DJの心境 | 沖野修也オフィシャルブログ Powered by Ameba

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Kyoto Jazz Massive 沖野修也 Official Blog

DJをしている時に
僕達の心理状態がどんな風になっているか
興味ある人いますか?

今日は、
FUJI ROCKでの僕のプレイを回顧し、
偽らざる心境を書き綴ってみたいと思います。

まず、
1曲目は
イタリアのプログレッシッヴ・ロックを選択。

といってもフロアーにまばらに集まった人には
ちょっとクレイジーな
ジャズに聴こえたでしょうね。

僕が回したのはクリスタル・パレスという会場で
建物自体を輸入したそうです。
サーカスのテントにも似た内装が
素敵でした。

ここでやるの2回目なんですけど、
前回はファンキーなロックがウケたんですよね。

故に
プログレから入って暫く様子を見る事に。
イントロがドラムレスで仰々しく始まるので
プレイの導入部としては
まずまずだったと思います。

ドラムが始まると同時に踊り出す人もちらほら。

今回は僕の後に回すのが
大塚広子だったり
RYUHEI THE MANだったりしたので
手が抜けません。

レア盤から
誰にもできない組み合わせまでを披露し
同業者をも
楽しませてこそ
プロです。


故に気合いも入ります。

しかし、
いきなり2曲目の
ロシアン・ジャズで
窮地に・・・。

この曲はロック度が高く、
個人的にはむしろ、
2曲目の方が
ハコにはドンピシャかなと思ったんですが、
ロシアのジャズは音圧が低いので
一気にテンションが急降下。

慌ててボリュームを上げるも、
途中何度も入るブレイク(ドラムがない部分)と
突如現れる倍速のビートに
オーディエンスは混乱状態に陥ります・・・。

そこがあるから
格好いいんですが、
そこがあるから
ダンス・ミュージックとしては難易度が高い。

「ひょっとして俺、
やっちゃった系?」


とフロアーを見渡しながら
心の中でつぶやきました・・・。

それでも
この摩訶不思議なジャズ・ロックを
最後までかけきり
(終了後、
僕をブッキングしてくれた栗澤さんに
褒めて頂けたのが
せめてもの救いでした)、
同様のエッセンスを持ち、
音圧の劇的な回復を図る為には
あの曲しかない!

そこで
FUJI ROCKに遊びに来ていた
富永陽介の
HAZEを投入!


MOUNTAIN MOCHA KILIMANJAROの
タイガー岡野が叩き出すブレイク・ビーツに
ROOT SOULの池田憲一のファズ・ベースが絡む
攻撃的な一曲。

曲を知っている人もいたのか
歓声が上がって
人がぐっとDJブースの方に
前進して来ました。

それでも
まだまだ入りは満員には程遠く
(僕がトップバッター?でしたからね)、
このHAZEを契機に
場内の温度がぐっと上がるのを実感しながらも
畳み掛けないと
空いたスペースが
いつそれを低下させてしまうか判らない・・・。

そこで、
次の曲のイントロの
ドラム・ブレイクをHAZEにカット・イン。
果たして
サックスがキャッチーな
ディスコティックなオルガン・ジャズは
機能するのか!!??























































「ありやね!」

僕はほっと胸を撫で下ろしました。
富永のロック感を超える
パワフルな曲ではなく、
後の展開を見越して
メロディアスな方向にシフトしたんですが、
その判断に正直自信はなかったんです。

1時間という限られた時間の中で
色々な音楽を紹介したい僕としては
ここで4つ打への布石を打っておきたい。
故にディスコっぽいハイハットの入った
ジャズ・ファンクの選択でした。

最初の2曲で
来てる人は
1曲丸々聴くモードじゃないんだな
と察知していたので
この
クイック・ミックスが
功を奏したという事もあったに違いないでしょう。

フロアーが徐々に埋まりつつあったので
この曲で聴衆をしばし観察。

彼等は何に反応しているのだろうか?

テンポか?
ドラム・パターン?
サックスのリフ?
それともオルガン・ソロ?

僕のブースでダンスしながら
場内を見回し・・・

僕が下した結論。

今日のお客さんは
ホーン好き。


そこで、
同様にサックスのリフが特徴的な
ギル・スコット・ヘロンのRe-editで
引っ張りました。

なのに・・・。

そのレゲエなベースラインに触発され
僕はShaun Escofferyの
Days Like This (DJ Spinna Remix)をミックス。

この曲、
随分前のリリースなんですが、
この夏参加した
モンテネグロのフェスでかかっていて
大盛り上がりしていたのを目撃し
リバイバルさせる事を決意した
ミッド・テンポのハウス・ミュージック!

曲の関連性は問題ない筈、
しかも、今、かなり推したい曲!

なのに・・・。

ちょっとフロアーに戸惑いが・・・。

ハウスだから?
少し古い曲だから?
歌モノだから?

