平島廉久著『ホロン的高感度経営の実践』という書籍を紹介する。 平島廉久氏著の『ホロン的高感度経 | 松陰のブログ

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平島廉久著『ホロン的高感度経営の実践』という書籍を紹介する。

平島廉久氏著の『ホロン的高感度経営の実践』という書籍は、アーサー・ケストラー氏著の『ホロン革命』という書籍で示した「ホロン」という概念を基本とし、経営に応用しようとした意欲作です。

ホロン(HOLON)とは、ギリシャ語で全体を意味するホロス(HOLOS)と個や部分を意味するオン(ON)の合成語です。このホロンを形容詞化してホロニック(Holonic)と言います。ホロン経営の目指すのは、「全体と個の有機的な調和」です。全体とは総合体としての企業そのものであり、個とは企業全体を構成する細胞としての各部署や社員を言います。個が生き生きと活躍し、それが全体や他の個と有機的に結合されている状態をホロン的と言います。個としてのやる気を上手に引き出し、それが全体の企業目的と調和し、生き生きとした活力のある企業を目指そうという戦略です。ホロン的経営の基本理念は、個の重視と組織の柔軟性なのです(30頁参照)。

ホロン的経営の真髄は個の重視であり、個が生き生きとして活動する体制をつくることに集約されます。個が活かされ、これが全体といかに有機的に調和させることができるかにポイントを置いています。具体的な方策としては、組織活性化戦略、創造力育成戦略、人材活性化戦略、企業イメージアップ戦略です(42頁参照)。企業は大きくなるにつれて組織の肥大化が起こり硬直化し、次第に官僚主義がはびこります。意思決定が遅くなり、時代の流れとは逆の方向へ向かい、環境への適応力がますます鈍くなっていきます。これは「大企業病」と言われるもので、創業時には生き生きとしていた企業も組織を放置しておくと、この道をたどるのが一般的なパターンです。そこで、大企業病を打破するためには、思い切った組織の改革が必要となります。その有効な処方は、ピラミッド型の階層組織を排し、フラットな分権化した組織を作ることです(50頁参照)。

時代は個性化、多様化したソフトの時代に入っているので、いくら技術的に素晴らしい商品を開発しても、消費者やユーザーのニーズに充分応えるものでなければ、商品を購入してもらうことはできません。消費者のニーズにあった商品を開発できる、市場感覚豊かな研究開発集団をつくることです(77頁参照)。そういったアイデアを潰さずにいかに企業全体に波及させるかの組織デザインがホロン的組織活性化戦略の鍵となるのです。今後は企業のもつ創造力の差が企業間競争の決め手になっていきます。創造力の必要性は企業間競争激化からの要請とともに、FA(ファクトリー・オートメーション)化、OA化の進展によって機械化が進み、これまで人間が行っていたかなりの部分を機械が代替するためであり、人間のすることはますます創造的な仕事に絞られてきます。創造力の必要性の高まりによって、今後の期待される社員像というのは、同じ顔の組織人ではなく、違う顔を持った個性的な創造力豊かな人間です(85頁参照)。同質の平均的な人間だけではなく、できる限り異質の人間を採用することです。同質の人間だけだと同じような発想しかできないので、これからますます多様化する時代には充分に対応することができません。多様な考えを持った異質な人間が多くいると、柔軟な発想が生まれやすいものです。採用の学校、分野、趣味などを一つに集中させず、できる限りバラエティーをもたらすことです。広く様々な分野から採用することによって、活力のある異質集団をつくることができます(91頁参照)。創造力を育成するためには、創造的環境の整備が必要です。社内で自由にものを言うことができ、いくら新米の社員であろうとも斬新なアイデアを出せば、ドンドン取り上げてくれると雰囲気があると、社内は活気が漲り、創造力の溢れた企業へと変身することができます。自由闊達な社内の雰囲気づくりは、創造力育成のためには不可欠な要素です(96頁参照)。

アイデアは急に閃くと言いますが、そのアイデアは決して単独で生まれるものではありません。新しい情報、知識、経験と、過去に蓄積された情報、知識、経験が組み合わされて生まれるものです。問題はこの組み合わせで、組み合わせ方によって、平凡なアイデアになることもあるし、素晴らしい独創的なアイデアになることもあります。その効果的な方法は、異質な情報や知識を組み合わせることです。同質の者同士の組み合わせからは、一定の限界があり、よいアイデアは生まれにくいものです。企業はなるべく異質の人間が交流できるような機会を多く作ることです。異質な人間同士が交流することによって、同質な人間同士の付き合いからは得られない情報や知識を得ることができ、独創的なアイデアが生まれやすいのです(101頁参照)。

自由闊達な雰囲気を醸成するためには、リーダーシップが重要です。ホロン的高感度経営に求められるリーダーシップとは、社員のやる気を引き出すリーダーシップです。減点主義から得点主義へ(193頁参照)、ならざるを問う(194頁参照)、社員とのコミュニケーションを持つ(196頁参照)です。個々の自由闊達なベクトルを収斂させるのが、CI(コーポレート・アイデンティティ)です。ホロン的経営は、個を重視するものではありますが、これをそのままにしておくと、好き勝手な行動をとり全体として纏まりのないものとなってしまいます。しかし、全社的に確固とした企業理念があると、どの方向に企業活動を展開していけばよいかが徹底しているので、個の活動は統合されることになるのです。つまり、個と全体の有機的な調和がはかられるわけです(206頁参照)。

現在の社会風土は閉塞感が充満しています。この閉塞感を打破するには、今こそホロニックな政策が求められるのではないでしょうか。「景気」という文字の中に「気」という文字が含まれるように、景気は気分にものすごく左右されるものです。今のような閉塞感が充満する社会では景気が上昇するはずがありません。ホロニックな自由闊達の個と全体の利益が合致する理想の社会に向かって舵を取って欲しいものです。