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Kyoto Jazz Massive 沖野修也 Official Blog

僕から変わったライナーは
ラテン・ハウスから
少しずつ
エレクトリックな方向にシフトしてゆくと
ミニマルなグルーヴで
オーディエンスを
しっかりと
ロックしていった。

その頃
僕は
というと
控え室で
ニックや
ユキちゃんと
しばし
歓談。
責任を果たした事も
あって
余裕綽々
となる筈だったが・・・。

JAZZAMARの友達なんかと
挨拶の際に
日本人は
女の子の頬に
キスをしない、
ヨーロッパでは
左右に一回ずつ、
ベルギーじゃ
それぞれ
2回ずつ計4回、
ロシアじゃ
口にする?
なんて
他愛もない話をしていた時の事だ。

なんだか
急に
みんなの英語が聞き取りにくくなり
座っていた
木製のイスが
ゆっくりと
床に沈んでゆくような気がした。
でも
それは
同時に
泥の上で
浮いている事にも
似ていて
僕はとっさに
テーブルを強く掴まなければならなかった。

部屋が
回っている?

みんなの
笑い声が
水の中で
聴こえる
みたいに
なんだか
リアルに
届かない。

船だ。
船が
揺れているのだ。

ふ、
船酔い?

しかも、
会場に来てからというもの
ご機嫌な
JAZZAMARが
シャンパンを何本も空けて
注いでくれていたから
酒にも悪酔いしつつあった。

実は僕、
シャンパンが苦手なんです。
一杯二杯は
付き合いで飲むけど、
それ以上は、無理。

なのに、
ディナーの時に
ライナーが選んだ赤ワインをしこたま
飲んで
かなり気分良くなっていたから
調子に乗って
シャンパンのグラズも
次から次へと
飲み干していた・・・。

唾液が溢れ出して止まらない。
口元を引き締め
舌を上あごに押しつける。
その流出を防ごうとするも
生暖かい体液が喉元を通り過ぎて行く度に、
脂汗が吹き出してくる。

酒で気分が悪くなりつつある上に
船酔い。

最悪の事態。

気分を紛らわせようと
ダンス・フロアーに向かうも、

視界の平衡感覚が
完全に失われていて
控え室から
DJブースに
至る通路を
通り抜けるのも一苦労。

実際は、
そんなに
大きく揺れていなかったのかもしれないけれど、

自分が
酔っている事を自覚してからは
難破船に乗っているような
錯覚に陥った。

やっとの事で
DJブースに辿り着くと
ライナーが
「あと一曲で替わろうよ」
と言ってきた。

もの凄くテッキーな
ハウスで盛り上がっているではないか・・・。

僕は
頷いたものの
この後にかけるべき
アイデアが
全く思い浮かばなかった。

本当に
それどころでは
なかったのだ。
(つづく)