ノーベル経済学賞を受賞したクルーグマン教授は、「競争に勝つのは必ずしも足の速いものでもないし、戦 | 松陰のブログ

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ノーベル経済学賞を受賞したクルーグマン教授は、「競争に勝つのは必ずしも足の速いものでもないし、戦いに勝つのも強者とは限らず、パンを得るのも賢い者ではないかも知れないし、そして、ものの分かった政策立案者の下で経済が繁栄するとは限らない」と述べています(『クルーグマン教授の経済入門』ポール・クルーグマン著 345頁)<ちなみに、その直後の文章で、経済が繁栄する成功の鍵は「生産性」だと繋いでいます>。確かに能力だけが成功を収められる要素ではないかも知れませんが、能力を高めることが成功に近づける要素であることも確かなように思えます。私も絶えまない進化を遂げるため、自分のスキルの向上に努めていきたいと思います。それは成功の有無だけを目標にしたものではなく、自分の自己実現の欲求を満たすという自分のためだからです。技術(スキル)は個人のみではなく、企業においても技術(テクノロジー)は重要です。

技術の本質のひとつに論理性があります。技術というものの全体がうまく機能するために必要とされる、相互依存の論理です。技術を構成するもの、技術をとりまくもの、それらの一つ一つが互いに論理的にかみあってこそ、はじめて技術は機能します。そういう相互依存の論理を作り出し、あるいは利用する戦略的対応のポイントを考えなくてなりません。互いに相互依存の論理が成り立たなくてはならない技術関連の要素、技術を取り巻く要素は多くあります。それらを敢えて大別すると、三つに分けられます。

第一は、自社の技術というものを構成している要素技術です。一つの企業の技術は数多くの要素技術の集合体です。相互依存が成り立つべきものの第二のグループは、自社技術の関係者です。最も当たり前なのは自社の技術者ですが、それだけが技術の関係者ではありません。自社の労働者がいます。そして取引相手(納入業者、流通業者など)がいます。これらの関係者の持っている技術のレベル、その特性などが相互に矛盾したり食い違っていては技術は機能しません。相互依存の論理が成り立っていなければ、技術は全体として機能しないのです。第三の相互依存は、自社の技術と企業を取り巻く市場や社会といった非技術的要素との間の相互依存です。技術は社会に受け入れられ市場で経済成果を生み出してこそ企業戦略上の意味を持ちます。

技術を構成する要素やそれを担う関係者の間に相互依存の論理が成立している必要がある、ということからすぐに言えることは、全体としての技術の水準は最も弱い要素の水準で決まるということです。例えば、山登りのパーティーのスピードが最も足の遅いメンバーの速度で決まるのと同じです。したがって、戦略の技術適合では、「横並びの論理」を作り出すことが必要です。大きな技術全体のどこか一部分だけが特に優れていても、結局は最低線が横並びにそろった線で全体の技術水準は決まってしまいます。ある製品を生産する技術を持っていても、その利用技術や周辺技術がしっかりしていなければ市場に提供できる製品とはなれません。要素技術の全体の横並びができて、はじめて全体に経済的生命が与えられるのです。さらには、下請けの技術、取引相手の技術のレベルが自社の技術レベルと同じペースで上がっていかなければ、ここでも横並びは崩れてしまいます。この横並びの確保のためには、しばしば下請けの技術育成に積極的に協力するような戦略が必要となることがあります(『新・経営戦略の論理』伊丹敬之著 194頁参照)。