7月はメンバーの事情を考慮しての夏休みを頂きました。
ご報告もせず大変失礼致しました。
8月のタキタキオンラインは無事に開催。
題材は林明子さんと、筒井頼子さん共作のこちら↓
日曜日の朝ピクニックに行くまでのお話を描いたものです。
選書したのは鹿作家めぐさん。
素材販売もしているので宜しくね(ということでリンクは素材集へ)
選書の理由は林明子先生の時代ごとの画風の違いを比べてみたいと思ったこと。
この絵本になったのは、子育て真っ最中のため、“子育てあるある”の詰まったこの作品を読み解いてみたいと思ったから。
以前にも林先生の作品を深読みで取り上げております。
「子供の描き方が上手い。表情などすべてに仕掛けがある」
というお話が当時なされていたみたいですね。
やはり今回も注目されたのは小物などの精度の高さ。
「本物を見ないと描けない」タイプの作家さんなのだそうで、絵本に出てくるものは全て実在しているもののようです。
ぬいぐるみを手づくりしたり、子どもの姿は甥っ子や姪っ子たちにモデルを頼んだり、写真を貰ったりして作品作りされていたそうです。
ご自身はお子さんがいらっしゃらず、元々は子供に苦手意識があったそうですが、兄弟の子供たちと接する中で、だんだん子供の仕草や存在の魅力に気づいていったようです。
子供の頃に洋画教室で学んだものの、展覧会に出す作品は佳作どまり。自分には才能がないと落ち込んでいた様子です。
イラストレーターとして事務所で働きだし、童話の仕事などをクライアントさんから頂くようになって、はじめは科学絵本から作家人生をスタートされたのだとか。
同僚には五味太郎さんが存在しており、絵本の仕事は五味さんのほうが先に始めたらしいです。
なんか贅沢な環境ですね……。
ご本人曰く「人とのご縁を重ねて今がある」とのこと。
「絵本さまさま」ということで、絵本への愛情は人一倍みたいです。
しかし、描き方がとてつもなく繊細なため、一作一作にかかる重圧が凄くて、産みの辛さを常に伴い、ずっと描くことは大変だとおっしゃっていたようです。
「下書きも下手で辛い……」と言いながらの制作。
五味さんとは対照的ですね。
五味さんは「俺、見て描いたりしないもん。ものなんか見たことない」
なんて発言もしてますからね(笑)
隣にそんな人が居たら、なかなかお互いに、しんどいのでは(笑)
さて、作品に戻りましょう。
絵本自体はエピソード絵本という感じで、いくつかの本当にありそうなシーンで構成されています。
ピクニック用に準備していた鞄から、はみ出ていた紐を引っ張ってしまい、中身を全部ぶちまけるアヤコちゃん。
気づいたお父さんが
「おやおや、いいから着替えておいで」と優しく促します。
とにかく家を出るまでにアヤコがやらかしまくる。
しかし両親はそのことを叱りもしないで、全てそのまま受け入れて準備を着々と進めていく。
私の感想は「いや、しんどい。これはしんどい。子供欲しくなくなる」という正直なもの(笑)
「行くまでにこれで、行ってからもこれで、帰ってくるまでもこれだもんねえ……つらーーーーーー」
想像しただけで疲れます。
子供時代に読んでたら何を思ったんだろうなあ?
私の問にメンバーが放った一言
「私ならこんな優しい両親、めっちゃいいなあ!!って憧れちゃう」
なるほど。
「子供の世界の夢の話なのかもしれないね」と私。
現実にアヤコちゃんが居たら、必ずどこかで母親、切れます(笑)
「子供に怒らなくても、代わりにお父さんにイライラしちゃうよねえコレ」
子どものやったことの回収、作中では、ほとんどお母さんがやってますからね。今の時代なら、こうは描かないかな?
出てくる小道具には全て「昭和」を感じました。
1980年に出版されているので、丁度私たちの子供時代とリンクしていて読み取りやすかったです。
発表者めぐさんは子供の姿に共感を抱いたとのこと。
「ここに描かれてる子供が礼儀正しい子だったら、かえって辛いと感じるかも」との感想。
この時代の子育てを終えているメンバーからは、
「子育て真っ最中に読んだらちょっと辛かったかも。もうその時代は過ぎてるから、懐かしく、愛おしく読める」
といったお話もありました。
私が「この絵柄って今の絵っぽいよねえ。古くない」と発言すると、「今って写実的なのがまた流行り出してるから、わかる!」と絵画教室を運営されているsonoco先生から太鼓判を頂きました。
英語バージョンを見てみると、出てくる小物は日本のものなのですが、そのまま海外の絵本みたいに見えました。
画風が洗練されているためだと思われます。
45歳ごろ、絶頂期を迎えてから、徐々に絵本つくりが少なくなっていき、しばらく仕事を中止されていたようです。
「生きていない気がして苦しい」からとのこと。
その時代にはご結婚もされていて、童話作家の旦那様と、締め切りの無い、豊かで良い暮らしを続けていたようです。
最後に出版された絵本作品は亡き旦那様が残されたお話に絵を付けた「ひよこさん」
11年ぶりの商業出版となっていますが、とても美しい絵で構成されています。
これからも旦那様の残された文章などに、個人的に絵を描いたりしながら、余生を充実されていくとのことです。
カッコイイですね。
創作に追われ、周りの者に気遣う人間的余裕すら無くしてしまう時間、その経験は私にもあります。
メンタルとの闘いなんだよなあ……作家業。
ということで長くなりましたが、このぐらいで締めさせていただきます。
ありがとうございました。