借金は返そう……さりとて、人生まで差し出す必要はない | 魔法の言霊――寿詞(よごと)説法師が贈る人生のヒント

魔法の言霊――寿詞(よごと)説法師が贈る人生のヒント

おめでとうございます!

『魔法の言霊(東方出版刊)』の著者・橘月尚龍です。
ボクが、この本を上梓したのが2002年――
それから世には同様の表現があふれて玉石混合で、
わけ分からん状態になってます。

そこで本家としてのメッセージを発信することにしました。

 この人生というゲームの経済社会ダンジョンで暮らす限り、ひとはなんらかのカタチで借金を抱えている。
 分かりやすいところでいえば、住宅ローンやクレジットカード――当人には、ことさら借金という認識はないけれど、支払いが済むまでは借金というカテゴリーに入る。また電気やガス、水道に電話などの公共料金なんかもそう。
 だから支払いが滞ると、いきなり不利益が発生する。カードでの買いものはできなくなり、電気・ガス・水道に電話は止められ、住宅は競売にかけられて叩き出される事態となるわけ。まさしく借金であることの証明だ。

 すなわち、この経済社会では――たっぷりの財産を持っているか、お金を継続的に稼ぎつづけないと、ただ生きていくことだってできない設定になっている。
 とりわけ、分かっての借金に関しては、ちゃんと返さないことには(前にも述べたよう)経済社会不適格者として人格さえ否定されてしまう。それがイヤなら経済社会とオサラバしないといけないのだが、この国(日本)や世界では基本設定が経済社会(ほとんどの地域で)なので、どこにも逃げようがない。唯一の方法は、この世とオサラバ――あの世への高飛びしかないのだ。

 なので、ひとは借金返済に必死になり、それが叶わぬとなると自殺を謀ったりする。まさしく人生を差し出してしまう。客観的に見るとアホな話なんだけど、追いつめられると、やっちゃうひとがあとを絶たない。難儀な話である。

 では引用――

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 さてさて、あなたはお金がほしいかい?
 ボクはほしいよ。そして少なくともボクの周りに「お金なんかいらない」というひとはいない。出会ったことがない。
 どうして、ほしいのかというと便利だからだ。ほしいものが存分に買えるし、したいことが自由にできる。それも、かなりの度合で……ね。

 つまり、経済社会で「お金がある」という状況は、自由度を担保できるということにほかならない。そして有するお金の額に比例して自由度は高まるわけ。ということは反対に「お金がない」ことは自由度が制限される。でもって、ひとは自由が好きだから、お金を欲しがるって寸法だ。

 ……中略……

 さらに難儀なことに――経済は、この矛盾をそうでないと思わせるギャンブルを仕掛けてくる。クレジットにローンだ。「そんなに欲しいなら手に入れましょうよ。支払いは、あとでゆっくりのんびりといきましょうや」という囁きだ。

 もちろんボクは、金融機関が本来担っている役割について批判するつもりはない。経済社会での機能として評価はしている。かくいうボクも、高速道路のETCカードなんかの恩恵に浴しているし、クレジットは手持ちがない時の支払いには便利している。また、企業などが事業を進める上での資金調達にも金融機関は貢献しているとは思う。

 ……中略……

 とりわけ日本ではアドオン方式なんていって、最初は金利ばかりの支払いで、元金はほとんど減らない。さらに担保物件(つまり住んでる家)を取りあげて、これを競売なんかの二束三文で売っぱらい、残金は相変わらず債務として残るシステムになっているのだ。
 そのうえ、これに連帯保証人なんて狂ったような制度(他の国には、まずない)がある。

 どうだい――貸す側……つまり強者は絶対に損しないようにできているのだ。唯一のギブアップ方法は「破産」だ。でも、これだって強者仲間の弁護士に依頼しないといけない。さらにギブアップするひとが大量に発生(住専の破綻時みたいに)して金融機関が困った状態になったら、強者仲間の権力者が公的資金を注入して救済してくれる。

 だってさ、だれだって借り入れを起こす時には「ちゃんと(金利もつけて)返せる」と思っている。貸す側だって「きっちり返してもらえる」と判断(審査なんていうしね)して貸した筈だ。
 けれども、人生にはいろんなことが起こる。務めてる会社が倒産したり、リストラに遭ったり、本人が病気をしたり、家族が事故に遭ったり……。だけど、それはまったく斟酌ないのだ。倒産もリストラも病気も事故も……お金を借りた側が悪いのである。どんな手を使っても、お金を段取りして支払わないといけない。

