利益を捨てる戦略!?(原価ビストロ BAN!)【他社戦略】 | 経営戦略で進むべき道を照らす!迷える後継者専門、「福井県後継者軍師」谷川俊太郎のブログ

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先代後継者との間の経営方針の違い、承継した会社の舵取りに迷う、そんな迷える後継者に経営戦略で進むべき道を照らす!福井県の迷える後継者専門軍師の谷川俊太郎です。経営戦略、経営お役立ちブログを毎日更新中!公認会計士・税理士・中小企業診断士の資格も保有してます!

こんばんは!

経営戦略と戦略会計で会社を変える、FSAコンサルティング株式会社社長の谷川俊太郎です。

 

昨日、今日とある勉強会でMGのインストラクターをさせて頂きました。皆さん頭を使って、苦労をされていたようでしたが、楽しそうにゲームされていました。参加してくださった皆様、お疲れさまでした!!

 

さて水曜日です!【他社戦略】更新していきます!

 

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【記事要約(平成29年8月9日 日経MJより】


全国で居酒屋約200店を運営するKIDsホールディングス(東京・新宿)は、酒類の減価販売を掲げた飲食店を多店舗展開する。客は入場料540円を払えば、ハイボール1杯税別60円など格安の料金で飲める。酒類の収益は度外視して来店を促し、料理の注文を増やす狙い。7月に都内に1号店を開き、来年夏をめどに首都圏で30店程度まで増やす計画だ。

 

店名は「原価ビストロ BAN!」で、1号店はこのほど東京と千代田区に出店した。酒はカクテルやワインを含め約90種類を用意。入場料は客一人一人から徴収し、2時間制とする。

 

店名通り酒類は原価販売をうたい、通常の居酒屋では中ジョッキで400円程度が主流の生ビールは税別160円、ワインはグラス1杯同150円から提供する。

 

一方、料理は食材にこだわったやや高単価のメニューをそろえる。A4ランク以上の黒毛和牛を使った「和牛カルパッチョ」(同1200円)や、「子羊背肉のグリル」(同)など特に肉料理を充実させる。

 

入場料を含めた平均客単価は3300円を見込む。

(記事要約終わり)
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酒類が原価販売!ハイボールが60円というのは嬉しいですね~。私はお酒が好きなので、このような店だったら値段気にせず注文できますね!お酒で利益を出すことを捨てる代わりに料理で利益を出していく戦略なんですね。安い居酒屋というのはありますが、料理の味も値段相応という店が多いです。あまり美味しくないのに行きたいとは思えないんですよね。でもこのお店なら、おいしい料理を食べつつ、値段も抑えられる。これはうれしいです!とても行きやすいお店になりそうですね!

 

では、今回注目した点は以下のことです。


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【記事で特に注目した点】
お酒の利益を捨てることで料理が高級でも「手軽」に入れるお店にしていること
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<注目した背景>

今回これに注目した理由の理論は佐藤義典先生の、「戦略BASiCS」からです。以下、「戦略BASiCS」を簡単に説明します。

*例によって、理論が分かりにくかったら、 佐藤義典先生の理論のせいでなく、私の説明の力量不足です。
 その場合は、佐藤義典先生の著書を是非読んで下さい。

 

戦略BASiCSの解説

 

この「戦略BASiCS」は、佐藤義典先生の中核的な理論です。ですが、この理論、見た目は簡単でも、非常に奥が深いです。ですので、ここで書くのは、あくまでもさわりのところだけです。詳しく知りたい方は是非佐藤義典先生の本を読んでみて下さい。

 

「戦略BASiCS」とは、経営戦略・マーケティング理論は世の中に数多ありますが、まとめると5つのパターンに分類され、それを再構築した経営戦略理論です。そして、その5つを一貫性と具体性を持って考えることで強い経営戦略ができるという実践理論です。その5つは以下の通りです。

 

attlefield (戦場・競合)

sset (独自資源)

trength (強み)

i

ustomer (顧客)
Sellingmessage (メッセージ)

 

頭文字をとって「BASiCS(ベーシックス)」です。それぞれを簡単に説明すると、

 

 :自社が戦っている戦場・戦っている相手(競合)を明確にし

 :競合が真似できない強みをささえる資源を構築し

S :資源を強み(自社から買ってもらえる理由)にし、

 :自社の強みを選んでくれるお客様に対し

Sm :メッセージを伝えて選んでもらおう

 

とこのような考え方で構築される理論です。「お客様(C)が、競合(B)でなく、自社を選んでもらう理由を強み(S)とし、それを独自資源(A)で支え、それを伝えよう(Sm)」という言ってみれば当たり前のことです。ですが、これを自社で考えると難しいです。この理論、すべてにおいて「一貫性」を持つことが重要です。例えば、とても高品質なワンピースを作れる縫製技術(A)があるが、それを「ウチの強み(S)は『安さ』です!」といって売り出していたらどうです?『安さ』といっても、高品質なものです。ユニクロと比べて安いのでしょうか?しまむらと比べては?こう考えると、この会社は、「独自資源(A)」と「強み(S)」の一貫性がとれていないですよね。

 

一貫性を5つ全てにおいてとるというのは、非常に難しいです。この一貫性ですが、以下の「3つの差別化軸」で考えると一貫性を取りやすくなります。


※3つの差別化軸

 

佐藤先生の理論では、上記強み(S)のパターンは大別して3つしかないそうです。

 

①商品軸:(競合より)高品質・新技術

②密着軸:(競合より)個別ニーズに対応

③手軽軸:(競合より)早い、安い、便利

 

強みはこの3つのパターンしかありませんので、これを考えることで一貫性をとっていくことができます。
例えば、先ほどの縫製技術の話でしたら、他社よりも「破れにくい」という強み(S)を生み出せる技術力(A)があるなら、安くするのではなく、高くても「破れにくい服を欲しがるお客様」(C)を探す。といった感じです(具体性はないですが…)。これは①商品軸の例ですね。このように、自社が戦える(戦いたい)軸は何かを考え、それに合わせて一貫性を取った戦略を作っていけることで、BASiCSの一貫性がとれるようになります。

 

非常に難しいですが、できれば、とても強い経営戦略となります。そうしたら自信を持って、経営戦略を遂行していくだけです!是非この「戦略BASiCS」考えてみたいですね!!

