歯科医にて | 沖野修也オフィシャルブログ Powered by Ameba

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Kyoto Jazz Massive 沖野修也 Official Blog

 

 

僕の愛車、

1975年のBMW3.0cs。

玄人好みのクーペは、

車がお好きな方に

羨ましがられる事も少なくないが、

僕はいつもこうお話しする。

 

「良かったらお譲りしますよw」

 

と。

 

数え切れない程故障し、

JAFに37年入っている僕は、

救急隊員に

完全に元取ってますね

と冷やかされているし、

保険会社に至っては、

毎年、

掛け金の10倍近くの保険料を

彼らは払わされているので、

いつでも他社さんに

お移り頂いて構いません

と言われている。

 

直近の故障は、

夜の山道で運転中に

聞いた事のない

エンジンの異常音が発生し、

エンジンを切っても

エンジンが動き続ける

というハプニング。

キー・シリンダーのトラブルだったのだが、

駆けつけたJAFの隊員が

チェックしている最中に

エンジンルームから煙が立ち上がり、

爆発の危険もあったと告げられた。

 

しかも!

僕の愛車には

クーラーがないのだ(笑)。

 

昨日なんか、

気温37度だったから

車内は60度(肌感)くらい

あったんじゃないだろうか?

動くサウナ。

決して心が整わないやつね。

 

今日、

妻と歯科医の定期検診に

向かう途中の事だった。

高速を降りて

(高速だと窓を開けて

走っていればまだ耐えられる)、

徐々に

車内の温度が上がりつつあり、

妻がいつ

「こんな車、嫌だ!」

とキレるんじゃないかと、

汗と冷や汗が同時に

吹き出始めた時に事件は起こった!

 

「ギャーーーーーーーー‼︎」

 

車内き響き渡る突然の悲鳴。

一体何が起こったのか?

 

僕は瞬時に

嫌な記憶を思い出した。

それは、

とあるホテルの地下駐車場に入る際、

下り坂の途中、

反対側にあった

駐車券発行機に行く為に

サイドブレーキを引いて

車から降りた時の事だった。

ドアを閉めたら、

サイドブレーキの引きが(甘かったのか)外れ、

愛車が、

バーをすり抜けて坂道を下り始めたのだ。

妻が悲鳴を上げる!

加速して行く愛車に

僕はまるで

アクションスターのように飛び乗り、

ブレーキを思いっ切り踏み込んで

事なきを得たのだった。

 

「ギャーーーーーーーー‼︎」

 

シートベルトで

身動きの取れない妻が、

何度も叫び声を上げて、

座席でのたうち回っている。

一点を凝視しながら。

視界の先には恐ろしい光景が。

 

フロントグラスと

車の天井?の隙間から、

節足動物が這い出て来ている。

 

みるみる内に

その全身が姿を現した。

体調15cmはある巨大なムカデが、

妻の目の前で

ブラブラしているではないか!

 

「ギャー!!!ギャー!!!ギャー!!!」

 

泣き叫ぶ妻。

完全にホラー映画だった。

 

僕は

バックミラーとサイドミラーを交互に見て、

後続車やバイクが来ていない事を確認すると

ハンドルを左に切って

斜めに脇道に入り、

急停車した。

 

その時の車の動きを受け、

ムカデが

振り子のように左右に揺れている!

 

そして、

妻の足元に落下した。

 

「ギャーーーーーーーー‼︎」

 

妻が

心臓発作で

死ぬんじゃないかと焦った(苦笑)。

 

僕は車から降り、

反対側に回ってドアを開け

妻を車外に逃した。

 

ムカデがフロアを這い上がり、

ダッシュボードに逃げ込んだ為、

中の物を全部出したけれど、

何処にもムカデはいなかった。

また隙間に入ってしまったのかもしれない。

 

「もうやだーっ・・・」

 

妻が懇願するような顔で

僕を睨み付けている。

 

故障はするわ、

エアコンはないわ、

目の前にムカデがぶら下がって来るわ・・・。

 

歯科医に遅れると説得し、

妻を車に乗せた。

妻は両膝を抱えて助手席に座る。

エンジンをかけ、

バックをして国道に戻る。

 

「ムカデって、ツガイでいるって言うからね」

 

僕がムカデが出た時の常套句を口にしたとたん

 

「「ギャーーーーーーーー‼︎

二匹もいるとかあり得ない!」

 

と妻がまたも悲鳴を。

 

「私、ムカデのPTSDに悩まされるわ、きっと」

 

遠くを見つめ、

妻がポツリとそう呟いた・・・。

 

今、

歯科医の待ち時間に

これを書いている。

妻の検診が先だからだ。

 

愛車は

これまでも何度も

瀕死の状態から甦って来たが、

今回は、

いよいよ

本当に

お別れしなければならないかもしれない。

 

それにしてもあのムカデ、

何処に行ったのかな?

まだ車内にいる筈だよな。

 

とにかく

妻が刺されなくて良かった。

僕もパニックになって

車の事故にならなくて良かった。

 

僕達は今頃、

別の病院にいたかもしれないのだ。

 

いつもなら不快に感じる

歯科医特有の甲高い金属音を聴きながら

僕は不思議と安堵していた。