2012/10/31 7:00 日本経済新聞
フィギュアスケートのグランプリ(GP)シリーズが始まり、2010年バンクーバー五輪銅メダリストの高橋大輔選手(26、関大大学院)は11月2日から開催される中国杯(上海)に出場します。ソチ五輪まで1年4カ月。今季はフリーで4回転ジャンプ2本に挑む男子のエースは「臆病にならないことで壁を越えやすくなった。自分の可能性をまだ感じられる」と確かな成長を感じ、五輪への道を楽しんでいるようです。
■コーチは3人というイメージ
今季のフリーはすごくスケールの大きい曲(オペラ曲「道化師」)なので、それに負けないように、スケールの大きなスケートをしたいと思っています。
ショートプログラム(SP)はロックンロールメドレーなので、お客さんが乗れるような演技ができればいいなと思います。
今季からニコライ・モロゾフコーチと一緒に仕事をすることになりました。9月にロシアで練習したんですけれど、今までずっとやっていたような感じでスッと入れました。問題もなく、普通にスムーズにできました。
僕の頭の中ではメーンコーチは1人ではなく、コーチが3人というイメージですね。長光歌子コーチ、本田武史コーチ、ニコライ、そして僕。またトレーナーを含めたスタッフでいろんなことを探りながら、いい緊張感を持って、いい意味での練習ができているので問題はありません。
ジャパンオープンでフリーの演技を終え、観客の声援に笑顔で応える高橋
■五輪、見えてはいないが「行く気は満々」
ニコライは今まで以上に「歌子、どう思う?」とか「武史、どうだ?」とか聞いていました。プログラムに関しては「ここがやりにくくないのか」とか、気づいたときに気づいたことを言われ、それに対応していくという感じでした。
ジャンプについては、4回転以外は問題ないけれど、4回転は「もっと省エネで跳べ」と言われています。
今の段階でソチ五輪は全く見えてはいません。代表選考会まで行って、結果が出ないと、現実的とは言えません。ただ、行く気は満々。「行く」と言って現役を続けたので、勝手に想像しています。
「今の段階でソチ五輪は全く見えてはいません」と語る
五輪までは一歩一歩という気持ちです。それまでに、どこまで成長できるかというところが重要になってきます。08年に右膝前十字靱帯を断裂して、そのシーズンは大会に出られませんでした。そのため09~10年のバンクーバー五輪シーズンは、五輪に出られるか分からずに必死でした。
■気持ちが充実…不安も受け入れて
そのころと比べれば、今回の五輪前のシーズンは気持ちの面で充実しています。不安も受け入れて、焦りも受け入れて、という感じ。どこまでいっても不安はつきものです。焦るときは焦るし……。
でも、それを経験ととらえ、受け入れてやっていこうと思っています。そういった意味では、今までと一番違うかな。4年前と比べて、成長しているんでしょうね。
今のモチベーションは上がりすぎず、下がりすぎず、常に高い状態です。下がることはあまりないですね。練習でも今日は嫌だなと思うときもあるけれど、「まっ、やっておこうかな」と。100%を目指さないようにしています。「できないときはできない。明日できる」という感じで。
それまでは「今日できなくていつできるんだ」という感じだったけれど、「今日はできないな。明日のためにちょっとやっておこう」と思って。
■体のクオリティーがどんどん上がっている
明日のために「100」はできなくても、「20」やっておけば、プラスになる。それを継続してやって、5日たてば「100」になる。そんな感じで過ごそうと思ってから、気持ちが楽になりました。
10~11年シーズンは現役を続けるかどうか迷っていました。今はそこで現役をやめなくてよかったと思います。
試合に出れば、「このまま勝ち続けられるのだろうか」というような不安はどんどんどんどん大きくなります。でも今は、自分の体のクオリティーがどんどん上がってきていると感じます。
「自分の体のクオリティーがどんどん上がってきている」と感じている
その中でのスケートは、「こんなこともできそうだ」「あんなこともできそうだ」と自分の可能性が膨らんでいることが感じられます。
十何年やっているけれど、初めてちゃんと向き合ってやっているかなというくらい。もっと早くからやっておけばよかったかなと思います。
■昨季、4回転を跳んで自信
昨季は自信を取り戻したシーズンでした。自信があるというのは、きちんと準備ができているとき。自分がどれだけ準備したかが、自信の量につながるのかなと思います。
けがをしていたときは、4回転ジャンプが跳べませんでした。「4回転はできない」というイメージを拭い去ることは難しかったけれど、昨シーズンは成功させることができました。
「できるんだ」という事実を、自分自身で体感することができました。壁を乗り越えられるという自信がつきました。
もちろん不安はずっとあります。けれども、壁を越えやすくなりました。「できたじゃん」「できるじゃん」みたいな。臆病にならずに思い切りやってみよう、という感じでしょうか。
