2年以上前にブログで紹介させていただいた百田直樹さんのベストセラー「永遠の0」。

私は手放しで絶賛しいて、当時でもかなり高い評価だったのですが、評判が評判を呼んでついには映画化になりました。
今月21日に公開されます。背景には、百田さんのその後の大作
海賊と呼ばれた男」がベストセラーになった事による波及効果もあろうかと思います。


しかし…です。
2度ほど読み返したあと改めて感じたのは違和感でした。
この小説は設定上、歪められない「史実」が屋台骨になっており、かなりの部分が文献の引用的な文章が長く続いています。
また主人公は(恐らくゼロ戦と言ったら)「大空のサムライ」の坂井三郎さんをモデルにしているだろう、という(特に史実やゼロ戦を知ってる読者は)暗黙の了解が成立している上で読み進めているはずなんです。

そう考えると創作である小説の部分はとても小さなものであることに気付きました。
プロットは巧いと思いますが、よくあるドラマ仕立ての範疇でしょう。


2年前の書評と180度変わります。これはベストセラーであっても、名作ではありません。
遠い過去とはいえない歴史が舞台であるがゆえ、実在したモデルを「創作してねじ込んだ」違和感。

ノンフィクションが好きな割に、私はこの「違和感の正体」に気が付くのに少し時間がかかりました。
なので映画も観る気ことはないでしょう。
でも「ALWAYS 三丁目の夕日」の監督の作品らしいので…

わかりません。
 叫び叫び


大病を患ってから城さんの声は調子を悪くしていきます。

ご自身の著書でも、自身のコンデションの悪さは声にダイレクトに反映する事をおっしゃっています。

微妙な事なのでリスナーには感じにくいかも知れないが、と前置きしつつ高性能なマイクや録音技術の高まりもあり、それはごまかしのきかないものであり、相手にそれを感じさせないよう万全のコンデションで臨むようにしている。

そのプロの姿勢を厳しく貫いてこられた人でした。

もうすっかり有名な話ですが、「夜間飛行のパイロット」を演じることに徹していつもスーツを着用し、照明を落として原稿を読んだ事とそれは同じ次元です。

それ故に、だれが聴いてもわかるくらいに変調したご自身の声に対して、どれくらい悩まれたかとても測り知れません。


ご興味ある方はこちらで城さんのJet Streamのナレーションが集められていますので、聴き比べてみてはいかがでしょう。

ジェットストリーム 詩:堀内茂男 ナレーション:城達也


7387回のナレーターを務めた「最後の挨拶」は、かすれる寸前の声をなんとか整えているようです。
しかしこの変調したお声は矢島正明さんの声質にたいへん近くなっていて一聴、矢島さんが代わりを務めたと思ったくらいでした。


こう言ったら失礼かもしれませんが、
城さんが病に罹り声の制御が困難になった事により
自身のこれまでの経験や努力で培われた声が昇華して、
抱いてこられた先輩へのある種の憧憬の念が無意識に表出したのではないか。

考えすぎかも知れません。
城さんは調子をくずされても城達也さんであった…
でも、城さんに憧れる私がそうであるように、
憧れの対象が本人に乗り移るがごとく「力」となって
表現者(城達也)がよみがえる…ということもあるのではないか。

微小な経験しかない私と重ねるのはあまりに稚拙な考えでしょうが、
素直にそう思えてしまうのです。





城達也さんが亡くなられて18年が経ちます。

私が、硬派とか正統派と勝手に定義するナレーションスタイルを
持ち、特にドキュメンタリー番組などで際立つ存在感を出しているなと思うナレーターは城さんを置いてすぐには出てきません。


今や大ベテランの垂木勉さんや正宗一成さんといった重鎮的存在のナレーターも「JET STREAMの城達也」さんに憧れて影響をかなり受けたと述べています。


しかし、当の城さんは誰に影響を受けていたのか?

今や確認することなどできませんが、ご存命の頃、何かの企画インタビューで「あなたが良い声と思われるナレーターを挙げてください」という質問に城さんが「矢島正明」さんを挙げていたのを覚えています。


矢島正明さん。今も現役で御歳81歳です。
スタートレックのカーク船長、高齢の人にはナポレオンソロのロバートボーンの吹き替え役で思い出されるかも知れません。
他にも数え切れないほどのナレーション、CMなどがあり、業界の大御所です。
わたしは「クイズタイムショック」で初めて矢島さんの存在を知りました。


城さんは声の調子を悪くされて苦労されました。
その声の変調に驚いた、当時のFM東京の社長後藤亘氏は別人と思ったほどの変わりようだった述べています。


実はその「声変わりした城さんの声」は、私には「矢島正明」さんの声に聞こえるのです。
これはとても興味深いことでした。(つづく)