頻繁に来ているので新鮮味はないが、彼と一緒の思い出を作れるのなら何だっていい。ここも一通り見て、まだまだ時間に余裕が。さらにもう一箇所向かってくれるらしい。二人で初詣として訪れたことのある場所だ。
夕方になり人も少なく落ち着いていて、ピンクの濃い桜が綺麗だった。桜じゃないのかもしれない。
そろそろ引き上げだろう。自宅のすぐ傍まで戻ってきた。疲れているはずだから早く帰って休ませてあげるのが優しさだ。寂しいけど、あの場所に着いたら、私からさっとドアを開け帰らなきゃいけない。そればかりに気を取られていた。
いつもの裏側で停めるのかなと思ったが、近くのコンビニの駐車場に行った。大通りではなく人通りの少ない側へ停める。
ぼーっとしていたら見逃してしまう。彼が何を考えているのか、常にアンテナを張っているわけじゃないのでわからない。だけどここまでの道のり、寒いと言う私の手を温めながら走らせてくれた。右の後、左も。手と手を重ねて、ずーっと。運転中のそれがどんなに私を幸せにしてくれるか、彼は考えたこともないだろう。
シートを倒して寝転がる彼。私にこっちおいでの仕草をした。