『相場師』福沢桃介(48)資本主義的活力への信頼


 私は、桃介の精神的支柱は「資本主義という人類の英知に対する
信頼」だったのではないかと思っています。資本主義に対する評価
はさまざまでしょうが、桃介が生きていた時代のわが国では「個人
の欲望を善導する仕組みのひとつ」として、資本主義が評価されて
いたのだろうという気がします。明日はもっと良くなるという希望
の根拠として、発展する資本主義経済があったことは確かでしょう。


 桃介はこんな風に書きます。「かの有名なるモルガンの父なる人、
その死に臨みて曰く、アメリカの将来を悲観する者は亡ぶと。
予は敢て言わんと欲す。今日日本の将来を悲観する者は亡ぶと。」


 「日本の将来を悲観するものは亡ぶ」、『相場師桃介』が生きて
いた時代、日本は明るい将来像を描ける時代だった。今は?私は
日本という国が真に資本主義を活用する国になれば桃介の言は今も
有効、と思っています。(逆に言えば、資本主義的な活力を失えば
日本の将来は暗いと考えざるを得ないということです・・)

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『相場師』福沢桃介(47)麦酒泡沫論


 ここまで福沢桃介の「欧米株式活歴史」の紹介をして来ました。
私がこの「欧米株式活歴史」という桃介の著作の存在を知ったのは
1980年代半ばのことです。


 当時私はある投信委託会社で日本株投資信託のファンドマネジャー
をしており、日常的に投資理論とか罫線分析といったものに接して
いたのですが、いずれもどこかピンと来ない気がしていました。


投資理論もチャート分析も、現実の株式相場からずれている感じが
したのです。時としてバブルを作るダイナミックな相場現象に焦点を
当てた議論はなかったのだろうか?そんな漠然とした思いでいる時に
「相場師福沢桃介」に出会ったのです。


 桃介の「麦酒泡沫論」についてはすでに聞いたことがあったの
ですが、原典を読んで初めて桃介の「株価バブル観」が納得
出来ました。「伝説の相場師」福沢桃介の真髄を見る思いがした
ものでした。(例えば、株価のバブル現象を「合理的期待形成」に
基づいて考えるのと、「桃介流の麦酒泡沫論」で考えるのでは、
随分違うでしょう。)

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『相場師』福沢桃介(46)米放資界における婦人の勢力(3)


 「さりとて婦人の皆の皆までが、株式界で手を焼いたものばかり
ではない。


 少数にはせよ、随分男勝りの判断力を働かせた婦人もある。
例えば、ヘッチィ、グリイン夫人の如き、金融界の消息と株式相場
の成行等に就ては、ウォール街に於てさえ容易に見られぬ判断と
見解を持って居る。


 堂々たる男子さえも、流石に此お婆さん丈には、一目も二目も
おいて居る有様である。(中略)一流の銀行株、トラスト株、及び
債券類に投資して、利殖に対する眼識の非凡なることを示して居る。
(中略)父より譲られた4千5百万ドルの財産を女の手一つで
束の間に倍加せる手段は、茲に特筆するに足る。」


 父親から受け継いだ遺産の4千5百万ドル(今の貨幣価値なら、
5億ドル以上でしょう)を短期間に倍増したグリーン夫人の投資
手腕は大したものだ。この老婦人の相場観には、ウォール街の
男たちも一目も二目も置いていると、桃介は書きます。


 桃介は川上貞奴(おっぺけぺ節の川上音二郎の妻、日本最初の女優)
を夫音二郎の死後愛人とし、他にも女優と浮名を流すなど、現代の
基準からすれば必ずしも品行方正ではなかったようです。桃介の
女性観がどんなものだったのか?興味は尽きませんが、「活歴史」の
記述だけからすれば株式投資の世界にいる婦人連に対しては、
辛口と言いますか、やや呆れ気味です。

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