人口に膾炙した与謝野晶子の歌。
その子二十(はたち) 櫛(くし)にながるる黒髪のおごりの春のうつくしきかな
ボクの学生時代なら、誰でも知っていたポール・ニザン「アデン・アラビア」の冒頭の一節。
ぼくは二十歳だった。それがひとの一生でいちばん美しい年齢だなどとだれにも言わせまい。
みなさんの二十歳時代はいかがでしたか。
ボクは知り合いのヨットに載せてもらって夜の海にいた。
月がこうこうと輝き、海に写ってその姿をさらしていた。
美しい~感動のあまり、ボクはその月が欲しくてたまらなくなった。
素っ裸になって海へ飛び込み、月を目指して泳いだが、目の前の月にどうしても近づけない。
そのうち息が上がって、ああ~李白もこうして溺れ死んだのか~と思ったら、自己愛が体中を満たして幸福な気持ちになった。
夜の海で泳ぐのも、ふるちんで泳ぐのも初めての経験だ。
二十歳のふるちん姿は美しい。
ブロ友の女性たちが心待ちしているに違いない。ぜひとも写真に撮ってブログに載せなきゃあ~と思ったので溺れ死ぬを止めにした。
村上春樹は「風の歌を聴け」の中で「僕は21歳になる。まだ充分に若くはあるが、以前ほど若くはない」と書いた。
さらに「もちろん後日談はある。僕は29歳になり、鼠は30歳になった。ちょっとした歳だ。」と。
ボクはと言えば、古いシャンソンを歌っていた。
On n'a pas tous les jours vingt ans.
毎日が二十歳というわけじゃない。つまり、いつまでも若くはないのさ。という意味です。
なんでこんな話をしたのかというと、江ノ電の中で若い女性に席を譲られたからだ。
ってことはもう、彼女のような若い女性を口説けなくなったということだ。
惨(みじ)めだ。
あまりに惨めだ。
惨めすぎる。
体の表面を覆っている歳を、薄皮をはぐように1枚づつ剥いで行けたらどんなにかいいだろうと思ったのだ。
試しに剃刀でちょっと削ってみた。
ぺろんと一番古い皮がむける。
こりゃあいい。
二十歳になるまで削っていって成功したら、特許を取って大金持ちになろう。
ついつい夢中になりすぎた。
気が付いたら削りすぎて中身が残ってないのだ。
そんなわけで天国へ行ったら、神様に怒られた。
剃刀(「かみ」そり)ってのは「神」様御用達しなんだぞ。無断で使いおってからに~。
「お前のようなバカは出ていけ~」
「『そり」ゃないよ」と抗議したけども判決が下りたので「橇」に乗って帰って来た。
我が家はやっぱり良い。
今日は我が家の桜です。
爽やかな話をしたので暑苦しい音楽を聴きましょう。
67年の Stax/Volt 欧州ツアーからです。