事務所便り 2010年12月号(6) もう一つの消えた年金

『月刊社会保険労務士 2010年12月号』(発行:全国社会保険労務士会連合会)より

 

未支給年金の必然的発生を防止するために

 

自民党から民主党への政権交代の引き金の1つとなった消えた年金問題ですが、最近はあまり話題に登らなくなりました。主に旧社会保険庁の怠慢で生じた問題で、日本年金機構に生まれ変わってからは問題解決のためにいろいろな努力を続けており、このブログでも取り組みの現状を紹介しました。

 

告知板 - 「消えた年金」問題

 

実はこれ以外にも、合法的に発生する消えた年金というものが存在します。今回、神奈川会の会員の方が会報に投稿されていましたのでその記事をご紹介したいと思います。

 

もう一つの消えた年金とは

年金受給権者が亡くなった際に自動的に発生する未支給年金のことを指しています。なぜこのようなことが起こるのかというと、それは年金の支払いが、現行規定で偶数月の15日に前2カ月分を支払われることになっているからです。言い換えると年金は後払いになっており、そのため受給権者が死亡すると、1~2カ月分の未支給年金が発生することになります。

未支給年金は相続が認められていない

亡くなった受給権者に同居の親族等がおり、生計維持関係にあった場合は未支給年金を請求することができますが、いない場合は相続人であっても請求することはできないと定められています。そのため、例えば独り暮らしの年老いた年金受給者が死んでしまうと、未支給年金は誰にも支払われず、国庫に残ることになる訳です。

年金は当月1日に支給すべき

この未支給年金の問題を解決するために、投稿された神奈川会の会員の方は、当月分の年金を当月1日に支払うよう改めるべき、と言われています。私もその方がいいと思うのですが、国としては少しでも歳出を抑えたい、というのが本音なのでしょうか。

 

国家公務員や地方公務員の共済年金では、支給未済給付があるときは相続人に支給することとしているそうです。こういう官民格差があるところが姑息なやり方として国民に嫌われることになる訳です。年金もそうですが、財政破綻という国難に官と民の違いなく苦労を共にするという意識を持つこと、これが今、最も必要とされているのではないでしょうか。

 


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