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「島になったおばあさん」(初回放送1978年8月19日)
語り(常田富士男)
おばあさん・トンクル(市原悦子)
エカシ・カムイヌプリ(常田富士男)
北海道の昔ばなしです。
https://youtu.be/20K6P1La59E?si=qlt5Js4_V2uGz8ZH
昔、アイヌでは人々は「コタン」と呼ばれる集団を作って暮らしておった。
毎日、森や山を駆け巡り、獲物を取っては日々の暮らしを成り立てておった。
「おっとう!おかえり!」
「おお…トンクル!」
「ハハハ!」
ところが、ある時を境にして、どういう訳か、獲物の数が急に減ってしまった。
それでコタン同士、獲物を巡って争う事が多くなった。
ある日の事…1頭の獲物を巡って、とうとう戦が始まってしまった。
人々は、この戦はすぐに止むと思っておったが、戦はなかなか終わらなかった。
春から夏、夏から秋にかけて、戦はますます激しくなった。
思い余った一方の酋長エカシは、敵のコタンへ話し合いに出かけようと思っておった。
そんな矢先…
「やあーーーっ!」
外が、やけに騒々しい。
エカシは、咄嗟に武器を取った。
戦だと気づいたエカシの母は、そっと声をかけた。
「エカシ…気をつけてな…」
「心配せんでもええ」
「ああ…」
そして、エカシは仲間たちを呼び集めた。
「敵が来たぞ!みんな武器を取れーーっ!」
「おーーう!」
コタンは、あっという間に戦場になった。
暫くして、エカシが戻ってきた。
ところが…
「おばばーーっ!早くトンクルを連れて逃げろーーっ!おばば…」
戻ってきたエカシの背には、いくつもの矢が刺さっていた。
エカシは、その場に倒れ込んでしまった。
「エカシ!しっかりせい!エカシ…」
「おばば…トンクルを……トンクルを頼んだぞ…」
「エカシ…」
おばあさんは、エカシの事が心配でたまらなかったが…
言われた通り、孫のトンクルを連れて、コタンから逃げ出した。
2人は走りに走った。
走りながら、トンクルはおばあさんに聞いた。
「ねえ、おっとうは?おっとうは死んじゃったの?」
「しっ…静かにせんと、敵に見つかる…」
トンクルは、思わず後ろを振り向いた。
「ああ…燃えてる……おっとうは?おばば…」
おばあさんは、トンクルの手を引いて、燃え盛るコタンから離れていった。
やがて、山の中に入った。
すると、遠くから敵の勝鬨が…
「敵の酋長、エカシの首を取ったぞーー!あと、おばばと息子のトンクルがいるはずだ!2人とも探し出せーーっ!」
おばあさんは、思わずその場に座り込んでしまった。
「おばば…?どうしたの…おばば?」
「おお…可哀想なトンクル…」
おばあさんは、トンクルを抱きしめて泣いた。
おばあさんはこっくりと頷くと、再び立ち上がって、トンクルに言った。
「さあ…おばばは、もう泣かないよ。これからトンクルのために、うんと長生きしなくちゃ…」
そしてまた、トンクルを連れて歩き始めた。
「これから、どこへ行くの?」
トンクルは、暫くは不安そうについて来ていたが…
急におばあさんの手を振り切って踵を返すと、元来た道を駆け出した。
「これトンクル!」
「おっとうの仇を取ってくる!」
おばあさんは、必死で止めた。
「ダメだよトンクル!今行ったら、殺されてしまうよ!」
トンクルは一旦立ち止まって、振り向いた。
「オラ、おっとうの仇を取ってくるんだ!」
そして再び駆け出していってしまった。
「トンクル…ダメだよ!行ったら…殺されてしまう…」
おばあさんは、慌ててあとを追いかけようとしたが、疲れて、その場に倒れ込んでしまった。
それから、どのぐらい時間が経ったか…
おばあさんが気がついた時には、空には月が昇っていた。
おばあさんは、よろよろと立ち上がると、トンクルの跡を追った。
どうか無事でいて欲しい…
それだけを祈りながら、トンクルの行ったコタンの方へ向かって、歩いていった。
しかし、そこにトンクルの姿は見えなかった。
おばあさんは、身も心もくたくたになってしまい、その場に座り込んだ。
おばあさんには、もう泣く力もなかった。
そして、次の日の朝…
「お〜〜い!トンクル〜〜!トンクル〜〜!」
おばあさんは、摩周湖のそばに辿り着いた。
すると、山の神「カムイヌプリ」が姿を現した。
「おばば〜〜!」
「知らぬ…でも何故、そのように疲れた様子をしておるのか?」
おばあさんは、一部始終を語って聞かせた。
するとカムイヌプリは、目に涙をいっぱい浮かべて、こう言うた。
「おばば…人は何故そのように殺し合うか、お前は分かるか?」
おばあさんは、静かに首を横に振った。
「そうか…お前にも分からぬか…」
「私はもう…疲れてしまいました…」
するとカムイヌプリは、おばあさんの前に手を差し伸べて言った。
「そこは寒い…この手の上で休んでゆくがいい」
「おお…勿体ない事…」
「遠慮せずとも、ゆっくり休んでゆくがいい…」
おばあさんは、カムイヌプリの大きな手の中で休んでいると、嘘のように心が安らぐのを覚えた。
そして、トンクルの事をいろいろ思い巡らしながら…
つくづく、争い合う人間の世界が嫌になった。
そして、思わず呟いた。
「島になりたい…」
そして、カムイヌプリにお願いした。
「神様、どうか私を島にしてください。そしてどうかいつまでも、この湖に置いてください。私は島になって、トンクルを待ちます。お願いします、神様…」
「おばば…」
おばあさんは、こうして摩周湖の中の、ほんの小さな島になった。
そして、人がこの湖に訪れると…
おばあさんは、トンクルが来たと思って、嬉し泣きに泣くという。
それで摩周湖では、どんな晴れた日でも、行くと必ず雨が降り、また雪が降るという。
おしまい。
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今回の話の舞台となった摩周湖
画像は拝借した。
その手前の小さな島が、おばあさんの島「カムイシュ島」との事です
ちなみに北海道へは修学旅行で行った事あるけど、摩周湖には行ってないんよね屈斜路湖は行ったけどね😅
いつか行く事があったら、この昔ばなしに思いを馳せて、カムイシュ島を見てみたいな
今もまだ世界で戦争が起きている現実…決してこの話は、昔ばなしではないんやなと改めて思わされるような、今日のお話でした
ところで余談ですが、この話の冒頭で鳴っている不思議な音
まるでバネが弾けるようなビョンビョンゆー、あの音の正体は
画像拝借した。
こんな、アイヌの民族楽器で
画像は拝借した。
こーやって演奏するそうです
https://youtu.be/ewdQk0sCK88?si=BR6iESjSmLOo_B1Q
まるで、カエルがジャンプする時の効果音みたいな、おもしろい音やよね
鳴らし方で、雨や風、動物の鳴き声などを表現するそうです
実家父が昔、何故か京都の民族楽器のお店で見つけて、買って帰ってきた事がありますまだあるんちゃうかな😚
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スルーしてちょ
次回は
大切なものを守るためには…なんて説明したらええんやろ
以上、本日ここまでどす🙇♂️
訪問がアホほど遅れております…毎度ゴメンやす
では〜〜明日もご安全に〜〜
おーきにです〜〜ほなね〜〜