当節、一言言っておきたいことがある
それは、武道において
「黒帯は決してゴールではないということ」だ
毎度毎度の繰り返しになってしまうが、
武道において、最初の段位を一段といわず、初段というのは、
初段を允可されてからが本当の修行のはじまりで、もう一度初心に戻ったつもりになって、励むようにという訓えが込められているからに他ならない
一方で、たしかに黒帯取得は大きな節目ではあるので、それを目標にしてもらうのは、大いに結構なことなのだが、「初段合格、即道場を去る」といった拳士は、ワタシからすると、本当の有段者とは言い難い……
百歩譲って、黒帯になることがゴールだとしても、
初段に合格した直後に、すぐに修行をやめてしまうというのは、
陸上の100メートル走で、ゴールの100m地点に到達した瞬間に、ピタッと止まってしまうようなもの
100mを全力で走り切って、好タイムを出すためには、ゴールの数メートル先までMAXスピードで走り、そこからさらに数10メートルかけて徐々に減速してから止まるはず
もっと身近な例でいえば、
ミットを突いたり・蹴ったりする際、手足が伸びきったときに、ちょうどミットの表面に触れるか触れないかという間合いで、突きや蹴りを繰り出したとしたらどうだろう?
ミットに拳の先や足先が触れただけでは、ミットトレーニングの意味がない
ミットを叩くなら、ミットの表面から拳一個がめり込むぐらいの間合い、
厚さ10センチぐらいのミットなら、ミットの表面ではなく背面まで突きが届くようなつもりでつかないと、「突いた」とは言えないのと同じことだ
つまり、何が言いたいかというと、昇級・昇格においても、
残身と残心、フォロースルーが必須不可欠だということ
仮に黒帯がひとつのゴールだとしても、ゴールラインに達した途端に立ち止まってしまっては、DNF(Did Not Finish)、本当にゴールしたとは言えないのではなかろうか
昇級、昇段、とくに初段・黒帯というのは、自分だけの力で“取る”ものではない
資格はあくまで頂くものであり、允可されるもの
自分自身の努力に、
師匠、先輩、同輩、後輩、そして応援してくれた家族や周囲の力が加わって、はじめてたどり着けたわけだから、黒帯姿を道場のみんなに見てもらい、有段者科目表に従って新しい課題に取り組み、後進の修行に力を貸して、それで初めて一人前の初段になったといえるはず
それには、最低でも初段習得後、半年ぐらいはかかると思うのだが……
肝心なことをもうひとつ!
稽古をやめる、続けるに関係なく、
日常生活においても、何か目標を達成したあとに、いわゆる「燃え尽き症候群」のようになって、ポカーンと虚脱感に襲われることが少なからずあるだろう
これも、ゴールラインまでしか視野に入っていなかったのが原因だ
目標を設定するときに、ゴールラインの先、フォロースルーの部分まで、はじめから視線の先に入れておけば、「燃え尽き症候群」になるようなことはない
せっかく
武道の修行をやっているのだから、
こうした残身と残心も忘れずに!!
本日の「身体の知能指数」 (PQ=physical quotient) 『107』