The Room誕生秘話その8 | 沖野修也オフィシャルブログ Powered by Ameba

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Kyoto Jazz Massive 沖野修也 Official Blog

ONE SONG,ONE SOUL~
The Room 20th Anniversary party special
DJ100人一曲入魂開催まで、
あと75日!
ですが、

遂に本日、
The Room誕生秘話、最終回です。

契約から1週間後のオープンを決意した僕達3人に
課せられた
最後の重要なミッション。

それは、
店名の決定でした。

その空間を象徴するネーミングは
何だろうか?
それに
緊急に
告知も始めなければいけません。

元々私書箱だった物件を取り壊す前日、
僕達は
粟田さんの私物のオーディオセット
(僕と粟田さんの弟は
粟田さんが勉強部屋として借りていた
3DKのマンションに居候していたんです)

またも無断!

持ち出して運び込み
イメトレ?
を敢行しました。

3人でグレーのカーペットに座り込み
爆音で音楽を試聴。

その時かけたのなんだっけ?

よく覚えてないんですが、
これは店がオープンしたら
アンセムになるだろうな・・・
なんて曲が入ったアルバムを数枚
持っていったと思います。

僕達は蛍光灯を消して
闇の中でいつまでも
僕のお気に入りの
ソウルやジャズを聴き続けていました。

オープンまでの
突貫工事で
てんてこまいする事や
その数週間後、
大晦日にお客さんが8人しか来ない事、
更には
翌月に
あまりの来店者の少なさに
閉店の危機に追い込まれる
などとは
つゆ知らず・・・。

オーディオ・セットに灯る
赤や緑のライトが
都会の夜景を彷彿とさせます。

僕は間違いなく地下にいたのに
夜の東京を俯瞰する錯覚に襲われました。

スクランブル交差点に蠢く
多数の人々。

ビルの谷間に連綿と続く
テール・ランプの行列。

銀座の
六本木の
そして
渋谷の
ネオンが
夜空にぶちまけた
宝石のように輝いています。

僕は目を閉じて
夜間飛行を楽しみました。

音楽がその空間に充満し、
僕の存在が
暗闇の中に
完全に埋没する。

意識だけが
人工的な
星空に
浮遊するのです。

自分が
"いる"

からも解放され
ただただ
音楽に身を任せ、
あらゆる
苦悩

困難

不安

忘却し、
その
瞬間

永遠
である事を
夢見て・・・。

いつしか
僕は
目蓋を
閉じても
開いても
同じ景色を
見ている事に気付きました。

東京で自分の店が持てる。
ジャズやソウルを売りにした
クラブがオープンできる。

その
高揚感は
現実
からの
逃避

現状

黙認
ではなく、
試練に
立ち向かう
勇気の
源泉でもあり
生きている事の意味に
一歩近づいた

でもありました。

「自分の好きな音楽をこんなに大きい音で聴けるなんていいね」

僕は
経理の中野さんと
粟田さんの弟に
そう言いました。

そして、
こうも付け加えたのです。

「こんな部屋に住めたらいいね」

と・・・。



































































その夜、
僕は
迫り来る
数々のトラブルを知る由もありませんでしたが、
同時に
その店が
こうして
20年も続く事を
全く予想していませんでした。

そして、
「店をやれ」
と言ってくれた
粟田さん

出資してくれた
中野さんが
亡くなり
僕の背中を押してくれた
粟田さんの弟と連絡が取れなくなる事も
決して想像する事はなかったのです。

そう、
The Room創業に関わった
3人はもう誰もいなくなってしまいました。

僕は

The Room誕生のいきさつを
皆さんに打ち明ける事を終えると同時に
本当にお世話になった
彼等に
静かに
思いを馳せたいと思います。

(完)