先週四泊五日でメルボルンに行きました。
長距離の車移動なので実質的にメルボルンで過ごせた時間は丸三日。
今週は月曜から仕事だったので、今、ようやく一息ついています。
メルボルン滞在中にネットフリックスで「キング」、映画館で「生きる リビング」をみました。
今日は「キング」のレビューです。
「君の名前で僕を呼んで」「ビューティフル・ボーイ」のティモシー・シャラメがイングランド王ヘンリー5世に扮して主演を務めたNetflixオリジナル映画。ウィリアム・シェイクスピアの戯曲「ヘンリー四世」2部作や「ヘンリー五世」に着想を得た物語で、自由気ままな王子が宮廷内のさまざまな問題や戦争など、混乱する時代を生きることで国王として成長していく姿を描く。若き日のヘンリー5世をシャラメが演じるほか、ジョエル・エドガートン、ジョーン・ハリス、リリー=ローズ・デップ、ロバート・パティンソン、ベン・メンデルソーンら豪華キャストが共演。(引用元)
レビュー
私が重い腰を上げ、ネットフリックスにとうとう加入したのは2021年3月ですが、その理由は「ザ・クラウン」など、いくつかどうしても見たいオリジナル作品があったから。
この「キング」もみたいリストの筆頭だったのですが、長くて暗くて重そうだから、隙間時間のリラクゼーションには向かなそう、と保留していました。
先週とうとう鑑賞しましたが、これが本当に素晴らしかったのです!
ティモシーの出演作はすでに7本ほどみていますが、実はここまで実力のある役者さんだとは気付かず、申し訳なく思うほどです。
ベースは私の敬愛するシェイクスピアの戯曲「ヘンリー五世」で、これまでにケネス・ブラナー版(1989年。15歳のクリスチャン・ベールが出演しています)とローレンス・オリヴィエ版(1945年)をみています。
ローレンス・オリヴィエ版のヘンリー五世のレビュー(星三つ半〜四つ)
どちらもともに興味深いですが、今回の映画化はオーストラリア人俳優のジョエル・エドガートンが戯曲とは離れた大胆な脚本を書き、史実とは違う等の批判もあるようですが、なんとも新しく、胸に響く作品をつくってくれました。
(だいたい15世紀初頭に起こった出来事の真偽ってなかなかわからないことではないかと。ヘンリー五世が立派な王であったというのは認められているようですが。)
この映画の主役はまぎれもなくティモシーで、彼の演技力とカリスマ性のある魅力がぐいぐい作品をひっぱってくれますが、影の立役者はジョエル・エドガートン演じるフォルスタッフで、やはり自分の書いた脚本、製作であるためかややスクリーンタイムが多いような気もしましたが、このフォルスタッフのエピソードが本作を新しい「ヘンリー五世」にしてくれました。
それからシェイクスピアの戯曲でのハイライト、アジャンクールの戦い直前の兵士への言葉「聖クリスピンの日のスピーチ」をどうするのかと思ったら、ケネスやローレンスとはまったく違った形で、ティモシーが感動的な演技をみせてくれました。
そしてその後の泥だらけの肉弾戦はまるで「ゲーム・オブ・スローン」をみているようでした!
それからそんな深刻な話に色をそえるのが、フランスの王太子役のロバート・パティンソン。彼じゃなかったらやりすぎに思えるような強烈なフランス訛りの英語といかにも性格俳優であることを示す演技。
かっこ悪い役も平気に楽しむ、美しいロブには脱帽です。
本当、好き!
そして当時ティモシーと実際に交際していたジョニデの娘、リリー=ローズ・デップがヘンリーに嫁がされるフランス王女役ですが、ケネス版で同じ役をやったエマ・トンプソンとは比べ物にならないシビアな演技で、これもまたとてもよかったです。(エマのは戯曲に忠実なのでしょうが、まるでコメディ。)
この作品が私の興味ど真ん中だったということもありますが、本作には五つ星捧げたいと思います。素晴らしい。