際にリスキーなことだからだ。その際、彼ら(リスクを取るスケーター)は「バラエティ」を見せることもできるし、「ディフィカルティ」「クオリティ」を伴っていれば理想的だ。
ジャッジサイドでよくあるミスは、PCSにおいて自動的にTRに最も低い点数を付けること。TRが最も高い点数を得るべき例外的演技もある。レフェリーはラウンドテーブルディスカッション(RTD)前に各ジャッジのスコアをチェックするが、そんな演技が見られた場合はRTDで審判らにその演技のビデオを見せ、スコアシートは裏返して新たな目で評価する機会を与えよう。
TRとは1分毎のムーブメントの数を意味するものではない。少なめなムーブメントであっても、体軸に影響を与える姿勢でエッジに長く乗るなど、難しいやり方で行われている場合もある。そのようにエッジをキープするのはとても難しく、たった一つのステップであってもリスキーであり、クオリティが高いかもしれない。そういった点に注意しよう。
ディフィカルティとは:
・一連のステップ/ターンを方向を変えて行う
・正確なエッジでグライドしながら身体の主軸に影響を与える
・ステップ&ターンあるいは一連のムーブメントを滑らかにエレガントに実施する
・ブラケット、ロッカー、ツイズル、チョクトー、アウトモホークを完璧に行う
・以上を同時に行う
様々なステップを実施したとしても、スケーターの能力が追いついていない場合「ディフィカルティ」と「バラエティ」には該当するとしても「クオリティ」は低い。逆にスリーターンであってもターン前後共にエッジが深く、素晴らしいエクステンションとボディアラインメントを伴っていれば、それは「クオリティ」の項に該当する。
TRの「ディフィカルティ」とは、ロッカー、チョクトーなど選手が実施しようとしたもの、「クオリティ」は、その実施の質を評価するものである。
以上。