ジュニアテニス備忘録(その1)冷めた目は必要 | 柵飯事2~shigaramimamagoto ~

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 一昨年,私の息子はジュニアのテニス競技から離れました。結局,何の成果も得られず,私としては,未だに競技させてきた意味がはっきりと見いだせずにいますが,息子を支援している間,他の優秀な成績を修めてきたお子さんたちやその親御さん,ジュニア以降も競技を続けている若者たち,元プロ、コーチの方々とお話をしたりして、その様子をうかがうすることができましたし,だいぶ昔に私自身もやっていた競技テニスを振り返ることもできました。
 ハイティーンのジュニアを持つ親御さんには今更でありますが,せっかく知りえたことですので,これからテニス競技をさせたい,あるいは,ローティーンのジュニアの親御さん向けに,私が見聞きしたジュニアテニスの様子を備忘録として残しておきたいと思います。
 なお,あくまでも成果が得られなかった子の親の立場でのお話であり,強い選手をどう育成していくかについては何の示唆もありませんので,あらかじめ御了承ください。
 
 私自身は子供にさほど期待していなかったとは言いつつも,やはり一定の成果が得られるような最低限の支援はしてきたつもりです。その一方で,他の「のめりこんでいる」親御さんやコーチからのインターネットを含めた情報には,積極的に収集したり,試したりすることはほとんどしませんでした。
 息子の競技生活が終わって,改めてインターネットで検索すると,なるほど,おおむね想像していたとおりの情報が得られました。端的にそれを二分化すると,一つは充実したジュニア競技人生や競技者として高い成果を出すためのもの(こちらが多い)と,そんな無駄なことやらせずに勉強させろ、というものです。
 実は,私は後者にシンパシーを感じています。特に息子には競技が向いていなかったというのもあるのですが,単純に子供たちのその後の人生を考えて,合理的に判断するとそういう考えも十分妥当性があるということです。ずいぶんドライな考えと感じられる方が多いとは思いますが,過度にお子さんの競技に熱を入れている親御さんのクールダウンのために,極端な記述をしますので,第一回では夢も希望もない話となるます。
1 テニスの技術で生活できるか
 簡単に言うと非常に難しい世界ということとなります。どんな競技でもそもそもプロになることは難しいものですが,感覚的には,市場として確立していてプロの絶対数が多い野球やサッカー,日本人が上位を狙える競技種目などと比べると,ジュニア人口に比してテニス競技で一定の収入を得られる確率は極めてに低いと考えられます。関東の男子でこの春に高校卒業してプロ転向するのは2人だったと聞いています(間違っていたら申し訳ありません。)。いくら野球等と比べて競技人口が少ないといえども,大学経由や、海外留学を経てプロに転向する若者が年平均数人程度ではあまりにも間口が狭い世界と言えます。プロになっても,ポジションのある団体競技と違って,1位からビリまでランキングですべてが決まってしまい,ケガがなくともスポンサーがつかずに,ツアーに出られなくなって早々に引退する選手も多数います。
 テニスコーチも厳しい世界です。一般プレーヤーのレッスンのかなりの割合で大学生コーチですし,職業としてのコーチは素晴らしいとは思う一方で,ケガがあれば継続できません。安定収入を得るためには,一流選手の帯同経験があるとか,強豪ジュニアチームを率いているなど相当な実績が必要な世界でもあり,結構な割合のコーチが若いうちに転職していく厳しい業界です。
 
2 対費用効果
 お子さんには好きなことをさせてあげたい,そんな親御さんは多いでしょうし,私もそうでした。しかし,それには限度というものもあります。別の回でも説明しようかと思いますが,ジュニアテニスは,時間,手間,お金がいずれもたくさん必要となります。地方や海外遠征に行く野球・サッカー等の強豪校やクラブにお子さんを通わせている親御さんのご負担も相当だと思いますが,これらにはチームというスケールメリットがあります。一方,テニスは個人競技であり,遠征,レッスン,道具,送迎などの支援は個々の親御さんに任されているものです。これに個人レッスンや海外遠征なんかがはいると,経費だけではなく,親子ともどもたくさんの時間を競技に割き,学業にも大きな負担となります。テニスには様々な素晴らしい面がありますが,普通の経済事情の家庭では「好きなこと」では済まされない場合もあります。これはテニスに限らず,フィギュアスケートやゴルフなどにも言えると思いますが,過大な支援により何をどの程度得られるのかは,ある程度考えておきたいところです。
 
3 競技をしていて失うもの
 そんなこと言ったって,程度の差はあれども,どんな競技だって同じじゃないか,競技を取り上げたって勉強するとは限らない,とお考えの親御さんもいることでしょう。そのとおりなのです。また,競技に打ち込むことは大変素晴らしいことで,多くのメリットがあることは疑いません。私自身、結果的には息子に競技をさせたのは良かったとは思っています。
 ただ、競技者としてどんなレベルであろうが,基本的には練習量は同じであり,強豪高校に在籍している子供たちを除けば,部活では練習の質が確保できないため,私営のクラブでのレッスンが中心となります。テニスコートは相当の面積を必要とするため,地代を抑えるために大抵はアクセスが悪いところにあって,かつジュニアに力を入れているクラブ数は非常に限られています。都市部にお住まいであれば帰宅が22時から23時になり,芸能人やトップクラスの選手でもないのに放課後のクラスメイトとの交流や帰宅後の学習時間は極端に制限される場合が圧倒的に多いです。部活だけの子供たちに比べれば,時間的には大きなハンディキャップとなります。
 夢中になる時期があるのは本当に意義があろうかと思いますが,プロはもちろんのこと,進学しても競技者になれる可能性が非常に限られている中,将来の進路を考える時期にそこまで投資をする意味があるのかは、どこかでじっくりと考えさせないと,進路選択の時期に選択肢を大幅に狭めることになりかねません。自立した考えのお子さんであればお任せでもいいでしょうが,我が息子のようにそうではないお子さんの場合には,親御さんが見守る役割は重いと思っています。人生の選択肢は自分で決めるのは当たり前ですが,戦果も優れていないのに何も考えずに大学で競技浸りして就職活動時までにやりたいことが見つからない若者も結構いますし,高校や大学進学時にあっさりと競技から身を引いてしまうお子さんもいるのを見てきました。
 
4 冷めた目も必要
 テニスをする暇があれば勉強しろ,とは言いません。時間があったって,やらない子,できない子はいるわけですから。ただ,本格的にテニス競技をさせるとなると,犠牲は必要となるわけで,その犠牲をどこまで払えるのか,犠牲で得られるメリットがどの程度以上であれば続けるのか,について,考えがしっかりしているお子さんではなく,まだまだ甘い考えのお子さんをお持ちの親御さんであれば,ふんわりしたものでいいので,線引きを持っておられると良いのではないでしょうか。大人のテニスはお気軽にできますが,それだけ本格的なジュニアテニスに払う経済的、時間的、精神的コストは,結構なものがあると思われます。
 
 ネガティブな話を書いてしまいましたが,何度も言うとおりに熱中することがあるのは大変素晴らしいことですが,お子さんが,例えば次のような岐路に立ったと思われるときに,上記のことを思い出していただけるとよろしいかと思います。
・競技者用のレッスンに上がろうとするとき
・中学校進学前
・学業成績が芳しくないとき
・お子さんが競技に対する関心が薄れたとき,戦績があげられず悩んでいるとき
・高校進学時
・高2の冬又は都道府県ジュニア選手権前の進路選択の時期
など
 
続く