 変な話だと思わない?
 これを会話風にしてみると――

「オレは借りる時、きちんと返せると思ったから借りた。あんただって、こいつだったら大丈夫だと思ったから貸したんだろ? ところがバブル崩壊にリーマンショックで会社は左前。そこに震災で倒産寸前だ。オレは接待営業がたたり、肝炎が悪化して肝硬変一歩前で入院。ところが懸命に尽くしてきたオレを会社は肩たたき。看病疲れの嫁が居眠り運転で交通事故。それでも期日までに払えってか?」
「払え」
「しかしよお。高名な経済学者や金融のプロですら予測できなかった経済不況をオレみたいな一般人に予測できないのは当然だろ。ましてや震災を……なんて?」
「しろ。いや、できなくても関係ない。ただ、払え」
「それに元金の分はもう返してるだろ。あんたとこに損はない筈だ」
「元金は残ってる。払ったのは金利分で、それはうちの利益だ」
「オレだって借りた責任は分かってるつもりだ。百歩譲って、未来を見通せなかったのはオレが悪かったとしよう……だれもできないとは思うけど。たしかに打つ手がない状況になった。でも、あんただって貸した時、オレが返せなくなっても大丈夫なように保険とかの手を打ってなかったのは悪くはないのかい?」
「そういうローン契約にはなってない」
「じゃあ、オレがギブアップしたら、どうするんだ?」
「保証人に払ってもらう」
「ちょっと待ってくれ。あいつは竹馬の友で無二の親友だ。さらに晩婚で、最近やっと子宝に恵まれたばかりなんだ」
「そういう契約になっていて、法的に問題はないから保証人から切り取ることになる」
「ということは、あいつも破産しないことには、おとがめなしにはならないってことか?」
「だから、あなたが支払いつづければ問題はない」
 ……という感じになるのかな。

 まあ実際は、金融機関のほうだって、いますぐ取れないわけで、支払方法の変更だとか期間の延長とかといった対応はしてくれるだろう。

 ……中略……

 やはり死ぬまで逃がしてはくれないのだ。これまた、このゲームの基本設定のひとつなのである。

 ここで誤解なきよう願いたいのは――これが、経済社会という世の中の設定であるということであって、それがいいとも悪いともボクはいっていない。

 ……中略……

 借金は返そう――それがこの世間でのマナーである。

 しかしまた「すぐに返せ」ともいっていない。だって、すぐに返せないから借金として残っているわけだろう。
 大切なのは「借金は返す」気でいること、いつづけることだ。それでいいのである。

 そうすれば、あなたは立派な債務者として生きていける。ここで逃げ出すと、あなたは一生「借金から逃げた」という負い目を背負っていかなくてはならなくなる。堂々と借金あり人間として暮らしていればいいのだ。
 こういうと、たいていのひとは「じゃあ、早く返さなくては……」と思ってしまう。借金返済をあせってしまうのだ。それも必要ない。あせりは禁物だ。あせるとあなたは、借金に人生を差し出してしまうからね。

 ちがうんだ。
 借金返済は人生ゲームのダンジョンのひとつに過ぎない。プレイするゲームの面なのだよ。あなたがプレイするんだ。プレイされたらあかん。
 分かったかな? あなたの人生ゲームのプレイヤーは当然、あなたである。だから、あなたが納得のいくカタチでプレイすればいい。

 例えば、目先に返済予定の金額があったとしよう。ところが家族が急病になった。こんな時、あなたは借金返済を後回しにしても家族を優先するだろう。あたりまえのことである。これなら、だれもが「そら、そ~だ」と納得するだろう。後回しの大義名分も立つ。
 ところがである。その時、あなたがずっと参加したかったイベントがあったとしよう。返済をするとイベントに参加できない。参加すると返済は後回しになってしまう。かといってイベントを逃すのは惜しい。ここが思案のしどころだ。
 こんな時、たいていのひとは世間の大義名分に引っぱられてしまう。世間の評価を気にするのだ。すると「やっぱ返済だよなあ」とイベント参加をあきらめる。ところが、いくら「あきらめた」と思っても、その実、後悔が残るのだ。あなたのこころが傷つく。
 そして、こんなことが度重なると、後悔の傷が澱(おり)のように溜まっていく。結果、あなたの人生まで台なしになってしまう。
 これが「人生を差し出す」ということである。

 ボクは「それをやめよう」といっているのだ。
 そのイベントの世間的な評価は関係ない。よしんば、それが呑み会であってもだ。参加する友が転勤で、今生の別れになるかも知れない。あくまで判断するのはプレイヤーであるあなたなのである。どちらが後悔しないかは、あなたが決めればいい。
 こういうと「明日の支払いをやめて、きょうの夜の合コンを優先しろというのか?」とあなたはいうかも知れない。
 そうだ!
 あなたが自分自身にしっかり訊いて「合コン優先」と思ったなら、そうすればいい。もしかしたら運命の出会いがあるかも知れないじゃないか? そんな予感・霊感があるのにチャンスを逃したら一生後悔する。

 もちろん、支払いを遅らせたら、あなたになんらかの不利益が生じるのはしかたがないことを覚悟する必要はあるよ。
 クレジットカードが止まる、ローンがブラックになる、もう借り入れができなくなる等から……極端な話、電気やガスが止まるかも知れない。だけど、そんな覚悟ができるほどのイベントだったら、そちらを優先しよう。

 ……中略……

 しかし金融機関などはあなたの返済が遅れたところでつぶれはしない。従業員の給料もちゃんと出る。あなたほどは困らないのだ。また困るあなただって、生命までは取られはしない。
 だったら、あなたが、あなたの内なるこころの声に従えばいい。あなたの側に「借金返済の自由」を取り戻してこそ、立派な債務者なのである。

 ただし、あなたの返済や支払いがないと、たちまちに困るといった個人からの借金の場合は、最優先にし、誠実に対応しよう。
 これは約束だ。なんの約束かというと――この人生ゲームにおいて、基本設定に含まれることなのである。でないと、あなたは「思うがままの人生」を送れなくなる(なぜかは、後述する)だろう。

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 そう、あなたに責任のある借金はちゃんと返す――これが経済社会というダンジョンでは正しい姿勢である。だけど、そのためにプライスレスの……お金では買えない人生を差し出す必要はない。こちらも正しい姿勢であることを知ろうよ。