掘る | 沖野修也オフィシャルブログ Powered by Ameba

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Kyoto Jazz Massive 沖野修也 Official Blog

現在、

神田のギャラリー、Tetokaで開催中の

『呼吸する視覚

〜沖野修也コレクション&クリエーション展』は、

僕にとっては新たなチャレンジとなった。

 

かつて

バーニーズ ニューヨークの新宿店で

イラストレーション展を行なったことはあるものの、

もう2年振りの個展になるし、

蒐集物と制作物を並列する展示は

初めてのことだったからだ。

 

それに、

この特殊な展覧会の

僕の狙いが来場者に伝わらないと

僕に常日頃からつきまとうある疑惑が、

決定的なものになってしまう・・・。

 

何でも屋。

 

そう、

それは僕にかけられた疑いであるだけでなく、

僕の行動を否定する"殺し"文句でもある。

 

クラブDJ、

ラジオDJ、

リミキサー、

作曲家、

プロデューサー、

クラブ・オーナー、

フェスティバル・オーガナイザー、

音楽事務所社長、

執筆家・・・。

 

ただでさえ僕は、

色んな事をやっている人と捉えられている。

でも、考えてみて欲しい。

 

これは、全部、

自分が好きな音楽(メロディーや演奏も)を

世の中に紹介する仕事なのだ

 

だから、

通常業務に何の後ろめたさもないし、

僕のエクスキューズ?に

反論する人は皆無である。

むしろ僕は

これからの音楽家は

何でも自分でやって行かないと

喰えないとすら思っている。

 

副業でも兼業でもなく、全業。

実際に

"全業のススメ"

なんて本を書く構想もある。

 

しかし、

今回の展示は、

僕が何をしている人なのか理解できていない人を、

更に混乱させる恐れがあった。

 

そもそもTetokaの手塚敦嗣さんから

「Tetokaで何かやって下さいよ!」

というオファーに快諾したものの、

イラストの新作はないし、

やる以上は面白いことやんないとなぁ・・・

と考えている内に

3ヶ月位があっと言う間に過ぎてしまった(苦笑)。

 

フライヤー作るのに素材下さい!

と言われたのが

展覧会開始の1ヶ月前で(汗)。

火事場の馬鹿力的に思いついたのが、

このコレクション&クリエーション展だった。

 

以前、

タワーのミニチュアや花瓶のコレクションは

雑誌で取り上げてもらったこともあるし、

Instagramの窓格子の写真もご好評頂いている

(ポラロイド写真にしてグループ展にも参加した)。

祇園のPass The Batonでは私物の展示販売もやったし、

今年に入ってJazzy Booksというモバイル書店も開始した。

ならばいっその事、

その全てを合体させてみるか!

ついでに?

自分がこれまで作って来たものも

まとめて紹介するか!!

という考えに至ったのだ。

 

ただでさえ何でも屋と思われている僕が、

さらに誤解を招くコンテンツ。

 

でも、やると決めた。

50歳を目前に控えたある意味の集大成。

 

きっとイケる!

いや、

多分イケる??

 

とは言え、

僕はこの企画を実現すると決意したが故に、

ある重大なプレッシャーを抱え込む事になる。

 

それは、

ポール・スミス展での出来事。

 

友人にご招待頂き、

京都の近代美術館に足を運んでみたら・・・。

 

うぉーーーーーーっ!

 

これ、

まさにコレクション&クリエーション展やん!!

しかも規模デカいし、

天下のポール・スミスやし、

認知度圧倒的に高いし!!!

 

と僕は衝撃を受ける。

 

ま、

誰も僕とポール・スミスを比べたりしないけれど、

仮に両方行く人がいたら(僕みたいに)、

"しょぼいなぁ"と思われないかなと

もの凄く不安になった。

 

穫らぬ狸の皮算用か(笑)。

 

勿論、

開き直って粛々と準備するしかなかった。

で、

その過程で僕は

ある事を再認識する。

 

それは

"掘る"

という事。

 

レコードを探すことを掘る(発掘する)と言うけれど、

同様に

僕は色んなものを掘っている。

 

つまり

僕は、

集める前に

掘っているのだ。

 

だから厳密には今回の展示は

発掘した蒐集物

だと思う。

 

レコード、

本、

ポスター、

サングラス、

スカーフ、

帽子、

ネクタイ、

ネックレス、

カバン、

海パン、

タワーのミニュチュア、

窓格子(撮るだけでなく買ってもいる)・・・。

 

まだ

誰もその魅力に

気付いていないものに

光を当て、

価値観を逆転する。

 

まさに"レア・グルーヴ"の概念を

レコード以外のモノにも

僕は応用していると言えるだろう。

 

注)レア・グルーヴとは

発売当時見向きもされなかった

B級のファンクやソウルを

DJ達が

ダンス・ミュージックとして再生した運動。

80年代の中期にロンドンで一世を風靡し、

ヒップ・ホップの元ネタの再評価とリンクし

世界的なムーブメントとなった。

 

中古盤屋、

古道具屋、

古着屋、

骨董市、

フリーマッケト、

そして、

ネットで

僕は埋もれた逸品を掘りまくって来た。

 

決して評価が定まった

高額商品ではない

(Pucciのように今は高価でも

昔、随分安く手に入れているし、

レア盤等の高価なものでも

安く手に入れる工夫をしている)。

 

誰かが値打ちを付けたものに

大枚を払うのは

僕のスタイルではないから。

 

そして

僕は埋蔵品をしげしげと眺めたり、

聴いたり、

身に付けたりすることで

触発され、

自分の作品にその影響を投影して来た。

 

今回並列展示している

僕が手掛けた作品/商品〜

アナログ盤、

CD、

デザイン、

イラスト、

サングラス、

眼鏡、

カバン、

帽子

どれも

蒐集したものに

インスパイヤーされたものばかりだ。

 

曲なんかも

まさに膨大な楽曲のコレクションが

僕の創造の源になっているし、

将来的には

オリジナルの花瓶や窓格子を

作りたいとさえ思っている。

 

今回、

個展のタイトルを

『呼吸する視覚』と名付けたが、

まさに僕は

呼吸をするように

日々発掘作業に勤しんで来たとも言える。

 

ポール・スミス展には敵わないし、

競ってもいないけれど、

彼の展覧会で見た、

最初のショップと

彼のオフィスは

参考にさせてもらった。

 

だから『呼吸する視覚』は

僕の部屋であり店である

(実際に一部コレクションは販売)。

 

こんな部屋に住みたいし、

こんな店をやってみたい。

 

何でも屋。

 

何でも売ってるけど

"掘る"という意味では

一貫していると思う。

しかも

僕にとって視覚的に

心地良いものしか扱っていない。

 

友達として、

或は

お客さんとして

気軽に足を運んで頂きたい。

 

これが沖野ワールドなのだ。

小さくて風変わりだけど。