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Kyoto Jazz Massive 沖野修也 Official Blog

あれは12年前の事。


今まで体験した事のない

激しい揺れが

突如発生し、

事務所兼自宅の

玄関に飾っていた

お気に入りの花瓶が

落下して木っ端微塵になり、

レコード棚から何百枚という

アナログ盤が飛び出て

床を埋め尽くした。


アシスタントと

妻と

愛犬を連れて

近くの小さな公園に

避難したけれど

我々の他に

やって来る人は

いなかった。


もし、

震源地が遥か彼方なら

これは甚大な被害が

起こっているに違いないと

マンションに囲まれた

目黒区にある

小さな公園で

僕は強い不安に襲われた。


事務所に戻り

ニュースから流れる

信じられない光景を見て

知人達の無事を

祈るしかなかった。

誰とも連絡が

付かなかったからだ。


津波で

逆流した

川が氾濫して

道路に溢れ出し

車や家が

ミニチュアのように

流されて行く。


電柱は

押し倒され

電線は

まるで糸のように

引き千切られていた。


画面の中で

命と生活の気配が

黒く

凶暴な

濁流に

飲み込まれて行った。


その時の光景が

目に焼き付いて

今も鮮明に覚えている。


そんな時、

妻のFacebookに

イギリス大使館から

DMが届いた。


「東京から脱出しろ」

と。


日没後

不安に苛まれる妻を連れて

実家のある京都に向かった。


僕の乗った車両は

僕以外は

ほぼ外国人だった。

あちこちで

フランス語が聴こえたかな。


一体何が起こっているのか?

これからどうなってしまうのか?

僕はただ呆然と

窓の外を眺めながら

途方に暮れていた。


視界の闇は

果てしなく広がり

京都まで

ずっと

トンネルの中にいるような

錯覚に陥っていた。