「ヴァルド派の谷へ―近代ヨーロッパを生きぬいた異端者たち」 | アルプスの谷 1641

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1641年、マレドという街で何が起こり、その事件に関係した人々が、その後、どのような運命を辿ったのか。-その記録

 

 
 
 それでは参考文献の紹介したいと思います。
 
 が、ヴァルド派に関する本というのは、実は驚くほど少ないです。同時期
 
に存在した異端カタリ派についての本の方が、こちらはカトリック教会の徹
 
底的な弾圧によって絶滅しているにも関わらず、まだ沢山の書籍が発行され
 
ています。尤も、カタリ派について言えば、その神秘思想や、生まれ変わり
 
事件によって、現代の読者に訴える所が多々あるのかもしれません。
 
 
(以下は以前に書いたカタリ派に関する記事です)
 
異端カタリ派の謎 (1)
 
異端カタリ派 輪廻転生の謎
 
 
 ヴァルド派について書かれた本が、なぜこんなに少ないかについては、
 
自分なりに考えるに、次の二点になると思います。
 
 ひとつには、ヴァルド派の歴史は、そのままカトリック教会が行った残虐
 
な迫害の歴史だから。そこはどうしても、あんまり人には知られたくない
 
ヨーロッパの裏面史的な扱いとならざるを得ません。
 
 そして、もうひとつは、後にプロテスタントのカルヴァン派と同化した
 
ことからも分かるように、ヴァルド派は、異端と言っても何か神秘性がある
 
わけでもなく、現実的な考え方をする、ごく真面目な人々だったから。つま
 
り、ヴァルド派それ自体には、とりたてて読者の興味をそそるものがあるわ
 
けではありません。しかし、そんな普通の人々がくぐり抜けた驚くべき歴史
 
だからこそ、見る価値は充分にあると思います。
 
 
 というわけでまずはこの本です。
 
 「ヴァルド派の谷へ―近代ヨーロッパを生きぬいた異端者たち」
 
  西川 杉子  (著)


 


 
 恐らくは日本語で書かれたヴァルド派に関する唯一の本。
 
 今回、「栄光の帰還」の後半部を書いている間、ずっとこの本が傍らに置
 
かれていました。
 
 著者は亡命ユグノー (フランス・プロテスタント) の研究をしる過程で、
 
ヴァルド派と出会い、現地を歩きながら、ヴァルド派の一族アッピア家の
 
足跡を辿り、思いをはせる部分は、読み物としても充分に楽しめます。自分
 
としては、近世ヴァルド派の歴史が詳しく書かれている点で、ともかくも、
 
貴重な一冊だと思います。
 
 もし英語版にまで手を広げるならば、さらに幾つかの本が見つかりますが、
 
これについては、次回の記事で。