埼玉県羽生市・宝蔵寺沼ムジナモ自生地を訪ねるー   世界で唯一のムジナモ自生地? | 名宝を訪ねる ~日本の宝 『文化財』~

名宝を訪ねる ~日本の宝 『文化財』~

国宝や史跡、天然記念物などの国指定文化財を巡り堪能し、その魅力を紹介するブログ

皆さんは、ムジナモをご存知ですか?

 

水生の植物ですが、主に水中のボウフラやミジンコを捕らえて栄養にする、食虫植物の一種です。

 

 

 

 

 

 

 

昔は世界各地に分布していたそうですが、環境の悪化ですべて絶滅してしまいました。

今では日本にしか自生していないそうです。しかも一か所だけとか。

 

その、世界で唯一となった埼玉県羽生市の宝蔵寺沼ムジナモ自生地を訪ねました。

 

といっても、何度も通っているんですが…

 

その理由は、ここには水族館があるからなのです。

 

宝蔵寺沼

 

実は、宝蔵寺沼の周辺は「羽生水郷公園」として整備されていて、公園内には「さいたま水族館」があります。

 

「海のない埼玉県に、水族館とは珍しい…」

 

そう思われる方も多いでしょう。

 

こちらは、「海はなくても川がある」埼玉県が造った、淡水生の生物を紹介している結構ユニークな水族館なんです。

よく、小さかった息子を連れて遊びに行きました。

 

それに、さいたま水族館は施設の取り組みとして、ムジナモの増繁殖にも取り組んでいて

「ムジナモを育ててみよう」

というプロジェクトなども行なっているのです。

 

「わが家にも天然記念物が来るなら!」

 

っていうんで、一時期そのプロジェクトに参加していました。

まあ結果は散々だったのですが…

 

上手な人は、いっぱい増やしてましたね。

 

 

 

奥さんと息子は水生動物に触れるコーナーで遊んだり、チョウザメ(キャビアが取れる、あのチョウザメを飼育しています。)のエサやりをしたりして楽しんでいました。

 

父ちゃん(私ですが)は、天然記念物のムジナモとかミヤコタナゴとかムサシトミヨを見て喜んでいました。

 

そんなわけで、ここには家族でしばらく通っていたのです。

 

 

 

ところでムジナモの自生地なのですが、羽生水郷公園に通うようになるまで、私は宝蔵寺沼に自生しているものだと勘違いしていました。

 

宝蔵寺沼はタダの沼でして、ここにムジナモが自生しているのではありませんでした。

 

ムジナモ自生地 指定地域(宝蔵寺沼は右手の方)

 

ムジナモが自生するのは沼の方ではなく、沼の隣にあった「堀上田」と呼ばれた泥湿地でした。

 

しかも現在は、およそ自生しているとはいい難い状態です。

 

やはり環境の悪化が大きな理由だそうですが、コイ、アメリカザリガニ、ウシガエルのオタマジャクシなどムジナモを捕食する生物が入り込み、世界唯一の自生地でもムジナモはほぼ絶滅状態になったそうです。

 

そのため、人の手でムジナモの株を増やし放流して保護しているのです。しかも放流箇所は目の細かい網で囲い、天敵が侵入しないようにしてありました。

 

こういった天敵となる動物の侵入はほとんど、人の手によるものだと考えられるそうです。

 

そりゃそうですよ、上に書いた動物のほぼすべて、外来種じゃないですか。

 

それでも今は、そうした動物の駆除事業も行っていて、天敵の数はだいぶ減ったそうです。

 

ムジナモ さいたま水族館で展示しているもの

 

そんなこともあって自生地は今、立ち入り禁止となっています。

 

「ムジナモを育ててみよう」プロジェクトに参加すれば、放流のため年に一度、自生地に入ることができます。

 

興味のある方は是非、さいたま水族館の「ムジナモを育ててみよう」プロジェクトに参加してみてはいかがでしょうか。

 

実はムジナモ保護の事業が始まって、既に40年以上が経っているそうです。

 

最盛期のような、水面を覆いつくすほどのムジナモが見られるようになるには根気がいるほどの長い年月が必要だと感じました。

 

 

ムジナモ 捕虫器

 

さて、さいたま水族館では埼玉県内に生息する水生生物をたくさん見ることができます。

 

利根川で、産卵期になると水面で飛び跳ねる様子が壮観で有名になったハクレンも、ここで見られます。

 

巨大な魚で、大きな水槽を所狭しと泳ぎ回っています。

 

その様子は、その巨大な目玉も相まってなかなか不気味です。

 

小さな子がその恐しい姿に驚いて、ハクレンの水槽前で泣いているのを見たことがあります。

 

 

 

 