こういう時は早目に切り替えないと・・・。

すかさず、
Days Like Thisにテンポも近く、
今、個人的にはイチオシのハウス、
Detroit Swindleの
64 Ways feat. Mayer Hawthorne
(Kerri 'Kaoz' Chandler Vocal Remix)
で持ち直したいなと・・・。

なのに・・・。

結論。

クリスタル・パレスで
お洒落な
ハウスは危険。

この2曲で
一気にピークに持って行きたかった僕としては
自分の不甲斐なさに
心が折れ、
かなり気が動転してしまったんですよね。

W杯の本田、
或は香川状態。


こんな筈じゃない!的な・・・。

Detroit Swindleから
いきなりロックぽくも回帰できないし
かといって洗練されたハウスを続ける
というチョイスはないし・・・。

しかも、
この時点で既に残り30分を大幅に切っている・・・。

実はこの日、
僕には
密かなミッションが
あったんです。

なんとロンドンの伝説的ダンサー・チーム
JAZZ DEFEKTORSのメンバー、
PAUL CUMMINGSさんが
FUJI ROCKに遊びに来ていて
ライターの花房浩一さんに
引き合わせて頂けたんですよね。

PAULさんが
クリスタル・パレスに遊びに来てくれる
とおっしゃるので
僕は、
彼等がカバーした
(80年代にアルバムを花房さんのプロデュースで
リリースしてるんです)STEVIE WONDERの
ANOTHER STARを
かけると
約束したんです。


だからハウスがハマればその流れで
男性ボーカルのハウスから
ANOTHER STAR(しかもジャズなヴァージョン!)
に行けるかなと・・・。

ただ
DJプレイって
コミュニケーション
ですから、
自分の思い通りには
いかないんです。


でも
だからこそ面白い。

自分がかけたい曲と
お客さんの反応のせめぎ合いw。


そこで、
僕が思いついたのは
ブレイク・ビーツをサンプリングして
ドラムン・ベース的なベースを配した
インストのディープ・ハウス。

ボーカル・サンプルがちょっとキッチュ。
しかも
トランス的な高揚感もあるので
野外フェスには
持ってこいのトラックなんですよね。

僕が回してるのはテント風の建物の中ですが、
FUJI ROCKに来てる人でもOKなハウスは
これしかないだろう!

なのに・・・。

CDが見つからなかったんですよ!!

何度も何度もケースの中に入っているCDを注意深く探すも
その曲が入ったCD-Rが何故か見つからない。

正直、焦りました
(DJが終った後に富永に
「沖野さんテンパってませんでしたw?」
とバレていた事が発覚)
・・・。

このままでは
お客さんの気持ちは萎えて行くし、
早く切り替えないと取り返しのつかない事になる・・・。

で、
ANOTHER STARのジャズ・ヴァージョンに
辿り着く為にも
僕はインストの4つ打ちラテン(新譜)にシフト。

Detroit Swindleとの関連性はかなり薄かったけれど、
(かろうじて同じテンポで4つ打ち、
キーボードがフェンダー・ローズ)
追い込まれるといちいち考えてられないんですよね。
もう勘です。勘。

ところが
これが大正解!

一気に
会場が盛り上がり
ダンス・パーティーが
見事に
成立。

やっぱり
ホーンが好きだったのね。

そうなんです。
判っていたのに、ギル・スコット・ヘロンの
ベース・ラインに僕自身が反応してしまって
ホーンの入っていないハウスを2曲も続けてしまった事が
失敗でした。

ここで
ANOTHER STARが
ハマれば言う事ない!!


と思ってCD-Jに曲を入れ
ヘッドフォンで確認するも
何か違和感があるんですよね。

共にラテン系で
ホーンも入ってるし
BPMも近い・・・。

原因が判りました。

今かけている曲は
サルサっぽいリズムであるのに対し、
ANOTHER STARのカバーは
もう少しブラジルっぽいリズム。

しかも、
かなりアッパーに盛り上がる中
ANOTHER STARのカバーの
憂いを帯びたボーカルには行きにくい・・・。

僕は、
PAULさんとの約束を
果たす事を
断念。

やむなく、
ディスコのRe-Editに転向。

ホーンも入ってるし、
4つ打だし
熱苦しい混成ボーカルが入っているので
グルーヴを強化出来る筈。

これまた
大ハマリ!!


その時です。
突如ひらめいたんですよね。

この後には
あの曲がかけられる。

残り時間は13分になっていました。

そう、僕がかけたのは
STEVIE WONDERの
迷信の
OPOLOPO Edit。
ハウスのテンポに
BPMは引き上げられ
HERBIE HANCOCKの
Hang Up Your Hang Upsを
サンプリングした
強力な作品。

ここでまた教訓。
カバーは皆大好き。


残り7分で遂に
ラスト曲、
ANOTHER STARに辿り着きました(苦笑)。

マイクでPAULさんを紹介し、
来場者の皆さんにもお礼を。

悪戦苦闘しつつも何とか形になった
僕のクリスタル・パレスでのDJセット。

僕の心境はこんな風だったんですよ。

こうして
自分のプレイを振り返り
失敗と成功を分析する事で
この経験がまた
別の機会に活かせるのではないかなと。

ちなみに
PAULさん、
25年以上前に出した
自分の曲を
DJがかけるのを聴くのは
初めてだったそうです。

シュールな体験だったと・・・w。

喜んで?頂けて何よりです。
会場の皆さんがダンスしている様子を
嬉しそうに眺めてらっしゃいました。

おわり