 

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今回も戦略BASiCSでみていきましょう!今回は「軸」のお話。今回のお店は、通常だったら客単価5,000円以上のちょっと高い居酒屋になるでしょう。飲みに行って5,000円かかると思うと、行くのを控えてしまいそうです。お小遣いがすぐなくなってしまいそうですもんね。でも、料理は良い材料を使っていて美味しい。満足感がある。そんなお店でしょう。普通は。

 

それに対して、「酒類の原価販売」をすることによって、お客様が支払う金額を抑えています。これはありがたいですよね!ちょっと高い居酒屋戦場の中で、「手軽に」入りやすいお店になっているでしょう。すなわちこの戦場で「手軽軸」を選んでいるということが言えそうです。

 

この「手軽軸」のやり方は、「俺のイタリアン」など「俺の~」が有名ですよね。「俺の~」は良い素材、良い腕の料理人の料理を安く提供し、一般的に30%前後が平均の原価率(材料比率)を60%くらいまでかけていると言われています。全体的に安くするが、客数を増やすこと(立ち食いなどで)で利益を出す戦略です。これに対して今回の原価ビストロ BAN!は一部(酒類)の値段を下げることによって客単価を安い居酒屋並にすることで客数を増やす戦略でしょう。手軽軸ですが、やり方が違いますよね。

 

戦略BASiCSで見てみると、

 :ちょっと高い居酒屋戦場

 :

S :酒類原価販売なので、美味しい料理を食べて、飲んでも安くてうれしい

 :飲み代を抑えたいが、美味しくないお店には入りたくないお客様

Sm :素材にこだわった美味しいお料理を提供します!ですが、酒類は原価販売!

    美味しいものを食べて、飲んで、お財布にも優しいですよ!

 

こんな感じですね。独自資源があるのかが記事からは見えませんでした。独自資源がないとマネしてくるお店も出てくるかもしれませんね。そうなると争いが厳しくなるかもしれません。美味しく食べて飲んで、お財布にも優しいとなったら嬉しいですよね!

 

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【会計的な効果】

今回は一般的な安い居酒屋と会計的な効果を比較してみましょう。

※【】の中はMQ会計用語です。

 

①一般的な安い居酒屋の客一人当たり平均粗利(客単価3,300円と想定)

 客単価【P】:3,300円 × 粗利率(1-原価率)【V率】70%=平均粗利【M】2,310円

 

②原価ビストロ BAN!の客一人当たり平均粗利(酒と料理で客単価3,300円と仮定)

 ⅰ.酒類客単価【P】500円(ビール3杯と仮定)×粗利率(1-原価率)【V率】0%+500円(入場料)

   =酒類平均粗利【M】500円

 ⅱ.料理客単価【P】:2,300円 × 粗利率(1-原価率)【V率】70%=平均粗利【M】1,610円

 ⅲ. ⅰ+ⅱ=2,160円

 

比べてみるとお客様一人当たりの粗利益【M】は安い居酒屋と大きく変わらなさそうです。一人当たりの粗利益【M】は安い居酒屋のほうが7%ほど高いです。となると、原価ビストロさんは、7%安い居酒屋よりも客数【Q】を増やすことができれば、同程度の粗利益【MQ】を出せる計算になります。どちらも客数を追いかける戦略ですが、お客様目線で考えると、同じお金を払うなら料理がおいしいものを食べたいと思う人が多いでしょう。となると、今回の原価ビストロさんの方が利益が出しやすいのではないかと思います。

 

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【自分ならどうするか?】

上述しましたが、このやり方は目新しいですが、他社がマネできないという点での方策はあるのかな?と思ってしまいます。酒類の原価販売、他の居酒屋がやれば利益は下がりますが、やろうと思えばできます。なので、このやり方があたると、他社がマネしてしまって、結局業界全体の利益が出しにくくなるのではないかと懸念します。なので、私でしたら、名物料理でもいいですが、「お店にくる理由」の独自資源をこれから模索していくと思います。

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いかがでしたでしょうか?酒類の原価販売とはびっくりですが、会計的に計算すると、勝算はありそうに思います。「手軽軸」ですが、計算して利益を出すことをちゃんと考えていそうですね。安くするというのは値札の付け替えで簡単にできますが、持続するのが大変です。「手軽軸」をやろうとおもったら、しっかり勝算があるかも計算して臨みたいですね!

 

【FSAコンサルティング株式会社主催MG研修のご案内】

私、谷川俊太郎がインストラクターを務めるMG(マネジメントゲーム)を福井で下記のとおり予定しています。自社の戦略を考え、計画を考えるにあたっても受けていて損はない研修です。ゲームから経営を、会計を学んでみませんか?

 

※以下のリンクをクリックして頂くと、FSAコンサルティング株式会社のHPにリンクします。そのお問合せから研修のお申込をお願いします。

 

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