禅のすすめ「多忙な人ほど座禅を組もう」(拳禅一如②) | 身体からの悟りを目指して ~ 少林寺拳法

身体からの悟りを目指して ~ 少林寺拳法

我孫子道院 道院長のブログ

少林寺拳法の道場では、必ず「鎮魂行」=座禅・調息をおこなってから、「易筋行」=「拳」の修錬に入る。


達磨大師以来、「拳」と「禅」の二道が、禅門の主行とされ、

鎮魂行は「内修」(精神の修行法)の実践のひとつとして、絶対に欠かしてはならない「行」と位置づけられているからだ。


座禅は古くから、日本人が精神力、胆力、そして肚(ハラ)を鍛えるために、好んで採用してきた鍛錬法で、

幕末の英傑、勝海舟や山岡鉄舟などが、座禅と剣術の修行で、勇気と胆力を養ったのは有名な話。

その他、座禅の修行に取り組んだ、武道・武術家、偉人は枚挙に暇がない。


開祖は、少林寺拳法教範に

「禅とは、身体を整え、呼吸を整え、心を整えて、英智と人格を高め、真の人間の働きを獲得すること」という、東京教育大学の杉靖三郎教授の言葉を引用して、定義されている。


ここで肝心なのは「身体を整え」→「呼吸を整え」→「心を整える」という過程。

まずは力まずにリラックスしていい姿勢で座る。

姿勢が悪いと呼吸が浅くなってしまうし、肩や腰に力が入っていても呼吸が浅くなる。

(我孫子道院で、鎮魂行の前にストレッチをやることにしているのも、あらかじめ身体をほぐすため)


「息」は「自らの心」と書くとおり、呼吸が浅く乱れているときは、心も乱れてしまう。

でも乱れた心は、呼吸を整えることで、落ち着きを取り戻すことができる。

こうした関係性があるからこそ、世の中には数多くの呼吸法があるのだろう。

(呼吸も「身体」だとすれば、座禅・調息法も「身体」から「精神」へのアプローチといえる)


少林寺拳法にも独自の調息法が伝わっているが、その詳細は教範や読本で紹介されているので、ここでは割愛させていただく。


要は、静かに長く深く息を吸って、充気を味わって、ゆっくりと吐くということだが、

「静かに長く深く吸う」というのは、じつは意外に難しい。

何が難しいかというと、第一にたくさん息を吸い入れようとすると、肩などに力が入り、身体が固まる傾向がある。

しかし、身体が固まると呼吸が浅くなるので、吸気のときに力まないよう気をつけたい。


そして吸い込んだ息は、胸だけでなく腹にまで落としていくのが肝要。

いわゆる丹田呼吸、腹式呼吸のこと。

ただ、一般的な腹式呼吸のようにお腹側を広げて、腰を反るのはNG

それではお腹側が広がった分、腰側が縮んで相殺され、けっきょく吸気の量が大して増えないからだ。

(これはラジオ体操の胸を張って、背中を狭める深呼吸も同じ!)

正しい丹田呼吸は、吸気の際に腹部だけでなく腰部も膨らむ「腹腰呼吸」でなければならない。

(「腹腰呼吸」について、詳しくは講談社刊「宮本武蔵は、なぜ強かったのか?」を参照 ← すごく勉強になるので、拳士にはおすすめ!)

道衣姿のときは、帯を締めているので、お腹と腰のふくらみ具合が、自分で確認できるので都合がいい。

こうして腹腰呼吸に成功すると、息は深く入ってくる。

さらに胸や背中もリラックスして、肋骨全体が吸気にあわせて、前後左右に均等に膨らむと、広く長い呼吸になる。

(じつはこの状態のことを「上虚下実」という)


あとは結手した手を臍下三寸の位置に軽く当て、丹田の意識を高め、

(普段は帯の結び目が丹田の位置にくるようにすると、丹田が刺激される)

吸気のときに「宇宙の精気我体内に入る」(精気、生命力が体内に入る意識)

呼気のときに「ダーマの特性、我に発する」(自分の気力・精神力を身体にみなぎらせる意識)

と思念する←これがコツ!


稽古のたびに鎮魂行をおこなうのだから、

せっかくなので、正しい調息、正しい鎮魂行で最大限の効果を得るようにしたいもの。


その一方で、難しいことを考えず、まずは座禅を組んでみるというのもいいと思う。


「正しいという字は『一度止まる』と書く」

日々せわしない生活を送っている現代人だからこそ、

道場で静かに座禅を組んで、いったん立ち止まって、自分を見つめなおす時間を大切にしようではありませんか。


というわけで、

我孫子道院では、座禅(鎮魂行)とストレッチだけの参加も受け付けています。

(主として、拳士のご家族対象)



本日の「身体の知能指数」 (PQ=physical quotient) 『108』




身体からの悟りを目指して ~ 少林寺拳法