今回のタイトル「ヒール or トゥ」は、スポーツドライビングのテクニックのひとつ「ヒール&トゥ」の誤記ではなく、武道の「足づかい」について語りたいと思ってつけたもの
80年代、日本のスポーツの現場では、「人間が静止状態から素早く動くには、かかとを少し浮かせて、つま先でしっかりと地面を蹴るべし」と指導されていた
さらに当時は、武道の世界でも、「(構えるときは)かかとの下に、薄い紙が一枚入るような隙間を作って、つま先重心で立て」と指導されることが珍しくなかった
ところが、そうした足の使い方に、まったく正反対の意見を唱えている武道・武術界の大物がいる
それはかの剣聖・宮本武蔵
武蔵は彼の著書「五輪書」の水之巻に「足づかいの事」という項を設け、
「足のはこびやうの事、つまさきを少しうけて、きびすをつよく踏むべし」(足の運びは、つま先を少し浮かせて、かかとを強く踏むようにする)と説いているのだ!?
20世紀のスポーツ理論と、400年前の剣聖の訓え、どちらが理にかなっているのか?
ワタシも一時悩んだことがあるが、「究極の身体」そして「宮本武蔵は、なぜ強かったのか?」(いずれも講談社刊)という書籍を読んだら、あっさりと結論が出てしまった
答えは「武蔵の勝ち!」
つまり、ヒール(かかと)を強く踏んで、トゥ(つま先)から力を抜いたほうが、初動が早く、気配も消えた優れた動きができるということ
これは支持点とモーメントアームの単純な物理学で、明確に説明できる問題なので、スポーツのコーチなどの「ワタシの経験では……」というのが入り込む余地は微塵もない(詳しい理論は、前記の2冊を参照のこと)
しかし、理屈がわかったところで、それを自分の身体で体現できているかというのは別問題
ワタシもここ数年、どうにか武蔵の足づかいの奥義「かかと支持」をモノにしようと、いろいろ工夫をしてきたつもりだったのだが、なかなか苦戦を強いられてきたのが実情だ
ところが、今日、その「かかとを強く踏んで、前方力を生み出す」足づかいの大きなヒントを得ることができ、少し光明が見えてきた
もちろん、きちんと身につけるには、さらなる精進・努力が欠かせないが、ちょっと道筋が見えてきたので、継続的にこの課題に取り組んでみたい
本日の「身体の知能指数」 (PQ=physical quotient) 『108』