ショウビタキ | 沖野修也オフィシャルブログ Powered by Ameba

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本日、休暇を頂きまして(毎週火水が定休日なんです)、

滋賀県のマキノという所へ妻と車で出かけました。

 

メタセコイヤが並木になっている直線道路がありまして、

滋賀県でも人気の紅葉スポットとして知られているんです。

 

この時期、京都はどこも混み合っているので、

敢えて穴場を狙った訳なんですが

(滋賀県で人気と言っても京都とは比べ物になりませんからね)、

全く紅葉の気配がなく・・・。

 

マキノは京都よりかなり北部なので、

今が見頃?と勝手に推測したものの、

まだまだ緑で、観光客もまばらでした(苦笑)。

 

人混みを避けたことだけは正解でしたね。

 

落胆を引きずらないようにすぐに車で南下し

滋賀県は高島市にある、以前訪れたカフェで

ランチをと思ったんですが、何とフードは全て売り切れ・・・。

 

昼ご飯にもありつけず、踏んだり蹴ったりの休日となってしまいました。

 

お茶だけして、駐車場に戻ることに。

そして、ガレージの裏にお寺があったのでちょっと覗いてみることにしたんです。

 

ところが、新しく建て直したみたいで何の風情もありません。

泣きっ面にハチとはこのことですね。

 

こういうツイてない日は帰るに限ります。

お寺の回りを一周し、

妻と境内を横切って駐車場に戻ることにしました。

 

お寺の廊下がガラス張りになっていたんですが、

ふと、小鳥が何度もぶつかって、逃げようとしているのを見つけたんです。

 

本堂の正面はガラスがなくそこから入ったんでしょうけど、

両側を回廊的に取り巻く部分は塞がっていたんですよね。

 

(後で調べた所、ショウビタキというこの時期に日本各地で見られる渡り鳥のメスでした)

 

激しくぶつかるものだから、その内、落下して姿が見えなくなりました。

いたたまれなくなった僕は靴を脱いで本堂に上がり、救出に向かったんです。

 

サッシの溝の部分で小鳥がうずくまっています。

ひざまずいて手を差し伸べ、優しく捕まえました。

目は開いていたので意識はあるようです。

 

そして、外に出て逃がすつもりで、僕が立ち上がったその時!

軽く握った僕の拳から小鳥が抜け出し、再びガラスに勢いよく激突するではないですか。

残念なことに、元いた場所に再び落ち込んでしまいました。

 

恐る恐る再度救出します。

まだ生きていました。

今度は先程よりも少しだけ、拳を固め、

僕は足早に本堂前の階段を降ります。

すぐさま手を開くと、

勢いよく小鳥が飛び立って行きました。

 

あっと言う間の出来事です。

僕はその日の不運(と呼ぶ程大したことないんですが)を全て忘れ、

ささやかな充実感に満たされていました。

 

僕達が偶然お寺の境内に足を踏み入れたから

その小鳥を見付けることが出来た訳です。

 

あのまま誰も来なかったら、

何度も何度もくちばしを

透明な固いガラスにぶつけ

いつしか息絶え、動かなくなっていたかもしれません。

 

"僕は"、ラッキーだったんです。

 

誰に褒めらることもないし、

鳥に感謝されることもないでしょう。

そのことで世の中が良くなったりすることもありません。

 

ただただ僕は嬉しかった。

小鳥が、無事に、元気で、自然に帰ることが出来たことが。

 

小鳥は境内の木陰をすり抜けて

何処かに消えてしまいました。

それでも、僕の手のひらには、

小鳥のぬくもりが仄かに残っていました。

 

紅葉にはまだ早かったけれど、

日が傾いて来たので、

冷たい風が僕の首筋に忍び込んで来ます。

 

僕は、妻と足早にお寺の敷地を後にすることに。

砂利を踏む音だけが聴こえる静かな街でした。