そのような魚もオモシロいので紹介したいのですが、ブログの主旨から外れるのでここでは紹介せず、水族館で見られる天然記念物に指定された2種類の珍しい魚を紹介します。

 

 

まず、ミヤコタナゴ

 

ミヤコタナゴ

 

産卵期にオスは「婚姻色」といわれる鮮やかな赤橙色に染まることで知られています。

 

たまたま産卵期に訪ねることができたため、その婚姻色のオスを撮影できました。

 

ミヤコタナゴ 婚姻色のオス

 

埼玉県内では過去には所沢市で見られたそうですが、今は環境が変わって見られないそうです。

 

現在では埼玉県内では滑川町内の溜池、そして栃木県の大田原市内で発見されているとのことです。

 

 

そして、ムサシトミヨ

 

埼玉県内に唯一の生息地(熊谷市久下)があります。

 

市街地にあるので環境悪化が懸念されているそうで、既に人の手なくしては生息地の環境を維持できる状態ではないそうです。

 

ムサシトミヨ

 

生息地は埼玉県指定天然記念物に指定されています。

 

イトヨに似ているな、と思ったら同じトゲウオ科なんですって。

 

ミヤコタナゴといい、ムサシトミヨといい、体が小さい淡水魚なんて真っ先に環境変化の影響を受けそうですよね。

 

小さい魚も生息できない、そんな環境は人間にとってもよくない環境ではないかと思うのですが。

 

こんな魚でも生息できる、そんな環境を維持できるよう、みんなで努力しましょう。

 

 

 

--------

 

宝蔵寺沼ムジナモ自生地昭和41年5月・国指定天然記念物 埼玉県羽生市三田ヶ谷

 

ムジナモはモウセンゴケ科ムジナモ属に属する食虫植物で、被子植物ですが根がなく、水面を漂うように繁殖します。あまり花が咲かず、種もできるのですが発芽しません。ほとんど株分け、すなわちクローン増殖で増えるため、遺伝的に弱いと考えられています。宝蔵寺沼は埼玉県羽生市の東方にある、利根川沿いの低湿地に位置します。ムジナモはかつて世界中に自生地がありましたが、水害や除草剤散布、水質悪化などの影響でことごとく絶滅状態にあり、今では宝蔵寺沼が世界唯一の自生地となりました。宝蔵寺沼でも昭和41年に台風の影響で残っていた株が流失したため、一時絶滅状態になりました。しかし、以前から繁殖方法を研究していた地元の愛好者が株を保護していたため、これらが自生地に戻されて絶滅を免れたという経緯があります。現在でも保護活動は続けられていて、捕食動物の駆除や水質改善の試み、株の増殖プロジェクトなどが進められています。

 

ミヤコタナゴ昭和49年6月・国指定天然記念物 地域を定めず指定

 

ミヤコタナゴはコイ科タナゴ亜科に属する日本特産の淡水魚です。淡水魚ではイタセンパラとともに初めて種での指定を受けました。全長35~50㎜ほどの小魚で産卵期の4月下旬から7月上旬にはオスが婚姻色と呼ばれる鮮やかな色に変わります。タナゴの仲間は生きた二枚貝類のエラに産卵しますが、ミヤコタナゴは主にマツカサガイに産卵します。その名の通り東京都内で初めて発見され、関東地方の茨城県以外の1都5県で生息が確認されていました。しかし自然環境の変化による環境悪化、それに伴うマツカサガイの減少によって個体数が激減しています。現在では埼玉県や栃木県のごく一部でのみ生息が確認され、保護施設などが建設されて保護増殖の取り組みが行われています。

 

元荒川ムサシトミヨ生息地平成3年・埼玉県指定天然記念物 埼玉県熊谷市久下

 

ムサシトミヨはトゲウオ科トミヨ属の淡水魚です。全長は35~60㎜程度の小魚で、背びれ、腹びれ、尻びれにトゲがあります。体色は緑がかった暗褐色をしています。かつては関東各地で生息地が確認されましたが、現在では埼玉県熊谷市の元荒川源流域でのみ確認されています。埼玉県の「県の魚」として、埼玉県を代表する魚に認定されています。やはり環境の悪化が影響して生息地が減少しており、熊谷市では「ムサシトミヨ保護センター」を中心としてムサシトミヨの保護、繁殖に力を入れています。

 

参考文献:

 『日本の天然記念物』 講談社(1995)

 

参考HP:

熊谷市ホームページ『熊谷市ムサシトミヨ保護センター』 http://www.city.kumagaya.lg.jp/smph/shisetsu/bunka/tomiyo.html

 

 

 

 

 

 

ブログが気に入ったらクリックをお願いします

お城・史跡人気ブログランキング 

B級スポット・珍スポット人気ブログランキン