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今回は、群馬県上野村にある「上野楢原のシオジ林」を訪ねました。
最近、こういった山深い場所を訪ねるのが楽しくなってしまいました。
「こんな誰も来ないようなところに、俺だけがいるんだぜぇ」
って感覚が病みつきになってしまって![]()
シオジとは
シオジとは、モクセイ科トネリコ属の落葉高木で、日本原産の固有種です。
樹高は20mを越えるものが多く、垂直にまっすぐ立つことから古くから歩留まりの良い材木として利用が多い樹種だそうです。
実は結構メジャーな樹木、とのこと。
渓流沿いによく見られるそうで、珍しい種類の木、というわけではありません。
では、ここでは何が貴重なのか![]()
気になりますよね![]()
実は、シオジは樹高が高くなるため、森林遷移で極相を示す樹種なのだそうですが、利用が多いため原生林となって純林を形成するのは珍しく、貴重なんだそうです。
ここ群馬県上野村楢原の山奥には、記録では宝暦(1751~1763)年間以来の伐採の記録がなく、実に約260年近く人為的な手が加えられていないためにシオジが純林状になっていて、原生林として大変貴重だ、ということなんだそうです。
「へぇ、そうなんだ。」くらいの認識でしたが、現地を訪ねると新たな発見があるものです。
実際に現地を訪ねなかったら、ただの森だろ
くらいの感覚だったと思います。
実際、現地を訪ねると驚くことが多くありました。
やっぱり見た目が地味でも現地を訪ね、実物を見ることは重要なんです。
というわけで、実際に現地を訪ねてみました。
上野楢原のシオジ林を訪ねる
上野楢原のシオジ林は、天然記念物でも貴重な動植物が特に広く分布している場所、「天然保護区域」に指定されています。
天然保護区域となっている場所は北海道「大雪山」、群馬県と福島県の境にある「尾瀬」、東京都の小笠原諸島にある「南硫黄島」長野県の「上高地」など、全国に23ヶ所しかありません。
そんな中の一ヶ所なんです。
公共交通機関なら、JR高崎線の新町駅から上野村方面のバスがあります。本数は午前中に1本くらいの便数しかありませんが、「浜平温泉しおじの湯」行きで終点で降りれば、シオジ林の入口である「北沢入口」までは徒歩で5分ほどです。
ただし1時間半から2時間ほどバスに揺られ、シオジ林を往復すれば上野村内で一泊する必要があります。
私はマイカーで朝早く、シオジ林の入口となる北沢入口へ向かいました。
なお、「しおじの湯」には駐車場がありますが、登山者用には開放していません。お風呂の利用者向けの駐車場ですから、当然ですよね。
シオジ林までは往復で6時間ほどかかります。
ここへ停めてしまっては6時間も駐車場を占拠するんですから、マナー違反ですよね。
戻ったら風呂を利用するから、などと勝手な理由でここに車を停めることは絶対に遠慮してください。
私はやや離れていましたが、ここから徒歩で15分ほどのところにある登山者用駐車場に車を停め、北沢入口まで歩きました。
北沢入口に到着した時点で、まだ朝の7時を回った頃でした。
さて、ここから沢沿いの山道を登っていきます。
登山レベルとしては、ややハードなハイキング、といった程度でしょうか。
ちなみに、なぜここを「北沢入口」というのかというと…
シオジ林は北沢という沢の最上流に位置し、「北沢入口」とはまさに北沢沿いに沢を登る「入口」でした。
かつては炭焼きを生業とした人々が集落をつくっていたそうで、その集落を「北沢」と称していたました。
その集落への入り口、という意味もあったようです。
登り始めるとすぐに、険しい山道が沢沿いに続いていました。
ここでの周囲の木々の様子や、林床の植物の形状などをよく見ておいてください。
山道を登り始めて1時間ほど過ぎると、左手に尾根の登り斜面が迫り、そこに石垣で平坦地が築かれている場所に出ました。
ここがかつての炭焼き集落、「北沢」の跡です。
いつ離村したのかはわかりませんが、少なくとも明治期まではここで人々が暮らしていました。
自動車社会の現代では、徒歩でなければたどり着けない集落では生活が不便でしょう。
今ではすっかり廃村、というより遺跡です。
さらに沢沿いに山道を進みます。
山道、山道といっていますが、この道は「北沢自然観察遊歩道」として整備されていて、木々に樹種の名称札が掛けられています。
