UFCの集団訴訟について (4) | SLEEPTALKER - シュウの寝言
(Photo by MMAMania.com)
 
 
今後の展開は?
 
まずUFCは、クラスアクションになったことに対して第九巡回区控訴裁判所(United States Court of Appeals for the Ninth Circuit)に控訴すると明言しています。
この第九巡回区控訴裁判所がUFC側の控訴を承認したら、またここから数年かかって、最終的にクラスアクションと認定されないということも、または数年審議した後に、やはりクラスアクションだと認定されることもありえます。
もしも第九巡回区控訴裁判所がUFC側の控訴を承認しなかったら、このケースは次の段階に進みます。
 
それはUFC側が求めている「Motion to Summary Judgment / 略式判決の動議」です。
 
この略式判決の動議とは、これはアメリカの裁判制度において正規の事実審理(以下「トライアル 」)を省略して至る判決を求める動議なんですけど、要は、審理していると時間と金もかかるから、これを省略するために決定的な証拠を入手した当事者の求めによりトライアルを省略しようぜ、ということなんですね。
ということは、簡単に説明しちゃうと、審理の段階までいって陪審員の手に委ねるのではなく、UFCが決定的な証拠を出すからもう裁判所ですぐに判断できるでしょ?ということなんですけど、大方の専門家の予想だと、これが認められ判決が出ることはまずないだろうとのこと。
 
ということは、もしも第九巡回区控訴裁判所がUFCの控訴を却下したら、ついに裁判所での審理に突入する可能性が限りなく高いという訳なんですけど、この時点まできたら、どこの国の人でも、被告側は、つまりこの場合はUFCですけど、まず最悪のケースを想定すると思うんです。
もしも裁判まで突入し、審理が行われ陪審員たちが原告側の言い分を全面的に認めたら、一体いくら選手たちに払わないといけない羽目になるのか!?
 
アメリカにおける独占禁止法のクラスアクションの判例を見てみると、もしも裁判で被告側が敗訴した場合、原告側に支払われる賠償金は、大体「X3」で定められることが多いので、今回の訴訟に負けると、下手したらUFCは2700から5600億円もの大金を選手たちに払わないといけなくなる可能性があると考えられます。
 
そんなことになったら、IPOを果たしたばかりのUFCの親会社Endeavorにとっては、それこそ社長の首がスゲ変えられてもおかしくない一大事になると思うんで、アメリカのメディアの報道を見るところによると、専門家たちの予測は、もう裁判しかないとなったら100%に近い確率でUFCの弁護士チームは、方針を示談に切り替えることをUFCに勧め、それをUFCは受け入れ、示談の交渉に入るはず、とのこと。
 
さて、もしもそうなったら、いくらぐらいの額で示談が成立するのだろうか?
こればかりは、過去のクラスアクションの例を見て予測するしか他に術はないんですけど、大体、アメリカのクラスアクションの場合は、原告側の求める額の20%ぐらいで収まることが多いそうなんです。
ということは、上記の額を見ていただければお分かりになると思いますが、もしも示談になったら、20%でも、かなりの金額が1214人の選手の元に入るということになります。
 
さて、今回の訴訟の大きなポイントは、このお金だけではないんです。
 
原告側が裁判所に求めているのは、UFCが同じような「スキーム」をできないために、プロMMAの世界の契約書に一定のルールを設けてほしいということなんです。
MMAの世界には組合が存在しないんで、裁判所で決めてくれ、ということなんですね。
 
原告側が求めているのは、契約は1年から長くても2年。
そしてチャンピオン規定はなし。あとは、怪我だろうが何の理由だろうが試合を断っても契約期間の延長はなし。
 
これがもしも認められたら、この業界は大きく変わると思うんです。
ということは、この訴訟の原告側に自動的になったクラス構成員以外の全ての世界中のプロMMAファイターにとって、この訴訟はとても重要だと、私は思っているんです。
 
なぜ、そこまで業界全体の流れが大きく変わることもあり得るのか?については、来週あたり、ここで、詳しく書きたいと思います。
 
 
参考文献:
 
 
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