奥村昭博氏著の『企業イノベーションへの挑戦』という書籍を紹介する。 奥村昭博氏著の『企業イノベ | 松陰のブログ

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奥村昭博氏著の『企業イノベーションへの挑戦』という書籍を紹介する。

奥村昭博氏著の『企業イノベーションへの挑戦』という書籍でのキーコンセプトは「創造的組織」です。創造性を発揮し、イノベーションを起こす企業が成長を達成できるのです。

イノベーションこそが、物的資源もなく、国土も狭い、しかも良質で豊富な人間という資源しかもたない日本の生き残り戦略です(19頁参照)。イノベーションは、国家・産業・企業のいずれにとっても最大の戦略要因となります(20頁参照)。日本の企業がイノベーションを企業戦略の中核に据えれば据えるほど、次の三つの点に多大な配慮を払わなくてはならなくなります。まず第一が、いかに数少ない「天才」を組織の中でその能力を発揮させるかです。第二には、その天才とともに活動する一般の人々を、いかにイノベーションに向けた活動へと組織化するかであり、第三には、こうした人々にどのようにモラールを与えつづけ、情熱を引き出すかです。日本企業のイノベーション戦略の成否は、この三つの点のマネジメントいかんであると言えます(22頁参照)。

「企業イノベーション」とは、企業経営の中に革新を起こすことで、企業がその革新の過程から様々な学習を行い、次第にイノベーションが遂行できる企業となってゆく過程を示しています。つまり、「革新は革新を呼ぶ」という現象を言います。カンター氏はこれを「イノベーション創出のための革新」と称していました。企業イノベーションの特徴は、企業のもつ認識マップを書き変えることにあります。認識マップとは、その企業の成員が共有している世界観、価値、意味のことで、これを革新行動によって視点転換させるのです。この視点転換が起こって始めて企業の相転移が可能となるのです。第二には、革新の連鎖と累積があります。革新は革新を呼び、さらに次の革新へと繋がっていきます。この累積こそが企業進化のエッセンスです(46頁参照)。

次から次へとイノベーションができる組織とは、どんな特徴をもっているのでしょうか?このような組織は創造的であり、また生き生きとしています。私達が目指す究極の組織とは創造的組織です。創造的組織とは決して構造の問題ではなく、むしろ組織風土の問題と言えます。組織風土とその組織のくせであり、成員の頭の中に埋め込まれた共通の行動様式です。このくせを作り出すための様々な工夫が、組織の知的財産として蓄積されて、組織の見えざる資産になってくるのです。創造的組織には基本的には五つの特性があります。それは、自律的個人のゆるやかな結合、組織内部の市場化、武勇伝の伝承、ムダの存在、失敗のマネジメントノウハウ、です。自律的個人のゆるやかな結合。企業家的人材を生かすのは、企業家的人材に高い自律性を与えることです。企業家的人材は、本体のパワー構造からは比較的遠い所に置かれ、自由を享受することで、イノベーションに専念することができます。しかし、問題はこういった人材やユニットをどのように組織の目標へと結合させ、かつ本体がそういった人材やユニットによって共振させられるかにあります。その方法は、ゆるやかな結合にあります。自律的な企業家的人間ほど遠心力は強いです。こういった人材に官僚的な求心力を働かせると創造性は発揮できません。したがって、目に見えない力で結合させてゆかなくてはなりません。その結合は、価値と情報の共有、および自覚的な同期化によって達成されます。価値と情報の共有とは、組織メンバーがその企業のもつ高い価値に共感し、さらにオープンなコミュニケーションを通じて企業方針、目標、理念、具体的方針などの情報が自由に入手できることを指しています。組織内部の市場化。創造の母は競争にあります。創造的組織はその内部をも外部市場化してしまいます。武勇伝の伝承。創造的な組織では常にヒーローが次から次と出てきます。奥村昭博氏は武勇伝のケーススタディーとして、ホンダの本田宗一郎氏を挙げています。このような人物に憧れた企業家精神にあふれた若者が集まってくるし、また彼らはそのヒーローのようになりたいと行動します。こういった武勇伝が豊富な企業では、ヒーローは次から次と生まれ、またその成功が積み重ねられ新たな武勇伝となっていきます。ムダの存在。TQCカルチャーの支配する企業では、「三ム(ムリ、ムダ、ムラ)の追放」が徹底しています。しかし、開発とか研究の現場では逆です。イノベーションはスラッグ(ムダ)と高い関係をもっています。一見ムダに見えながら、競争によって追い込み状態を作り、イノベーションを生み出そうとする仕掛けです。一見ムダというのは短期的視点に立てば、非能率です。しかし、このムダからイノベーションが出れば、結果的にはもっと生産性の高い商品が出ることになります。長期的にはむしろ、このムダを認めた方が生産性が高いことは十分あります(215頁参照)。

失敗のマネジメントノウハウ。創造的組織のエッセンスは、この失敗のマネジメント・ノウハウの蓄積にあります。イノベーションとはもともと失敗の方が確率が高いのです。「千、三つ」とか「10%の成功率」などと言っている背後には、997の失敗、90%の失敗があるのです。失敗のノウハウこそが次の成功を約束するのです。失敗のノウハウには様々あり、創造的企業はそれぞれ固有のノウハウを蓄積しています。そのようなノウハウの例としては、第一に失敗の許容があります。第二に失敗には公明正大さが必要です。第三には、失敗者に対する仲間からの承認があること。意味のある失敗をした人は高く評価させるのです。第四は、失敗を未然に防ぐ方法です。よく練られたリスク・ヘッジされたアイディア創出が必要なのです。失敗のマネジメント・ノウハウは一朝一夕には蓄積できません。しかし、失敗をした者には成功者が忘れがちな貴重な教訓が残ります。まさに創造的組織の風土をつくり上げるのに極めて有効なものです。創造的組織を支え、つくり上げてゆくのはあくまでも個人です。こうした個人を生かすも殺すもマネジメントの責務です(219頁参照)。

奥村昭博氏著の『企業イノベーションへの挑戦』という書籍は、イノベーション、創造性、情報、世代交代という四つの課題を、日本企業のこれからの戦略、組織、リーダーシップという観点から検討しています(26頁参照)。昨今、イノベーションという言葉が世間では重要視され、イノベーションをよく知らない方がイノベーションという言葉を叫びながら強力な官僚的な組織でマネジメントを行っている場合も少なくありません。イノベーションを起こすための組織とは何かを問うには参考になる書籍だと思います。