今回は大田区の国指定重要文化財の建造物を探訪してきましたので、その御紹介です。
大田区の重文は池上本門寺にある2棟のみとなります。
さて、日蓮宗を立教開宗した日蓮は、数々の法難の後に鎌倉を諦め、甲斐国、身延山に久遠寺を開山しましたが、やがて体調を崩します。そして、湯治のために常陸国に向かう途中で入滅しました。その地に由緒寺として開山されたのが池上本門寺です。
ちなみに常陸の湯は水戸ゴルフクラブのそばにある車なしでは厳しい場所にあって、自分は数年前に偶然に立ち寄りましたが、温泉宿は閉鎖され、赤茶けた鉱泉を汲み上げるところだけ残っていました。そこにある碑には日蓮が訪れた旨刻まれていましたが、まあ、距離的に考えると、この碑の記述は違うのでしょう。
話が脱線しましたが、境内にある重文を見ていきます。
1607年に建造された五重塔です。初層が和様、二層以上が詰組を多用した禅宗様で豪華に見せている一方、二層までは瓦葺屋根で、下や遠方からだと分かりにくい三層以上は銅葺屋根として頭を軽くしています。装飾はシンプルです。
池上本門寺が本格的に栄えたのは徳川家や加藤清正の庇護を受けた江戸時代以降で、この五重塔はその象徴的な建造物です。
江戸期にも、日蓮宗は幕府に度々弾圧を受けるのですが、それでも多くの信者を抱え、多くの分派があり、特別な魅力がある宗派なのでしょう。
日蓮の550回忌を記念して信者が1828年に建造した宝塔です。二重棟である多宝塔、一重のものを宝塔と言うそうです。しかし、多宝塔にはいくつも国宝指定を受けているものがある一方で、宝塔は銅製や石造りの小さなものがほとんどで、そもそも木造のものは稀有なところ、こちらはその最大の木造建築です。しかも派手。宗教施設としてはそこまで古くはないものの、これなら確かに重文指定に値するよう思われます。円筒の部分は漆喰で作られているのでしょうか。
大田区の重文はこれでおしまいですが、境内には有名人のお墓がたくさんあるほか、区指定文化財もたくさんあって、見どころは尽きません。その中でも、少しだけ面白そうな建造物をアップします。