日時:2024年01月21日(日)14:00~
会場:東京芸術劇場大ホール
指揮:セバスティアン・ヴァイグレ
演奏:読売日本交響楽団
独奏:ダニエル・オッテンザマー
曲目
ニコライ:歌劇「ウィンザーの陽気な女房たち」序曲
ウェーバー:クラリネット協奏曲第2番変ホ長調 作品74
ベートーヴェン:交響曲第6番ヘ長調 作品68 「田園」
感想:
久々に都内に出てきて読響の演奏会。
なかなか平日の夜公演に手を出しにくい状況にいることもあり、この日も日曜のマチネ公演。
以前から感じてはいたのだが、プロ楽団の週末マチネ公演の曲目はややポピュラーというか名曲シリーズ的なライトな層向けの曲目となる場合が多く、夜の定期演奏会などで取り上げる曲目とは一線を画す気がする。
その点、むしろアマチュアオケの方がプログラムに関しては意欲的である。
この日もメインは「田園」で、オケがいつでも演奏できるようなレパートリー曲目であり、そういった引き出しでの演奏会といった印象である。
さて、この日の指揮は読響の常任指揮者のヴァイグレさん。
前日にも同一プログラムの別シリーズの演奏会があり、この日のためのリハーサルはばっちりのはずである。(笑)
一曲目はニコライの「ウィンザーの陽気な女房たち」序曲。
ニコライはウィーフィルを創設した人で、独墺音楽のど真ん中にいた人ということになり、この曲はオペラ用の序曲だが、オペラ自体の演奏は多くなく序曲の身が演奏会用に使われることが多い。
冒頭の弦の音はとても透明感が高く、ここしばらくアマばかり聴いていた私にとってはさすがプロの楽団だなといきなり感心させられる。
もちろん曲そのものがそういう造りなのだが、リズムも香りもウィーン風を醸し出し、そんな雰囲気で包まれる。
続いてウェーバーのクラリネット協奏曲第2番。
ソリストはそのウィーンフィル(VPO)の首席奏者であるダニエル・オッテンザマー氏で、弟はベルリンフィルの首席奏者を務めるアンドレアス・オッテンマザー氏で驚異のクラリネット兄弟であり、その父親もすでに亡くなってはいるがかつてVPOの首席だったというクラリネットのサラブレットのような方である。
さて演奏だが、確かに演奏技術としては高いものを感じるが、歌いの面で表情豊かと問われれば、やや物足りないものを感じる。
今回3階席で聴いたのだが、響きの良い芸劇と言えどもクラリネットの音の深さを聴き取るにはやや遠すぎたのかもしれない。
オケのサポートも非常に教科書的というか、綺麗な演奏になってはいるがやや活力に乏しく、魅力的な音楽にはなっていなかった気がする。
ソリストのアンコールのアンコールを聴く限り、ちゃんとした表現の深さは持っている奏者なので、協奏曲の魅力不足はやや勿体なかった印象である。
後半はベートーヴェンの田園で、この曲をライブで聴くのは、自分の鑑賞記録を見る限り3年ぶりのようだ。
この田園はポピュラーなレパートリーであるが故なのか、教科書的な無難な演奏は良く聴くのだが、残念ながら魅力的な演奏にはなかなか出会えない。
そしてこの日も例にもれず、演奏としてはきちんと整っており、しっかりとした音楽にはなっているのだが、自然の生命力的な活力が感じられず、音楽そのものに魅力が感じられない音楽になっていた。
田園風景の美しい爽やかさはあるのだが、そこに生命の息吹が感じられないのである。
過去に良かった演奏と比較して思うに、例えば第1楽章などはもっと低弦を際立たたせて、音楽に推進力を与えてやると音楽に生命感が宿るのではないかと思うのだが、今回はそういったものは感じられない。
室内でBGMを聴かされているような穏やかな音楽なのであり、まさにリラックスした「週末の午後の音楽会」といった印象である。
決して演奏内容が悪いわけではなくテンポの速度の問題でもないのだが、感情を揺さぶられるような生命力というか力強さは不足している。
第5楽章も淡々と情景が描かれているだけで、自然の凄みを感じる感動には至らず単に素敵な音楽で終わっているのである。
求めているものが違うと言えばそれまでだが、「田園」はもっと自然や生命の息吹を感じる熱い演奏が可能な曲であり、紅茶を飲みながら過ごす週末の午後の曲で終わっては勿体ないのである。
まあ言うなれば、これが週末の午後の演奏と、平日夜の定期演奏会の勝負をかける演奏の違いということになろうか?
そういった意味ではアマチュアのほうが年に数回の限られた演奏会で意気込んだ演奏をするのは当然の話なのかもしれず、技術水準は高くなくとも演奏は熱い。
音楽を聴くという行為は自分の中の感情との対話なのであるが、日曜の午後には日曜の午後用の演奏があるのだということを改めて知った演奏会になった。