第16話「町内会のお仕事」 | ちょっと笑えるお話@しゅんちの極楽日記

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・・昔、近所の家の玄関に木の看板が飾られていた。


「吉村組 組長」


物々しい木の板に達筆な筆文字で「組長」書かれた看板を見て間違いなく
そっち系かと思っていた。
いつその家に黒塗りのベンツが横付けし、パリッとしたスーツ姿の屈強な男たちが整列して挨拶するシーンを目撃するかとドキドキしていたものだった。

そして子供の頃に見たその看板は

 

 

30年の時を超えて・・・


母から手渡された。


母「これからはあなた達の時代なのよ!」

しゅ「はあ?」

母「あなた達に任せるわっ」


吉村組長 しゅんち 誕生の瞬間である。


その看板は町内会の組長になった人に渡される看板であった。
組長といっても、極道の世界ではなく町内会の役割の一つである。

町内会長の下っ端となり、町内会費の集金や地域のお祭りの手伝いをするのが主な業務である。
同じ町内会にも30人ほど組長が居て、町内会での役職としては一番下っ端である。

実は父と母は昔から近所付き合いが大の苦手である。
町内会からの役員などの打診からは逃げ回り、地域の活動には最低限の参加しかせず、あらゆる町内行事も消極的で
鎖国状態を貫いていた。
そして数年ぶりに組長の番が我が家に周って来たらしいが、自分達はもう歳なのでしゅんち達に任せたいという事らしい。





町内会は60過ぎた定年後が適齢期なんだが。
 

 

 

 

しかし、この時のしゅんちにはこの事実を知る由もなかった・・・。



そして、組長となったある早朝に近所の公園の草むしりイベントがあった。
組長としては最初のお務めである。

・・朝6時。
眠い目をこすりながら子供達も引き連れ家族四人で参加することにした。
やはり立場上、積極的な姿勢を見せなくてはならないからである。数で勝負である。

しかし、6時ちょうどだというのに現場にはかなり早くから来ている
猛者たちが黙々と作業をしていたのだった。


しゅ「す、すみませーん!遅くなりました~!」



町内会の朝は早い。


公園には貫禄のあるおばちゃん達を中心に色んな人たちが集まり、なかなかの参加率だった。

居る人たちは・・・


おばちゃん4人衆(ビッグフォー)


電動草刈り機を振り回すおじいさん。


お母さんに付き合って参加した小学生2人連れの親子。


町内会の重役らしきおじさん3人。



おばさん「そっちに軍手あるから使ってちょうだい」

しゅ「は、はい」


こうして近所の老若男女達は黙々と草をむしる。



しかし・・・


明らかに6時前から来ている猛者たちがほとんどの草を一掃してあった。
しゅんちに残された仕事はピョロッと生えたカイワレ大根みたいな草のみである。
いかにも大仕事をしているかのような雰囲気を出しながら、軽くむしって終了。



しかし、ビッグフォー(おば4人衆)が作業を一向にやめる気配がない
それどころか公園の外の草むしり圏外に出て、




ドブさらいをはじめた。



荒野と化したしゅんちの担当エリアにはもはや仕事は残されていなかった。
そして苦し紛れに



土いじりをはじめた。



10分後・・・


ビッグフォーの作業に熱が入り、ドブの清掃エリアを拡大中。
あらゆる汚泥をさらい始め、みるみる側溝がきれいになっていく。

 

 

更に10分後・・・


おばA「そろそろいいかいね?」

おばB「そうだね」

おばA「えーっと 組長さんは誰?」


・・・

しゅ「あ、あ、僕でした!」


おばA「はい。じゃあ締めてちょうだい」


しゅ「え・・・あ、僕がですか?」

おばA「組長さんが締めるもんだよ?」

しゅ「あ、はい・・・では・・・」


・・・


しゅ「えー・・・皆様のおかげで公園が綺麗になりました。これで終わりにしたいと思います。」


遅れてきてカイワレむしりのみが偉そうである。


しゅ「お、お疲れ様でした!」


おばA「はい。ご苦労さん。お茶あるから持っていってね」


しゅ「はい、ありがとうございます」


タオルで汗をぬぐいながら爽やかにお茶を皆に渡すおばさん。




なんだろうかこの貫禄は。


しゅんちが組長ならこのおばさんは番長だろうか。


会長「おー!しゅんちさんご苦労さん!」


バンバンッ


公園の様子を見に来た町内会長がしゅんちの肩を叩く。
家族総出で参加した姿が効果的だったのか大きく何度もうなずいていた。

 

 

 

あれ・・・?

 

 

 

なんだろう・・・



この違和感は・・・?



何か嫌な予感を感じ始めていたのだった・・・。



そして、1年が過ぎた。
組長総会にも欠席することなく参加し、町内会費を集めたり、回覧板を配ったりと嫁タカコの活躍もあり、無事に組長をこなすことができた。
これでもう数年間は組長は免れる。我が家に数年間の平和が訪れたのだった。


しかし・・・


何となくあの時の会長の妙に親しげな雰囲気が気になっていた。


そういえば町内会費の集金をした時もやたらとニコニコしていた。

 

 

 

あの時の笑顔は悪い感じではなかった・・・

 

 

特に不備はなかったはずだ・・・

 

 

なのに・・・

 

 

何だろうかこの胸騒ぎは・・・



そしてある日・・・



ピンポーン


インターホンを見ると


玄関には町内会長、副会長など役員が
5人が勢ぞろい。


町内会長「実はしゅんちさんに頼みたいことがあって来たんだけど」


しゅ「は、はい・・・?」

 

 

 

ゴクリ・・・

 

 

 

町内会長「祭典委員長になって欲しいんだ」



マジかよ。


まさに来ちゃった招集令状。


しゅ「いやいやいや、僕そんな余裕は無くって」

町内会長「そこをなんとか!」

しゅ「ま、松本に単身赴任しちゃってるんで」

すると後ろに立っていた現祭典委員長が前に出た。


現祭典委員「大丈夫です!僕も単身赴任ですがやりましたんで」

しゅ「え、え、え、そ、そうなんですか?」

このなかなかの貫禄の年配メンバーにズラリと並ばれ頼まれたら




こ、断れない。





そして・・・




町内会重役に就任



祭典委員長 しゅんち 誕生の瞬間である。


こうして町内会重役デビューを果たしてしまうしゅんち。
一体どうなってしまうのか・・・


つづく・・・

 


いよいよ本格的に町内会デビューを果たしちゃいました
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