「兄貴！」
と呼ぶ声がして、
振り向くと
いつもそこに松田さんがいた。
義理堅い松田さんは、
お祝い事には
必ず駆けつけてくれる。
先日も
心斎橋パルコの地下二階にオープンした
DJブースのある居酒屋、
ザ・ニュー・ワールド
（オーナーはミシュランの星付きシェフ、
鳥羽周作さん）のオープニングに、
誰よりも早くやって来て、
最前列で僕のプレイを聴いてくれていた。
リリパの時も、
テラス（イベント）開きの時も、
誕生日にも参列（笑）し、
松田さんは
「兄貴！」
と声を掛けてくれる。
松田さんとの思い出と言えば、
三宮で待ち合わせて
レコードを買いに行ったことかなぁ。
元町まで高架下のレコ屋を
片っ端っから掘ったな
（１軒だけ店内に積み上げられたレコードを
移動するのが困難で断念）。
激安フュージョンから
レアな和ジャズまでを
何十枚と購入した。
途中でC級スニーカーもゲット！
「兄貴、これヤバいっすねー」と
松田さんも絶賛してくれて
「これありっすよね～」と
二人で盛り上がった
（ちなみに妻には不評だったw）。
最後に古着屋にも連れて行って貰ったけど、
お店の人もめちゃくちゃ感じ良く、
ビンテージ好きの僕にも
ドンピシャな店だったのに、
疲れ果てて
集中力が切れ、
何も手にしなかった記憶が・・・
（妻には何か買ったか？
いや、買わなかったか・・・）。
古着！
で思い出した事がある。
大阪のイベントで、
誕生日でもないのに、
松田さんがプレゼントを
くれたことがあった
（いや、誕生日に近かったけ？）。
「兄貴・・・
オモロイもんみつけたんすわ・・・」
普段は大きな声で
僕を捕まえる松田さんが、
その日は小声で近づいて来た。
渡されたのは、
何と
“沖野”と刺繍の入った
古着の冬物のジャケットだった。
「兄貴、
これは買って差し上げな
アカンなと思いまして・・・」
僕は、
不義理な男だから、
松田さんのご厚意に
お応え出来ていないんじゃないかと
いつも申し訳なく思っている。
松田さんには度々ご足労頂いている上に、
神戸を案内して頂いたり、
贈り物まで頂いているのに
僕は何もお返し出来ていない・・・。
長年の友人にも"水臭い"と言われる始末なので、
きっと精神に欠陥があるんだと思う。
悪気はないんです。
いつもやらなきゃいけないことが多過ぎて、
支えてくれる人に対する
配慮が足りないのかもしれない。
妻も「私の話を全然聴いていない」
と呆れているから・・・。
松田さん、
この場を借りてお礼を言います。
いつも気にかけてくれてありがとう！
Facebookのコメ欄で、
勧めてくれた
YMOの暴露本（違うっけ？）も
買いますね。
ちなみに
松田さんと僕は
YMOキッズ（笑）。
その上で、
ジャズもフュージョンも
アシッド・ジャズも和ジャズも好き
という意味では音楽遍歴も似ている。
The RoomのGM冨永から
松田さんをThe Room Radioに
ブッキングした旨の
メッセージが送られて来た時、
自分がニヤけているのが判った。
それは、「兄貴！」と叫ぶ
松田さんの声が
耳の奥でこだましたのと同時に、
きっと何か仕掛けて来るだろうなと
直感したからだ。
関西人にして
YMOで音楽に目覚め
（松田さんも僕と同じく
そうであるに違いないと勝手に思っている）、
ジャズDJを名乗る人間が、
捻らん訳ないやろ～
と頭の中で
僕は独り言ちた。
松田さん、
また高架下に行きましょね。
あの断念した店、
今度は全部掘ったりましょ！
松田光司 (Seditional Jazz / Freedom Time)
'90年代初頭から神戸を中心に数々のイヴェントを手掛けてきた関西クラブジャズシーンのキーパーソン。
2007年5月からスタートした、自らオーガナイズするジャズ/クロスオーヴァーイヴェント、
「Seditional Jazz」(神戸)では良質で最新のサウンドを紹介すると共に、
KYOTO JAZZ MASSIVE / 沖野好洋氏が主催する「Freedom Time」(大阪)にもレギュラーDJとして参加。
また2014年にはNYの伝説的アーティスト、アート・リンゼイのジャパンツアー神戸公演のフロントDJを務める。