湘南逍遥

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「祖国への挽歌」好評(?)発売中!

もう1カ月以上経ってしまいましたが、2月22日に拙著「祖国への挽歌」を出版しました。
おっと、拙著などと言っては失礼でした。この本は演出家・野伏翔氏が史実に基づいてプロデュースした舞台演劇をノベライズしたものです。野伏監督の舞台演劇はとても素晴らしい! 内容はアメリカの裏社会で実在した日系人マフィア“モンタナジョー”の鮮烈な人生を描いた作品です。2019年6月と2023年9月に松村雄基さんの主演で俳優座劇場にて上演されました。
つまり題材はとてもすぐれているわけで拙著とは言い難い。ノベライズした私の力量が拙いということはあるかと思います

以下、本ができたときの私のコメントです。

私は若き日より「ザテレビジョン」「TVガイド」をはじめ、さまざまな商業雑誌で記事を書いてきましたが、今回、野伏監督のお眼鏡にかない、初めて舞台演劇のノベライズに挑戦しました。
ノベライズはどのようにして書き上げるものか、まったくわからずに手探りの状態で原稿を書き始めました。最初に2019年の上演作の保存用VTRを何度も見返しました。演者の台詞、表情、動作などをチェックしながら第一稿を書き上げました。その後、昨年の上演作を実際に観劇するとともに、改訂台本と第一稿と照らし合わせながら第二稿を仕上げました。その第二稿を野伏監督にご確認いただき、推敲を重ねたものが最終稿になりました。
原稿を書き始めたのが昨年5月で、出版までは10カ月を要しました。
本書が面白いか面白くないかと問われれば、正直よくわかりません。ライターとしての私は原稿を書くときはいつも読者を意識していました。それはいかに読みやすい文章で、主題を読む人の心に浸透させるかということでした。
今回は読者を意識することなく原稿を書き進めました。私の頭の中には常に野伏監督がいて、監督の創意とイメージを解釈することに専心しました。
舞台演劇「祖国への挽歌」は野伏監督が世に送り出したノワール・エンタテインメントの傑作ですから、本書で野伏監督の意図が再現されているのであれば、きっと面白いものに仕上がっているはずです。一方、面白味に欠けるということであれば、それは残念ながら私の物書きとしての力量不足といえるでしょう。
ノベライズにあたっては、野伏監督の創意とイメージを損なうことのないよう戒めながらも、私なりに書き手としての演出を試みております。実際の舞台演劇とは異なる構成がありますが、ご容赦ください。
「祖国から挽歌」は舞台演劇の再演が予定され、また映画化の計画も進められています。本書がその一助を担えるようであれば幸甚に存じます。

 

以上です。月並みですが本屋さんで見かけましたら(あまり置いていませんが)、ぜひ手にとってご覧ください。表紙の松村雄基さんがとっても格好いいです。

 

 

 

 

 

ユニコは歩き続ける

湘南文学舎の渉外担当といえるパピヨンのユニコが2月1日未明、息を引き取った。

2007年8月8日生まれ、16歳であった。

とても愛嬌があり、散歩に出かけたら、見知らぬ人にも駆け寄っていった活発な子であった。近所の子供たちには「ユニちゃん」と呼ばれた人気者であった。

私や同居している猫、もう一匹の犬は体に不具合があったが、ユニコはまったくの健康体であった。

それが白内障を患い、目が見えなくなってから認知症を発症して、食が細くなっていった。

認知症が進む中でも歩くことだけは忘れなかった。外を歩くことができなくなってからは部屋の中をぐるぐる歩き続けた。

衰弱してからも、なにかの拍子に立ち上がってよろよろしながらも歩き続けた。バタンキューを何度も繰り返しながら。

 

こいつはすごいなぁ、命尽きるまで歩き続けるんだな、と私は心から感心した。私もかくありたい。

犬の16歳といえば、人間ならば80歳だという。いつの間にか私の年齢を越えて、犬生をまっとうしたと褒めてあげたいが、まだまだ一緒にいたかった。ユニコはひたすら歩いて私を追い越していってしまった。

 

ナポリに死す

昨日の大晦日、朝からテレビを眺めながら掃除をしていた。たまたまやっていた番組が「孤独のグルメ」だった。もちろん再放送。掃除の合間に見る料理はころころと変わっていた。
どういうわけか井之頭五郎(松重豊)が美味しそうに食べていたナポリタンが頭の片隅に残ってしまった。
掃除を終えて買い物と休息を兼ねて、某ショッピングモールへ出かけた。
ショッピングモールのフードコートで昼食をとることにしたのだが、どうもどれにも触手が伸びずに難儀していた。そもそもセルフサービスなのに長い行列に並ぶのが嫌いな性分である。味よりも並ばないで済むところを選ぶタチだが、大晦日ということで、どこもそこそこの行列である。ふと目にとまったのが、「鉄板ナポリタン」。ふと「孤独のグルメ」がよみがえり、その列に並んだ。

「孤独のグルメ」のナポリタンはかなり炒めた感じがして、それが「鉄板」とリンクしていた。今日はそういうナポリタンが食べたいと思っていた。ブーブーと呼び出しブザーが鳴って、取りにいくと「かなり炒め」ではなくて「やや炒め」の感じで、少しがっかりとした。私はなんでもアツアツが好きなのである。
ところがこの「鉄板ナポリタン」には面白い仕掛けがあった。モッツァレラチーズが仕込んであって食べ進めていくうちにチーズが溶けだして糸をひく。「ほお、これはこれは」と楽しみながらペロリと完食した。
私はラーメンでもカレーでもそうだが、完食後に水をゴクゴクと飲み干すのが習慣になっている。特に熱いものを食べたあとの冷たい水の清涼感はたまらない。
「鉄板ナポリタン」を食べ尽くして、水をゴクゴク。しかし、昨日は至福の時間が地獄の時間に変わってしまった。水が気管に入って咽るやら咳込むやら…。目に涙、鼻からニョロリと出てくるスパゲティの麺。しかもなかなか収まらず周囲も怪訝な目を向け始めた。
これだけ咽たのは人生で初めてだったかも知れない。やがて目の前が暗転し始める。私は肺気腫を患っているから肺活量もそれほどない。次第に息苦しくなり、これはもうダメかと諦めかけたところで、ようやく咳が収まった。

「ほお、助かった」と安堵したときに思い浮かんだのが「ナポリに死す」であった。
大晦日にナポリで死すか…。
ナポリから生還した新年。さて、今年は生まれ変わったつもりで頑張ろうと思う。

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