ゴールデンウィークが始まる前、
横浜赤レンガ倉庫で行われた
「線のゆくえpartⅡ」展
に初めてお邪魔してきました。
こちらの展覧会に行くきっかけになったのは、「奎星会」という団体に連絡した際、
広報担当の先生とお知り合いになったのがきっかけでして。
「面白い展示になってると思いますよ」とのお言葉通り、行ってみると、展示作品は私の想像を遥かに超えたバラエティー豊かな作品がズラリ!
この展覧会は、普段は区別されがちな
「前衛書」
と
「かな書」
を一緒に展示してみよう!というかなり実験的な企画だそうです。
確かに・・・
私は今までずっと伝統書の中にいたので、伝統書の中では、「かな書」の横には必ず「漢詩の漢字作品」が並んでいる展覧会しか見たことがありませんでした。
ですが今回こちらでは、「かな書」の横には、現代アートばりの「前衛書」が並んでいるではありませんか!!
私が初めて前衛書を見たのは約10年ほど前。
その展覧会では確か大賞をとった前衛書作品でしたが、文字はなく(正確には書かれていたのですが、その上に更に墨で塗りつぶされていたのでよくよく近づいて見ないと見えない状態)、淡い墨と濃い墨の「墨象(ぼくしょう)」という部類の壁面いっぱい使った超巨大作品でした。
「うお〜〜〜」とかなり目を見張る作品で、私は上京してまだ日が浅かった事もあり、「これが中央(東京)の展覧会か・・・」と、田舎娘丸出しのような感想しか出てこなかったのですが。笑
その横にいた審査員の先生の一人が、
「これは書じゃないわよ」
とサラッと一言。
それを聞いた私は「えええっっっ!?!?」という驚きと共に、「これが書じゃないならなんで大賞なんだ・・・」と、至極真っ当な反応しか出来ませんでした。
それからと言うもの、「前衛書は(多分)分かりにくい(理解されにくい)」と言うイメージが出来上がり、伝統書の勉強に勤しんでいたワケです。そんな私がコロナ禍を経て、理解されにくいと思っていた前衛書に辿り着いたわけなんですが(^◇^;)
さてこの展覧会のシンポジウムにも参加しまして、作家の皆様の作品作りの様子などをお聞きする事が出来ました。
最後列で見えにくい
「かな書」と言えば、万葉集や古今和歌集などが有名でしょうか。
この「かな書」も、平安時代にはその当時の「前衛書」だったんですよね。
中国から漢字が渡来し、それを日本語に当てはめていって「ひらがな」が出来ました。
その「ひらがな」を使って、行頭をズラしたり余白を目一杯使って見たりと、「空間」を美しく見せるため試行錯誤し生まれたのが「かな書」です。
そんな「1,000年以上前の前衛書」と、
「現代の前衛書」が対峙する。
当時の前衛書が、今や伝統書になり、そして現在の前衛書はもはや墨象をも超えた世界が広がっている。
美しい日本語の隣には、(目で)読むことの出来ない世界が広がる。
毎日書道展という、かなり大規模な前衛書寄りの展覧会が毎年国立新美術館で開催され、
たまーに見にいってはいたものの、
これほどまで「前衛的」な展覧会は初めてでした。
10年前に見た墨象作品が霞んで見えてしまう・・・
そして新たな疑問も湧き上がってきます。
■文字や文房四宝(筆・紙・墨・硯)から離れた作品も「書」にカテゴライズされるのか?
■およそ現代アートの様な作品は、なぜ「書」となるのか。それは書家が作るから「書」なのか?
「書の文脈」の中で結果的にそのような作品が出来上がったのか?
シンポジウムでは、最後に「書の未来」についても議論されていました。
正直、誰もわからないとは思うものの、希望的観測はしたいですよね。(私もそう)
伝統書は、その生き残りを「教育」の中に見出し、現在の地位が存続していると思います。
前衛書は、そんな伝統から抜け出て、「西洋の抽象絵画」と出逢った事により花開き、現在の姿があると思います。
かな書は、「教育」の中に若干の居場所を確保するも、その存在感は特別な様に感じます。
それぞれの部門がそれぞれの道を歩み、ようやく「日本書道」が2021年にユネスコの無形文化遺産登録となりました。
中国書法やモンゴル書道に遅れをとったのは、きっとこうしたバラエティー豊かな面をユネスコ側がどう評価すればいいのか、時間がかかったのではないでしょうか。(日本政府が力を入れてない説もあるけど)
日本書道は日本でなければ成立しない芸術ですが、その全容はかなりバラエティーに富んでいました!
この展覧会では、日本書道の懐の深さを垣間見たような気がします。
こちらが今回ご紹介下さった北海道在住の書家
八重柏冬雷先生の作品。
間近でじっくりと見たくなる作品です♪
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