今日の昔ばなしは
生き直すって、こーゆー事かも
ほんじゃ〜〜
「またたび」(初回放送1982年1月16日)
語り(市原悦子)
百姓の男(常田富士男)
百姓の女房・隣の爺さん・おっかあ(市原悦子)
長野県の昔ばなしです。
https://youtu.be/SFUKsEemxcw?si=j2FLoyreK4YRaZq7
「昔の事だ…あるところに、どうしようもねえ男がおってよ。お袋と2人暮らしだというのに…」
「おまけに、そのお袋が病気で1人で苦しんでいるというのに…そいつは、博打を打っていやがった」
「ちくしょう…」
「帰るんか?」
「お袋が病気だ」
「金がねえなら、貸してやってもいいぜ?」
「今日は帰る」
「金は貸してやるって言ってんのによう…」
「付き合えよ」
「ちえっ…付き合いの悪い男だぜ」
ザァーーー…
「300…貸してくれ」
「そうこなくちゃ…へへへ」
「さあさあ…張った張った」
「その、どうしようもねえ男が借りた金もスッテンテンになって、お袋の元へ戻ってきたのは、もう夜明け頃じゃった」
「バカモノ!通りかかったら、うなり声がするで覗いてみたら、おっかあがたった1人で、もがいてるでねえか!」
「おっかあ…しっかりせい!おっかあ!」
「で、そのおっかさんの具合は、どうじゃったの?」
「腹が膨らむ病気でな、もう虫の息じゃった」
「医者は?」
「その辺りには、おらん」
「薬は?」
「金は1文もねえ…そんな時、世話を焼いてくれた隣の爺さんが…」
「またたびの水じゃ!」
「またたびの水?」
「うん。この病には、またたびの水を飲ますがええと聞いた事がある」
ダーーッ!
「今日の…夕方がヤマじゃぞ!」
「男は、走りに走った」
「ところが、ない…またたびの蔓なんぞ、山へ行きゃどこにだって這いずっているというのに、その日に限ってちっとも見当たらねえ」
「おっかあ……うわあっ⁉︎」
ドサッ!
「う……ん?」
「とうとう見つけた…カモシカ岩の下だ。風が吹いてきて、またたびの蔓が白くザワザワ揺れているのが見えた」
「カモシカ岩…?そりゃ随分、山奥まで行ったなあ…」
「あっ…痛ァ…」
「急いで蔓を切って、瓢(ふくべ)の口へ突っ込んだ。もう日は、西へ傾いてしまっている。ところが、いつもはドクンドクンと出る水が、その時はちっとも出ねえ」
「日は、山へ隠れようとしている。暗くなったら、走って戻る事もできねえ。その時、男は生まれて初めて祈った」
「神様ぁ…!」
「男は、そう叫んだ。涙を垂らした。足摺りをした。水を吐かねえまたたびの蔓を掴んで、やみくもに振りたくった」
「おっかあ…!」
「山犬が、あちこちで鳴き出した。そんな時だ。声が聞こえてきたのは…あっちの山、こっちの谷にぶつかりながら、その声はだんだんはっきり聞こえてきた」
「なんて…その声は、なんて言うた?」
「もうええよ…」
「もうええよ。倅(せがれ)や…もうええよ。もうええよ…」
「おっかあ…どうした⁉︎」
「それは、お袋の呼ぶ声じゃった。それを聞くと、男はもう居ても立ってもおられんようになって、瓢を引っ掴んで夜の闇の中、突っ走った」
「岩や木の根に何度つっ転んだか分かんねえが、もうそんな事たァどうでもよかった」
「おっかあ!おっかあ!」
「お袋は、死んでおった。男が、山でこだまを聞いたちょうどその頃に、息を引き取ったという事じゃった」
「あ…ああ…」
「と、どうした事か…瓢の中から、またたびの水が噴き出した。何もかも、間に合わねえ…話だ」
「またたびの水は、日が暮れてから出が良くなるそうじゃ」
「いいや…間に合ったものが1つあっただよ。その人の親思いの心じゃ。もうええよ…そう言うたおっかさんは、満足して目ぇ瞑っただよ」
「そう…じゃろうか?」
「そうとも…間違いないだよ。そんな事があってから、その人は博打も酒も一切やめたでねえか?」
「……」
「そして、女房子どものために、汗水流して働いている」
「…ああ……」
昔…長野県の塩尻での話じゃった。
おしまい。
って…オイオイちょっと待てい
それやのに、市原さん…全然語ってないやん
語ってるの、全部物語の中の亭主やん
市原さん…完全にその亭主に丸投げやん
いやその…市原さんの語り、ない訳ちゃうけど😅
最後の「昔…長野県の塩尻での話じゃった」だけやし🤣
まあええわ…つまりこの話は、亭主が自分の若い頃の昔ばなしを女房に語り聞かせるというスタイルで展開されていた訳ですな
けど、なんで今になって話す気になったんやろね
また女房は、初めからその話がかつての亭主の事やと知っていて、ただ黙って聞いていたようですね
病気の母親を放ったらかしにして賭博に明け暮れて、いざ母親が危篤状態になって初めてどないかしようと動き出して
けど結局間に合わんかった…なんちゅー救いようのない話や
と思っていました…見ていた小学生当初は
けど、大人になって改めて見直すと、最後の最後に女房の一言で亭主は救われていたのですね
一瞬女房が神様に見えたよ🥹
昔は何とも思わなかった話でしたが、今ならこの話の良さが分かる気がするな〜〜
マタタビの水は間に合わなんだけど、母親を助けたいと思う気持ちがあったからこそ、若者はその後すっかり改心して真っ当に生きる事ができたんやろな
ええお嫁さんも見つかって
ある意味、人生やり直しがきくという事を教えてくれる話のようにも思えます
そもそもあの母親の病気って、何やったんやろ
腹膜炎とか腎炎とか🤔?
それより、マタタビの蔓から水が取れるんやな
まあ、そんな細かいところはええか
←あんまりイケズ言わんとこ😚
実は私はまだ、マタタビというものを実際に見た事がないんよね
腹水…どこにも書いてない
しかも、その成分がとれるのは蔓から出る水じゃなくて、蕾に寄生した「虫えい」というものが利用されるらしい
まあ時代もありますしね…その使い方も用途によって変わってくるんかな
ところで、今回の話に出てくる「カモシカ岩」が実際にあるのかどうかは、分かりませんでした
この昔ばなしは、長野県塩尻市に伝わる民話を元に作られたそうですが、その元の民話を編集した人たちが既に全員他界されているらしく、地元の人たちもその真相は分からないそうです
もしかすると架空の場所なのか、あるいは実際にあっても正式名称ではないのカモ
シカですね
←って何ゆーてんねん😁
訪問がボケるほど遅れております…毎度ゴメンやす
では〜〜明日もご安全に〜〜