セグロセキレイ | 沖野修也オフィシャルブログ Powered by Ameba

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Kyoto Jazz Massive 沖野修也 Official Blog

山の中腹から見下ろすと、

大きな川が高速道路と交差している様子

が視界に入った。

 

どこまでも続く平野の端には、

京都から大阪へ続く山々が連なっている。

そしてその上には薄暗い雲が

まるで不吉な知らせのように

細長く横たわっていた。

そこからグラデーションを描きながら

平野を覆って

灰色の空が僕の頭上まで繋がっている。

 

天気予報は雨だったけれど、

その気配はまだない。

乾いた風に湿気は染み込んでおらず、

むしろ目を閉じれば、

初夏の心地良い

午前の木陰にいる錯覚さえ感じられた。

 

母が亡くなって丁度100日。

午後の法要の前に、

僕は墓地に花を持って立ち寄ったのだ。

 

管理人から、

ゴルフ場の開発を逃れて

姿を現すようになった鹿の好物だから、

菊を避けるようにと言われているのを

すっかり忘れていた。

バラと母の日用のカーネーションと

一緒に束ねられた菊は、

母が好きで、

僕は苦手な花だった。

 

死んだ後は、

見晴らしのいい場所に埋められたい

と言って生前に墓地を購入した父。

そして、

冬の雨の日に墓参りをした際に

「お父さん寒くて可哀想やな」

と僕に同意を求めた母。

 

人間は死ぬと無になる

と考えていた自分には

理解出来なかった二人の想い・・・。

でも、今は、二人があの世で

一緒にいられるといいな

と思えるようになった。

 

ふと空を仰ぐと

白い羽を持つ黒い鳥が

二羽、飛んでいるのが見えた。

離れてはまた近づき、

仲睦まじく、

舞いながら、

僕の視界を横切って行く。

 

父母が眠る墓に向かう途中、

マスクをした男性一人、

女性二人の3人組が歩いて来るのが見えた。

僕よりは年上だろうか?

誰もいないと勝手に思い込んで

僕は車にマスクを置いて来た事に気がついた。

怪訝そうな顔をしながらも、

彼らは無言で通り過ぎて行った。