木々の名前がわかりやすくて、勉強になります。
ただ、訪問する人は少ないようで、自然に帰りつつありました。
さらに30分ほど歩いた先に「北沢分校跡」という標識が現れました。
ここまでは登り始めてから1時間30分ほど経っています。
明治時代に北沢集落の子供たちのために、ここに学校が設けられていた場所です。
「分校」とのことですが、寺子屋のような施設だったといいます。
この先から、シオジ林が広がっています。
地図で見ると、ここが原生林エリアの「東の境界」にあたります。
北沢の上流はさらに奥地になり、この沢筋が北の境界線となっています。
地図によれば道は沢沿いに続いてます。
原生林はこの南側に広がっているのでそれを眺めながら奥まで行ってみることにしました。
と思ったらいきなり、道を遮るように大きな倒木が道を塞いでいました。
なんてこったい![]()
こんなものにめげず、奥へ踏み入れます。
まだ新しい倒木で、葉っぱが青々としています。
太い枝は弾性があって行く手を阻むので、とにかく折れる枝を踏み折って倒木を越えました。
倒木を踏み越えたら急に、今までの山道がウソのような、なだらかな道が続いていました。
かつて焼いた炭をソリに乗せて運び出していた道の跡、その名も「そり道」というそうです。
このそり道の対岸がシオジ林です。
再び沢を渡り、シオジ純林のある北斜面の裾沿いに歩けるようになりました。指定範囲の北の端っこですが、シオジ純林内を歩くことになります。
ここから南側の登り斜面に向かって広がっている林が、シオジ純林です。
シオジ純林内には道がないので、これ以上は踏み込みません。
天然保護区域ですから、やたらと人は入らないのがいいでしょう。
端っこですが、ここからでも十分に純林を観察できます。
目の前の木がすべてシオジです。
こうなると、もう少しどんな樹なのか見ておきたくなります。
ちょっと葉っぱが見たいなぁ…
しかし背丈の高い木なので、梢ははるか上で葉っぱを見ることができません。
と、目の前に、おそらくシオジの若い木があるじゃありませんか。
写真に撮って、あとで確認したらやはりシオジの葉っぱでした。
ツイてるぅ![]()
![]()
ここから南側の斜面を見てみました。
若い木と中齢の木がありました。
このように森林の更新が順調に行われている点も、このシオジ純林が貴重である理由のひとつ、ということです。
ここで、ふと違和感を感じたのです。
今まで登ってきた道沿いとは、森の雰囲気が違います。
何枚か、シオジ純林の写真を見て違和感の理由を考えてみてください。
シオジ純林は北向きの尾根の斜面、なかなか結構な急斜面に広がっています。
さて、わかりましたでしょうか。
もう一度、北沢中流域の森林の写真を見てみるとわかりますか?
私は、シオジ林の方が目の前にある枝や葉が少ない、林床のコケや草が少なくてスッキリしている、と感じたんですが、いかがでしょうか?
とにかく、かなり山奥まで登ってきたのに、急に林床が開けた印象を受けたんです。
こんなの、植林された杉林でしか見たことがないなぁ。こんな山奥で植林なんかしないだろうし。
「そっか、シオジの巨木は上の方にしか枝をつけないから、純林になれば目の前に枝や葉っぱは見えないのか。それに、梢が高いから地面にまで日光が届かなくなって、林床の植物も育たなくなるわけね。まさに極相林の様相なわけじゃん
」
それこそが貴重なシオジ純林の特徴なわけね!と妙に納得しました。
シオジ林の北端だけ辿った形になりましたが、シオジ純林の特徴を十分につかめたので満足しました。
道は北西端から、さらに西の境界沿いに尾根上に登る道があるのですが、踏み跡がはっきりしていなかった上に狭いゴルジュを登る、とにかく道が悪いのでこれ以上進むのをやめ、満足したところで折り返しました。
時間は午前11時を回っています。シオジ林を観察するのに2時間掛かっています。
お昼前に山を下り始めることができて、ちょうどいい時間です。
山を下りて、午後1時を回っていました。
ちょうどお腹も空きました。
ここでやっと、車で「浜平温泉 しおじの湯」まで戻ることができます。利用者として。
上野村は「いのぶた」を推しています。温泉に浸かって疲れを落とし、しおじの湯の食事処「しおじや」で、いのぶたを使ったメニューを味わって帰路につきました。


















