山下富美代・井上隆二・矢澤圭介共著『環境と行動―人間行動の心理学―』という書籍を紹介する。 山 | 松陰のブログ

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山下富美代・井上隆二・矢澤圭介共著『環境と行動―人間行動の心理学―』という書籍を紹介する。

 

山下富美代氏・井上隆二氏・矢澤圭介氏共著の『環境と行動―人間行動の心理学―』は心理学の教科書または参考書として書かれた書籍です。私もこの書籍を読んで心理学の基礎を学ぶことができました。

 

外界の刺激に応じて私達が反応するために必要な体制としては、まず第一に外界刺激をとらえる受容器があげられます。受容器というのは一般的には、眼や耳や鼻のような感覚器の中で、直接適応刺激(妥当刺激)に応じる細胞のことです。感覚器はそれぞれかなり限定されたある特定の種類の刺激を特に受け入れ、興奮する特性を持っていますが、それぞれの感覚器について、その特に受け入れられる刺激のことを適応刺激と言います。感覚器と言われるものには、視覚器官、聴覚器官などがあります。適応刺激を受けた受容器はその興奮を受容器に連なる求心性神経繊維に伝えます。そこに生じる信号は非常な速さで、その繊維に沿って伝わっていきます。脳神経系に入ると、そこでは多くの神経細胞が突起を出し、互いに相接した網状の構造があり、入ってきた信号は色々に処理されます。そして効果器に連なる遠心性神経繊維に信号が送り出され、その結果として反応行動が起こるのです。刺激(S)→受容器(Re)→求心性神経(a.f.)→脳脊髄(CNS)→遠心性神経(e.f.)→効果器(筋肉・腺)→反応(R)。このような刺激と反応との相対的関係からの行動をみた場合、これを反応機制と言います。そしてこの感覚器のみの興奮に規定される知覚の部分があるものと仮定して、これを感覚といい、しばしば知覚とは仮定的に区別しています。しかし、反応機制の点からは、刺激から感受器系興奮に至る過程は、客観的に観察することができるとしても、感覚という反応に到達するには、脳の各中枢領域の介在があり、実際の分析に当っては一個の感覚中枢領域の興奮としてのみ感覚を定義することはできないので、感覚の体験的分析は極めて難しい問題です。知覚とは、神経系の統一的な活動であり、様々な感覚の統合されたものです。そして、その意味で、知覚が具体的であるのに対し、感覚は抽象的であるとするのです(5頁参照)。

 

刺激―反応のプロセス中、受容器と効果器を機能的に連絡している神経系の役割は次の三つに区別されます。第一は受容器で受けとめた信号を定められた仕組みで運動や分泌の指令に変換して、効果器に伝える伝導器としての役割です。この反応効果は、刺激に拘束された紋切り型です。第二は受容器で受けとめた信号を感覚し、記憶し、記録されたものを基にして感覚情報を処理し、その結果を運動や分泌の指令として送り出すものです。私達人間では外部の環境に都合のよい行動(適応行動)にあたります。第三は受容器から送りこまれた信号や処理されて貯えられている印象を組み合わせて全く新しい指令を作り上げ、これを効果器へ送り出す、いわば創造器ともいうべき役割です。この場合には自分の行動と自分で設定したものとの違いが情報としてフィードバックされ、創造器の働きがうまく調整されます。その結果、私達は創造的行動ができるのです(7頁参照)。

 

通信系のモデルとして人間を考えた場合には、人は単純な伝達回路としてではなく、一種の翻訳機械としての回路を有していると考えられます。つまり刺激を一つの暗号として解読し、意味を見出しているのです。情報とはエントロピーを減少させるような通信でありますが、刺激には情報を伝えないような信号、すなわち雑音が含まれていることも多いのです。勿論、雑音の少ない情報の高い弁別がなされるわけですが、私達は雑音の中からある意味をひろい出すこともできるのです(52頁参照)。

 

山下富美代氏・井上隆二氏・矢澤圭介氏共著の『環境と行動―人間行動の心理学―』には、中学校で学んだ「パブロフの犬」の話(138頁参照)も記載されており、とても懐かしい思いをしたのを覚えています。