もう我慢出来ない④ | 沖野修也オフィシャルブログ Powered by Ameba

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Kyoto Jazz Massive 沖野修也 Official Blog

レストランのスタッフに
カード・キーを見せると
不機嫌そうな顔で
「モスクワね」
と呟かれ、
ある方向を指差した。
そこには
ビュッフェ・コーナーが見えた。

何種類かの食事を
選択できたのだけれど、
どれも食欲をそそらない。
鶏肉、牛肉、豚肉、野菜・・・。
肉ものは
どぎつい色付けがされている。
雑にカットされた野菜は
時間が経ってしなびていた。
素材は安全なのだろうか?
放射能の汚染より
食品添加物の方が
マシと自分に言い聞かせ、
キャベツのソテーと
ミート・ボールを食べる事にした。

僕が
4人掛けのテーブルに座ろうとすると
レストランのスタッフが
「大きいテーブルに座って!」
と大声で捲し立てる
(怒ってないんだよね?
それが普通なんだよね?)。

僕は相席の必要のない
大きな丸テーブルに座った。
他のテーブルには
誰かが座っていたからだ。
ただ、
一つ問題があった。

そのテーブルの上には
誰かの食べ残しがあって
まだ下げられていない。
しかも、
テーブル・クロスの
あちこちが汚れている。
一気に食欲が減退。
そして、
恐ろしい事が起こり始めた。

スタッフが
他のテーブルにあった残飯を
僕のテーブルに持って来て
目の前で
食べ残しを一つの皿にまとめ始めた。
効率良く片付けたいのかもしれないけれど、
僕は食事中だ。
もう、
怒りを通り過ぎて悲しくなって来た。

フライトがキャンセルならまだしも、
自腹でホテル代を払い、
僕は
残飯を見ながら食事している・・・。

世界35カ国、
140都市を駆け巡り、
47歳でDJ生活25周年を迎えたというのに
このザマだ・・・、

実は、前夜、
僕は財布を落とし、
通った道を探しながら戻って
家に一番近くて
かなり大きな交差点の中で
それを発見するという
レアな事態に遭遇していた。

車に轢かれ
破れた財布からカード類が飛び出し、
路上に散乱していたけれど
中身は全部回収できたのだ。

俺はなんてラッキーな男なんだ!
と思っていたのに・・・。

ちなみに
食事は
全部平らげた(苦笑)。
親の躾(洗脳?)が厳しくて
僕は注文した食事を残せないのだ。
この時程
自分の性分を恨んだ事はない。

刑務所に入った事はないけれど
きっとこういうものを
食べさせられるのではないか
と獄中の生活を想像した。
味気ないキャベツに、
やたらと塩気の強いミート・ボール。
確かに何処へも行かないと決めた僕は
一泊だけ
このホテルに幽閉されるのだが。

箸を揃えて皿の上に置くと
合掌して席を立った。

(つづく)