昨季は4回転を跳び、「壁を乗り越えられるという自信がついた」という
■男子は4回転2本が必然の時代に
男子は4回転を2本跳ぶことが必然の時代になってきました。今までの中で一番レベルが高いんじゃないですかね。4回転時代というのは過去にもありましたけれど、今は他にスピンもちゃんとしなくちゃいけないし、ステップもしなくちゃいけない。つなぎもしなくちゃいけない。
そういった中で4回転時代がまた来たというのは、クオリティー、レベルが上がってきた証拠じゃないかと思います。
4回転時代は大変です。やらなくていいのであれば、できればやりたくありません。でも僕は挑戦して面白いですし、見ている人も面白いんじゃないかなと思います。
フィギュアスケートは見ていただく競技ですから、見てくださる人が増えることは自分自身にとって一番うれしいことです。
「フィギュアスケート見てくれる人が増えることは自分にとって一番うれしい」と話す
フィギュアスケートは女子のイメージがすごい強いと思うんですけど、そこで「男子はすごいな」とか、「男子も面白い」と思っていただけるような時代になってきたのかなと思います。今は不安な気持ちも、楽しみな気持ちも両方あります。楽しみが大きければ大きいほど、不安も大きいです。
■「理想のスケート」とは…
4回転ジャンプを2本成功させるには、体のレベルを上げることが一番大切だと思います。普段の練習から4回転ジャンプ成功の確率を上げることも大事だし、あとは回数、場数とかそういうものだと思います。
「進化している」とか「円熟の味が出ている」などのお言葉をいただきますが、自分では全くそうは思っていません。いっても、まだ26歳なんで。
ソチ五輪での金メダルということには、全くとらわれていません。結果として手に入ればうれしいですし、理想もそれがよいのですが、今は漠然としたものです。たとえ五輪に行けなくても、やり切ったと思えるように、五輪までの時間を大切にやっていきたいと思います。
「理想のスケート」って言葉を使うこともあるけれど、実際には「理想ってどんなんだろう」と、分かりません。ただ、理想というものは「こういうふうになりたい」と思うと、そこで止まっちゃうのかな。「もうこれ以上できない」と思ったところまで来たら、多分それが理想なんだと思います。
「五輪までの時間を大切にやっていきたいと思う」と語る
大ちゃん、好調そうですよね。
このままの調子でいけば、ソチ五輪出場も、メダル獲得も、確率が高そうです。
また、高橋選手の素敵な滑りを、まだまだ見続ける事が出来る事が幸せな事ですよね。
男子はフリーで、4回転2本が必然の時代に、なってしまいました。
少し前までは、4回転を跳ぶ選手に勝ってほしくないと言わんばかりに、4回転ジャンパーが不利になっていました。しかし、今は跳ばないと勝てない流れに、いつの間にかなってしまいました。
チャン選手が4回転を計3度も跳び始め、それを全て成功させての高得点で、そういう流れになったのであれば、十分納得できる結果でした。
しかし、それは勝ってほしい選手、チャン選手だけが4回転で優遇され、他の選手には当てはまらないので理解できません。
4回転は、成功すれば勝つ為の強力な武器となります。
しかし、失敗しやすく、やはり、リスクのあるジャンプである事には変わりありません。また体力も奪いますから、別のミスも誘発しますからね。
チャン選手の採点優遇で、他の選手の多くが4回転の複数挑戦を始めたことにより、男子はフリーで、4回転2本が必然の時代になってしまったのです。
4回転に挑戦して、ミスをすると思った以上に順位を維持できません。その為、挑戦するならば、チャン選手以外は、相当確率を上げていかないと、勝っていけない時代となってしまいました。
バンクーバー五輪で、ライサチェク選手が4回転なしのノーミスで勝てたという理屈が、別の意味で通用しなくなりました。
しかし、4回転なしでも勝っていけない、しかしミスも出来ない、別の意味で困った状態となっている気がしますよね。
ただ今、省エネでジャンプを跳ぶようにしている高橋選手、ナイス作戦です。
スケートカナダで、ハビエル選手がフリーで4回転を3回も挑戦したのにはびっくりしました。
ケビン・レイノルズ選手もフリーで4回転を3回も挑戦したりしていましたが、成功率が悪いですからね。
ハビエル選手は、4回転を一つミスしてしまいましたが、全部成功したら、どんな得点が出るのか、またどんな流れになるのか、これもまた見ものだったりします。
男子は、厳しい条件での闘いとなりましたが、きっと大ちゃんの、凄い進化が、見られるのではないでしょうか。
ソチに行く気満々の高橋選手、絶対に行けると思います。
全ての努力は、ソチにつながると信じています。
現役の最後まで、見届けたいと思います。
ソチまで、頑張ってくださいね。(≡^∇^≡)
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