2024/01/08
引き籠もり
僕はこの老人施設で、
引き籠もりの
正体不明の男である。
そうゆうことになっている。
確かにそう言われるとうりで、
僕はこの4人部屋に1人陣取り、
食事と、
トイレ以外、
ほぼ部屋を出る事はない。
たまに喉の調子が悪く、
支給されているお茶を飲み干してしまって、
ジュースを買う為にロビーに現れる事があるが。
たまにアマゾンから購入している
野菜ジュースが切れて、
仏様のお供え物が無くなり、
自動販売機のあるロビーに現れる事があるが。
たまに認知症で入院している母が、
夜、廊下を徘徊して転び、
その事を僕に知らせる為に、
施設の公衆電話に僕を呼び出す事があるが。
それ以外は引き籠もる。
皆が僕の事を忘れ、
たまに僕の事を思い出せばそれでいい。
或いは、
あの人はどうしてるんだろうね?
と口の端を撫ぜるくらいでいい。
或いは、
忘れてくれてもいい。
忘れて貰えるものならば。
昔から引き籠もりが好きだった。
高校の時、
アネサフランクリンを聞きながら、
父が学生から没収したポルノに欲情し、
部屋で素ッ裸になり、
ウオークマンのヴォリュームを、
最大に上げて手淫をし、
父に摘発された。
その日から、引き籠もりを標榜した。
学生時代、初めて下宿をして、
アパートに一人暮らしをして、
VHSのビデオを何本も、
二泊三日で借りて引き籠もり、
誰も訪ねて来る人の無い時間を、
射精をして過ごした。
匿名の隣人が彼女をオートバイで迎えに行き、
夜毎日毎、声を潜めて情事に耽る中、
僕は隣室に籠り、
豊田薫のエロスに感動し、
部屋をティッシュと陰毛だらけにした。
最初の家内がHIVの陽性だと知った後は、
新築の家に部屋を増築し、
中華街で買いだめたポルノを鑑賞し、
一度の射精に1時間以上かけた。
会社の会議で大阪に行き、
出張の空き時間の平日に、
梅田の本社が見えるサンルートの部屋で、
1000円のポルノカードを鑑賞しながら、
引き籠もり、射精した。
次の家内に不明の愛想をつかされ、
彼女が毎夜新しく古い旦那のところに帰る様になり、
僕は悔しさのあまり彼女の下着に射精した。
愛人の藻には、
人生が切羽詰まっている事を伝え、
彼女の前で男泣きに泣き、
最後の射精をリクエストした。
もう死ぬる事を覚悟したが、
死ねずにまた何度も、
射精をリクエストした。
引き籠もり射精をする
横に女性が居ようとも居なくとも、
僕の幸せの原点は変わらなかった。
ただ一点最後の射精については…
ただ一点最後の女性への射精については、
引き篭もりとは行かなかった。
某国の7000万の国民の前で、
不敬罪の罪と罰だと知らされ、
衆人環視の中で射精した。
こんな状況でも射精する自分に関心した。
その後、
おは打ち枯らして日本に帰り、
ますます引き籠もりとなり、
ますますプライバシーの無い部屋で手淫に耽り、
ある時、脳出血で倒れた。
嗚呼、
こんな見っともない人生もあるのか?
このまま死んでしまうのか?
と母に2週間放置され思った。
でも、この時仏様に拝んでいた為、
僕は仏様に救われた。
そして今、
僕は毎日、
聖天様と、
観音様と、
般若心経を唱え、
何故生かされたのかを問うている。
施設の人は僕を引き籠もりと呼ぶ。
皆が僕の事を忘れ、
たまに僕の事を思い出せばそれでいい。
或いは、
あの人はどうしてるんだろうね?
と口の端を撫ぜるくらいでいい。
或いは、
忘れてくれてもいい。
忘れて貰えるものならば…
合掌
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