奥州藤原氏が築いた、岩手県平泉町の中尊寺を参拝しています。
最後に境内社・白山神社境内にある能舞台を訪れました。
なんでも、正統な能舞台で古いものは少ないらしく、その意味でとても貴重な建物なんだとか。
やっぱり見ておかなくては。もっとも、指定文化財は欠かさず見に行きますが。
能楽は過去に一度だけ鑑賞したことがあります。
正直、解説がなければ何を演じているのかさっぱりわかりませんでした。
能舞台も現代的なビルの中にある時代になりました。
だから外にある能舞台は、これまで見たことがありませんでした。
京都の西本願寺にあるものは国宝に指定されていて有名ですが、それは見たことがありません。
何の前知識もなく見に行ったので、思った以上に荘厳な建物で感動しました。
白山神社能舞台
白山神社の能舞台は参拝コースを出て、「白山神社」への案内標識に従って歩いていくと見えてきます。
白山神社の境内に入ると、最初に目に飛び込んできました。
一目見て、本格的な能舞台だな、とわかります。
なんていうのか、オーラが違うというか…
全体を大きく眺めまわしてから、各建物を詳細に見ていきました。
まずは「鏡の間」から。
鏡の間
「楽屋」かと思いきや、能舞台では「鏡の間」というそうです。
機能としては楽屋のようなものですが、いわゆる楽屋ではなく、演者が装束や面を整えるため、常に鏡が掛けられているから“鏡の間”というそうです。
鏡の間から本舞台へ続くのが「橋掛り」です。
橋掛り
単なる舞台袖の入出路かと思っていましたが、能楽の中では単なる登・退場路とは捉えられていないそうです。
まさに舞台の一部。ここを利用して演出する演目もあるんだとか。
たとえば、長い道のりを歩いているシーンを表わす場合。要は街道を延々と旅しているところですね。
ここでは植えられていませんが、本来の能楽堂では橋掛りの前に一の松~三の松という3本の松が植えてあるそうです。
そして本舞台です。背景に大きな松が描かれています。色褪せていますが、立派な老松が描かれているのがわかります。
本舞台
この背景を「鏡板」といいます。鏡板の手前が笛や太鼓などの囃方が座る「囃方座」といいます。
鏡板の裏が能舞台での楽屋で、囃し方やシテ方などが準備したり待機したり、演者が退場した時に入る部屋になっているようです。
そして天井には何やら金具が取り付けられています。
写真でわかりますか?小さく写っています。
照明のため?と思ったら、能舞台には必ず取り付けられている重要な金具だそうです。
天井の吊り金具
囃方座の向かって右手にある柱(笛柱といいます)にも何やら金具があるのです。上の写真にも切れてますが、下の方に写ってます。
これはある演目を演じるためだけに取り付けられているのです。
「道成寺」といえば、女の情念を恐ろしく描いた話として有名です。その道成寺に出てくる釣り鐘を釣るため綱を掛ける滑車と金輪なんです。
そのためだけの金具なんですが、能舞台には欠かせない部品なわけです。
そういうものもちゃんと設けられているところに感心してしまいました。
本舞台から橋掛り、鏡の間を見る
切戸口とその脇の竹藪の絵
演者の退場などにも使われる「切戸口」も見られます。そのわきの竹藪の絵もだいぶ色褪せてますが立派です。
「道成寺」の金輪も写ってますね。
白山神社の能舞台は、素木で茅葺でありながら能舞台の正統を丁寧に守って建てられている建物でした。
能楽に詳しくないのですが、このような能舞台が地方に残るのは珍しく、その貴重さが肌で感じられます。
他の観光客がこの建物の前を素通りしているのをみて、もったいなく思いました。
これをご覧になった方は、ぜひ中尊寺を訪れたら一番奥までお参りして、この能舞台にも注目してください。
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中尊寺 白山神社能舞台(平成15年5月・重要文化財 岩手県西磐井郡平泉町平泉)
白山神社は中尊寺境内の北方にある境内社です。能舞台は嘉永2年(1849)に焼失し、仙台藩主・伊達家によって同6年(1853)に竣工しました。
建物は入母屋造、茅葺で東西に長く、西半が舞台、東半が楽屋となっています。北面には北東に延びる両下造、鉄板葺の橋掛りがつき、鏡の間と接続しています。鏡の間は茅葺で、西面が入母屋造、東面は寄棟造になっています。
白山神社能舞台は正統的かつ本格的な規模と形式の近世能舞台遺構です。このように完形で残る能舞台では東日本で唯一であり、高い価値があるので、重要文化財に指定されています。
参考HP:
「白山神社 能舞台」 文化遺産オンライン:https://bunka.nii.ac.jp/heritages/detail/186086/2
「能楽の舞台」 公益社団法人 能楽協会HP:https://www.nohgaku.or.jp/encyclopedia/whats/stage.html
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