先に述べた「ありがとう」以上に危険きわまりない言霊が「ツイてる」である。
世には、この「ツイてる」さえいっておけば、なにか「いいこと」とか「得すること」がやってくるように喧伝してる輩(やから)がいて、深く考えることをしない連中を誤誘導している。
おかげで暮らしが破綻するひとが発生したり、人間関係が狂ったり、世の中がおかしくなったり……と、まったくもって、とんでもない事態だ。
ここでは言霊のシステムから、この「ツイてる」に警告を発しておこう。
まずは「ツイてる」とは、どういうことか? について理解してもらうためにボクの著書『魔法の言霊』から、その解説部分を引用してみよう。
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ツキ――漢字では「憑き」と書く。つまり憑依(ひょうい)のことだ。
ギャンブルで大勝ちすると「きょうは、ついていた」とよろこぶ。ビジネスなどでもトントン拍子に話が進むと「ついてる」という。ところが「憑いてた」とか「憑依している」というと、とたんに気色悪い感じになる。でも「憑いてる」というのが実際だ。
では「ツキ」とはなんだろう? 民俗学者の小松和彦『憑霊信仰論』によると、
――「つき」という状態は、《日常の状態・能力+α》の状態であり、「つき」現象の発現の原因がαなのであるが、私たちは、その実体を把握し、理解することができず、したがって、便宜的に〈意味されたもの〉を欠いたカラッポの概念を、αの部分に〈意味されたもの〉としてあてがっているにすぎないのである。(中略)……ついてる……それが何なのかをさらに進んで思考しようとしない。彼らは「つき」とか「もの」とかを用いることで満足しているのだ。すなわち、αを、日本では古くから便宜的に「もの」とよんでいるにすぎず、別の造語であってもよいわけである(後略)――と説明される。
つまり、ボクたちは日常的理解を超えたコトが起こったら、それは超自然的なパワーが「ついた」と考えて、そのパワーの根源は曖昧なままにしている。言い換えるなら、「ものが憑いた」状態だから、日常の状態・能力を超えることをなし得るとするのだ。
……中略……
いずれにしても日常でない力の助けを借りる(借りている)状態を「ツキ」と呼ぶ。
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分かったかな。よく「ツイてる」というけど、ほとんどの場合、その憑くものの正体を考えないで安易に発しているわけ。
しかしながら「ツキ」というのは、たしかに存在する。存在するから厄介なのだ。そこで、あなたに「ついてくれる」つまり「味方になってくれる」という「もの」についての理解を支援したい。
この「もの」は通常、眼には見えない存在だ。一般的な表現をするなら――神仏だとか守護霊、精霊……いわば「小さな神さま」となるだろう。
もちろん守護霊(守護神とか背後霊とかも含めて)は、あなた専門の応援団だから、いつも、あなたの味方だ。かといって、その存在は「慈愛に満ちつつも厳格な親」的であるので、そうそう、あなたを甘やかせてはくれないだろう。危機的な状況の時に救いの手を差し伸べてくれても、平時にラッキーをもたらしてくれるとは考えがたい。
だったら思いがけない「ツキ」を運んでくれるのは、ほかの「もの」ということ。
ところが困ったことに――この「もの」だちには精霊も悪霊もいるのだ。そして、あなたの状態に合って「ついてくれる」「つきやがる」のである。
そこで「ツイてる」について考えてみよう。
大した努力もせずに「ギャンブルを当てたい」だとか「ボロ儲けしたい」と思って「ツイてる。ツイてる」を発する行為は、どう考えても我欲丸出しである。まさしくエゴの叫びだ。すると当然のことながら、憑くのは悪霊になる。
ほれ、ギャンブルなどで大きく当てたひとが、その後、身を持ち崩したなんて話を聞いたことがあるだろう。地獄いきで当人も悪霊の仲間入りって寸法だ。
最後に残るのが精霊だ。でも、あなた専門の応援団ではないので、普段「ついてくれる」ことはない。かといって、あなた次第で応援に回ってくれることもある。これが本物の「ツキ」なのだ。
植木に水をやると、花の精霊が歓ぶ。地面のゴミを拾うと大地の精霊が歓ぶ。歓んだ精霊は、あなたに「ツキ」を運んでくれる。
また、あなたがひとに親切にすると、そのひとの守護霊が歓ぶ。歓んだ守護霊は、あなたの守護霊に「こんなに素敵な子(あなたのこと)なんだから、たまにはご褒美をあげてもいいんじゃない?」とメールしてくれるってことだ。
そうなんだ。この「ツイてる」とは、あなたが「ついてもらうに相応しい」かどうかに依存する。相応しいあなただから「本物のツキ」すなわち好運を獲得できるわけ。
なのにエゴ丸出しで「ツイてる。ツイてる」と叫んでいると、悪霊が喜び勇んでやってきてしまう。そして、うわべの好運をエサに地獄にたたき込んで、あなたを悪霊仲間に取り込んでしまう。お~怖い。
だから「ツキ」とは、あなたの生きかたに対する報酬であることを忘れてはいけない。あくまで摂理なのである。
だから安易なエゴ丸出しの「ツイてる」には、くれぐれも、ご注意あれ!