著しく低い価額の対価で財産を譲り受けた場合には、その財産の時価
(土地等、家屋等並びに上場株式である場合には通常の取引価額に相当する金
額、それ以外の財産である場合には相続税評価額をいいます)と支払った対価
の額との差額に相当する金額を、財産を譲渡した者から贈与により取得し
たものとみなされます(相法7 )。
しかし、この場合であっても、その財産を譲り受けた者が、資力を喪失
して債務を弁済することが困難であるため、その弁済に充てる目的でその
者の扶養義務者から譲り受けたものであるときは、その債務を弁済するこ
とが困難である部分の金額については、このみなし贈与の規定は適用され
ません(相法7 但書)。
なお、この財産の著しく低い価額の対価による譲渡が遺言によりなされ
た場合には、時価と対価との差額は遺贈により取得したものとみなされる
ので、贈与税の課税対象から除外され、相続税の対象となります(相基通
7 ― 1 ~ 7 ― 5 、評基通169⑵、平元3.29直評5 直資2 ―204)。
(参考)
負担付贈与又は対価を伴う取引により取得した土地等及び家屋等に係
る評価並びに相続税法第7 条及び第9 条の規定の適用について
標題のことについては、昭和39年4 月25日付直資56、直審(資)17
「財産評価基本通達」(以下「評価基本通達」という。)第2 章から第
4 章までの定めにかかわらず、下記により取り扱うこととしたから、
平成元年4 月1 日以後に取得したものの評価並びに相続税法第7 条及
び第9 条の規定の適用については、これによられたい。
〔趣旨〕
最近における土地、家屋等の不動産の通常の取引価額と相続税評価
額との開きに着目しての贈与税の税負担回避行為に対して、税負担の
公平を図るため、所要の措置を講じるものである。
記
1 土地及び土地の上に存する権利(以下「土地等」という。)並び
に家屋及びその附属設備又は構築物(以下「家屋等」という。)の
うち、負担付贈与又は個人間の対価を伴う取引により取得したもの
の価額は、当該取得時における通常の取引価額に相当する金額に
よって評価する。
ただし、贈与者又は譲渡者が取得又は新築した当該土地等又は当
該家屋等に係る取得価額が当該課税時期における通常の取引価額に
相当すると認められる場合には、当該取得価額に相当する金額に
よって評価することができる。
(注) 「取得価額」とは、当該財産の取得に要した金額並びに改良
費及び設備費の額の合計額をいい、家屋等については、当該合計金額から、
評価基本通達130((償却費の額等の計算))の定
めによって計算した当該取得の時から課税時期までの期間の償
却費の額の合計額又は減価の額を控除した金額をいう。
2 1 の対価を伴う取引による土地等又は家屋等の取得が相続税法第
7 条に規定する「著しく低い価額の対価で財産の譲渡を受けた場
合」又は相続税法第9 条に規定する「著しく低い価額の対価で利益
を受けた場合」に当たるかどうかは、個々の取引について取引の事
情、取引当事者間の関係等を総合勘案し、実質的に贈与を受けたと
認められる金額があるかどうかにより判定するのであるから留意す
る。
(注) その取引における対価の額が当該取引に係る土地等又は家屋
等の取得価額を下回る場合には、当該土地等又は家屋等の価額
が下落したことなど合理的な理由があると認められるときを除
き、「著しく低い価額の対価で財産の譲渡を受けた場合」又は
「著しく低い価額の対価で利益を受けた場合」に当たるものと
する。
もともとこの規定は平成元年の低額譲渡に対する課税(平元3.29直評5 )
において、当時の相続税評価額と一般の相続税評価額の乖離を利用した租
税回避行為に対処するために設けられたものです。
負担付贈与により財産を受贈した者が、負担した金額が贈与を受けた財
産の価額に比して著しく低い価額である場合には、みなし贈与が発動しま
す。
平成3 年ごろまでは、不動産の通常の取引価額と相続税評価額との間に
大きな乖離が見られたことから、この開きに着目して負担付贈与又は低額
譲受けの方法により贈与税を回避する方法が頻繁にあったため、所要の措
置がとられたわけです。
なお、譲渡財産が2 以上ある場合の「著しく低い価額の判定」は相続税
基本通達7 ― 1 によると一括判定することとなっています。